「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家を殺害した罪に問われている元妻の須藤早貴被告。
27日、資産家の事件とは別の詐欺罪での裁判の被告人質問が行われ、何を語るのか注目されました。
■疑惑の「紀州のドン・ファン」の元妻の詐欺罪での裁判の被告人質問
5月27日午前11時から行われた被告人質問は、午後4時ごろに終了しました。27日で3回目となった詐欺罪での裁判。
須藤被告は、黒いワンピースに腰まで延びたストレートの黒髪で、これまでと変わりない姿で現れました。
法廷では、須藤被告の主張を助ける弁護側に注意されるほど、かなり小さな声でしたが、質問に対しては、赤裸々に主張を述べ「金をもらうためには、それなりのことを」という、金への執着が感じられる発言が印象的でした。
■疑惑の元妻 「紀州のドン・ファン」殺害については黙秘を続け裁判は未定
「紀州のドン・ファン」と呼ばれた、和歌山県田辺市の資産家・野崎幸助さん(当時77)。
【野崎さん】「1億円くらいは紙切れみたいなもんや、私にとっては」
金融業などを営み、総資産は50億円ともいわれていましたが、2018年5月、2階の寝室で死亡しているのが見つかりました。死因は急性覚せい剤中毒でした。
事件の3カ月前に野崎さんと結婚していたのが、55歳年下の須藤早貴被告(28・当時22)です。
(Q.悲痛な心境だと思いますが?)
【須藤早貴被告】「・・・」
(Q.今の心境を一言だけ)
【須藤早貴被告】「・・・」
事件について無言を貫いてきた須藤被告でしたが、約3年後、急展開を迎えます。 野崎さんが死亡する直前に、2人きりの時間があったことや、須藤被告が覚せい剤の密売人と接触したとみられることなどから、須藤被告が殺人などの罪で逮捕・起訴されたのです。 しかし、須藤被告は黙秘を続けていて、いまだ裁判が始まる見通しも立っていません。
■現金2980万円をだまし取った罪の裁判で「私が詐欺師なら被害者は性犯罪者」
動機などが明らかにならない中、須藤被告は2015年から3回にわたり、当時61歳だった別の男性から現金合わせて約2980万円をだまし取った罪にも問われ、この裁判で何を語るのか注目されていました。
起訴状によると須藤被告は、海外留学の準備金などが必要と偽り、被害者の男性から金をだまし取った罪に問われていますが、初公判で起訴内容を否認していました。
これに対して、被害者の男性は「嘘だと分かっていたら払っていなかった」と反論していました。
27日の被告人質問で再び法廷に立った須藤被告。
【須藤早貴被告】「私は実際にあったことを“盛って”ウソをつきました。留学する意識も伝えていたが、金額は信じていなかったと思う」
須藤被告はウソをついていたことを認めた上で、被害者もウソと分かって金を払っていたと主張しました。 一方、検察側は、「被害者が本当にウソだと分かっていたのか」を重ねて質問しました。
【検察側】「被害者がウソだと分かっていたというのは、どういう根拠ですか?」
【須藤早貴被告】「金額が突っ込みどころ満載で、(ウソと)分かるでしょ?分かっていて遊んで、話を合わせてくれているんだろうなって」
これまでの裁判で被害者の男性が須藤被告に「性的なことを求めていなかった」と話していたことについて、須藤被告は、「金を受け取るたびに体を触られたり、キスをされてたりしていた」とし、「未成年と知りながら体を求めてきた」と主張しました。
【須藤早貴被告】「ウソをついたことは反省していますが、オレオレ詐欺みたいに善良なおじいちゃんをだましたとは違う。私が詐欺師なら、被害者は性犯罪者だと思っています」
反省の言葉を述べた上で、一方的に金をだまし取ったことを改めて否定しました。
■裁判を通して「金への執着心」…須藤被告の人物像が少しずつ明らかに
和歌山地裁前から秋山未来記者が報告します。 27日の被告人質問での須藤被告の様子で、印象に残ったことはありますか?
【秋山未来記者】「全体を通して感じたのは、須藤被告が『金を得ることに手段を選ばない』という金への執着心のようなものでした。金を受け取った際に、被害者から受けたという性的な行為について生生しく須藤被告の口から語られましたが、これについても『10万円もらっているしまあいいか…くらいに思っていた』などという発言がありました。
留学費1500万円というウソの金額についても、須藤被告が『自分で考えた』と話していて、『被害者が資産家だと思っていたので、相当な額を伝えた』とし、できるだけ多くの金を得ようとしていたと思われます。さらに『被害者名義で借りさせたタワーマンションに、シャンデリアを付けるなど、引っ越し代で200万円かかった』などとも話し、金遣いが荒かったこともうかがえます」
これまでの取材の中でも印象的なことなどはありましたか?
【秋山未来記者】「『紀州のドン・ファン』と呼ばれる資産家の取材をしていた際に、野崎さんをよく知る人は、『須藤被告は1000パーセント金に目がくらんでいる、野崎さんは金があるから利用されたと思う』などと話していました」
資産家の元夫を殺害についての「殺人罪」の裁判はまだ見通しが立っていないのでしょうか?
【秋山未来記者】「『殺人罪』の裁判については今のところ進展がありません。そんな中、少しずつ須藤被告の人物像が明らかになっています。詐欺罪の次回の裁判は、7月5日に開かれる予定です」
■「紀州のドン・ファン」の約13億円超の遺産の行方
野崎さん殺害の裁判は、まだ始まる見通しが立っていませんが、野崎さんの死亡をめぐって、6月にはまた別の裁判の判決が言い渡される予定です。それが13億円を超える野崎さんの遺産の行方を左右する司法判断です。
そもそも野崎さんの遺産は普通であれば、妻である須藤被告の相続が4分の3、そしてきょうだいの相続が4分の1、このような形を取ります。
ところが野崎さんの遺言書とみられるものが発見されました。この文書には「故人の全財産を田辺市に寄付する」と書いてあります。
この遺言書の「無効」を求めて、きょうだいらが提訴をしました。というのも、もしこの遺言書が認められると、いったん田辺市に全て寄付される形ですが、妻である須藤被告も「遺留分」として半分を請求する権利があります。
ですので遺言書が認められると、田辺市に半分、妻である須藤被告も半分を相続し、きょうだいは1円も相続できないことになります。
一方で、この遺言書とみられる文書が裁判で無効と判断されたら妻4分の3、きょうだい4分の1相続となります。
他のパターンもあります。須藤被告の夫・野崎さん殺害事件の裁判の行方次第で、遺産の配分が変わります。
須藤被告の夫殺害の罪が有罪かつこの遺言書が認められた場合、妻である須藤被告の「遺留分」の請求がなくなりますので、全額が遺言書通りに田辺市に寄付されます。
そして最後のケース。夫殺害の罪が有罪かつこの遺言書が無効とされるならば、全額をきょうだいらが相続する。
以上のような4パターンが考えられます。
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】「田辺市も割と早い段階でこの遺産を受け取る意向は示していまして、すでに弁護士費用として予算計上しています。ただ、この裁判の結果にどちらかが納得いかなくて『控訴』となると、毎年また裁判費用が予算計上されていくということになります。つまり市の財政にも影響を与えるということを考えておかないといけません」
野崎さんを巡る殺人事件の裁判が、市民を巻き込むという形にもなるということです。野崎さん殺害についての裁判がいつ始まるのか、そして6月に予定されている、遺言書をめぐる裁判の判決も注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年5月27日放送)