6月1日から阪神高速の料金が変わります。
値段が上がる場合もありますが、その収益分は”あの渋滞”解消に向けた対策に使われるとのことです。 物流問題の未来にも関わる高速道路をめぐる動きを取材しました。
■阪神高速の値上げ 街の人は「あんな混んでるのに!」「なんで上げんねん!」
6月1日から適用される阪神高速の新しい料金。
現状、走行距離が32.3キロまでは、その距離に応じて料金が変動し、それ以上は上限1320円となっています。
これが6月からは走行距離が51.7キロまで料金が変動し、それ以上に走った場合の上限も1950円に引き上げられます。
この値上げに街で聞いてみると…。
(Q.値上がりするんですけど…)
【街の人(40代)】「え!あんな混んでるのに。遠く行くときに使うことが多いので、もったいないなって感じるようになりますね」
【街の人(30代)】「これから割と車、使うこと増えるんで仕事で。割と痛いというか。なんで上がんねんとは思いますね」
【街の人(60代)】「長距離が2000円近くなる…、あんまり歓迎しないですけど。抵抗できないので、高いなと思って乗るしかないですね」
■料金改定でとりくむ「阪神間の大渋滞」解消
阪神高速はこの料金の改定で、約80億円の増収を見込んでいるということですが、そのうち60億円を投じて解決を試みるのが…、「阪神間の大渋滞」です。
あなたも巻き込まれたことがあるかもしれません。 西宮インターチェンジ付近から神戸の都心部にかけて必ず混む、“あの区間”です。
実は国が算出している「渋滞損失時間」ランキングでも、西宮ジャンクションから第二神明道路接続部の西行き車線が都市高速部門で全国1位となっています。
この日本一の渋滞を解消するため、値上げで得た収益を、神戸都市部の阪神高速を通らずに迂回(うかい)して通行した車の割引にあてるということです。
■実際に「迂回ルート」と「最短ルート」を走り比べてみる
しかし、迂回ルートを利用して長く時間がかかるなら、利用する人は増えないような気もしますが…。
【記者リポート】「阪神高速を使う最短ルートと中国道を使う迂回ルート、どちらが早く着くのか実際に検証してみたいと思います」
検証するのは吹田JCTから明石西ICまでの区間で、最短ルートは名神高速を経由して阪神高速を通る経路。一方、迂回ルートは中国道などを利用して明石西ICまで行く経路です。
現在は「迂回ルート」の方が料金が高くなっていますが、6月から割引を適用して「最短ルート」の料金と同じ額になります。
では、午前8時半を迎えました。両車一斉にスタート!
【迂回チーム】「こちら中国道池田、乗って10分で工事渋滞につかまってしまいました」
おっと、「迂回ルート」で開始早々まさかの工事渋滞。
一方、「最短ルート」は比較的スムーズに進む時間が続きましたが…。
【最短チーム】「午前9時になりました。ついさきほど阪神高速に入ってきましたが、いきなり渋滞しています」
スタートから30分、最短ルートが西宮IC付近、迂回ルートが宝塚付近とまだ、そんなに差はありません。
しかし、さらに15分経過すると道路状況に大きな変化が…。
【迂回チーム】「西宮山口料金所を通過して、車は快適に進んでいます」
【最短チーム】「今、神戸市東灘区のあたりを走行しています。西宮のあたりから始まった渋滞ですが、ずーっと続いています」
工事渋滞を抜けてからスムーズな走行が続く「迂回ルート」に対し、「最短ルート」は約30分間、渋滞が続きました。
【最短チーム】「トレーラーや大型トラックが次々と車の前、横を走っていきます」
特に最短ルートで目立ったのはトラックなど大型車両の多さです。神戸・三宮付近は一般車両よりも多い時もありました。
そして、目的地の「明石西IC」の表示が! 先に到着したのは…さあ、どっち!?
【記者リポート】「来ました。来ました。阪神高速チームが遅れること約10分で到着しました」
先に着いたのは、勝ち誇った顔の「迂回ルートチーム」でした。
結局、距離的が長いものの「迂回ルート」の方が“8分”早く到着しました。
■渋滞緩和で2024年問題にも良い効果も 一方、経営面では「値上げは言いづらい」
迂回ルートを選ぶドライバーが増えて、阪神高速の渋滞が緩和すると、トラック運転手の残業規制で物流に影響が出るいわゆる「2024年問題」にも良い効果があるのではないか、と期待されています。
神戸市に本社のある運送会社に話を聞きました。
(Q.あそこは渋滞仕方ない?)
【乗務員】「それはちょっとあります。諦めてはいますね」
来月からの料金変更については?
【乗務員】「(迂回ルートも)一緒の料金なんですよね?やったら、緩和されるかなとは思うんですけど」
この会社では、すでに迂回ルートを利用することも多いということですが、より多くの車が利用することによる渋滞緩和に期待する声もありました。
一方で、経営面ではデメリットもあるようです。
【ダイワ運輸 木村溶徹専務】「遠くまで行った際の上限料金が値上げになるのは、非常に大きなデメリット。2024年問題に対しての料金アップは、すでにお願いしてしまっている状態。なかなかここに追い打ちをかけて、『すみません、阪神高速上がるのでもう1段』というのは、言いづらい状況ではあります」
これ以外にも、深夜に利用する車両を2割引きにするなど、渋滞の緩和に向けてさまざまな料金改定を行う阪神高速。
今後、実際にどのような影響が出るのか、注目されます。
■「日本の道路は先進国中最低水準」と専門家
阪神高速が、6月から新料金となります。全国一ともいわれる渋滞を緩和する目的もあるようですが、効果はあるのでしょうか?
【関西テレビ 神崎博報道デスク】「同じような事例が関東でもありまして、迂回ルートと最短ルートを同じ料金にした結果、迂回ルートの方に2割ぐらい多くの車が流れていって、最短ルートの方は数%車が減ったそうです。若干ですが、効果が出たという例はあります」
今回は値上げ区間もあるということで、値上げによる収益は、どのように使われるのでしょうか?
今回の値上げで年間約80億円の増収が見込まれますが、そのうち約60億円は、渋滞緩和の迂回割引などにあてられるということです。 そして、残りの約20億円については、阪神高速の淀川左岸線などの整備に使われるそうです。
今回の料金改定について「newsランナー」番組コメンテーターの京都大学大学院の藤井聡教授はこのように話します。
【京都大学大学院 藤井聡教授】「私の意見としては、『日本の道路は先進国中で最低水準』、本当に最低なんですよ。僕らも研究の専門の領域ですから、色んな国のネットワークを見ているんですけど、日本の高速道路ネットワークはもうブチブチ、スカスカ。G7はメロンの皮のように充実。淀川左岸線も門真から都心の方に行くとルートですけど、これは(門真に)第二京阪という立派な高速道路が来ていて、門真JCTの近畿道で止まって左右に分かれています。その結果、周辺の阪神高速が混んでいます。東大阪線がすごく混んで、門真・守口線とかも混んでるんですけど、そこに一本(新しいルートが)できたらそういった渋滞が抜本的に改善されます。ですから20億円の部分は値上げになりますが、この部分は必ずドライバーの皆さんに、長期的には還元できる。(目的地に)早く行けることになって還元できるものになるので、これは皆さんにご理解いただけるとありがたい。僕も専門家として思います。60億円値下げになるところもありますから、半分強が値上げ、半分弱が値下げがあるということです」
阪神高速の料金は、6月1日の午前0時から変わります。値上げと割引、少し複雑になっていますので、詳しくは、阪神高速のホームページなどでご確認ください。
(関西テレビ「newsランナー」2024年5月24日放送)