いま、関西は「スーパーマーケット戦国時代」です。
関東から進出したロピアが、急拡大し、秋には「関西スーパー」を買収しようとした「オーケー」が東大阪に出店の予定。関東勢の相次ぐ進出で、関西の「お買い物事情」は変わるのでしょうか。
■関西17店舗目となる新店舗をオープンさせたロピア
4月23日午前9時半、関西17店舗目として「北加賀屋店」をオープンさせたロピア。
開店を待ちわびた客、最大800人が行列を作りました。
「どうぞいらっしゃいませ~」
お肉に、お菓子など、買い物客のかごはすぐにいっぱいになっています。
【買い物客】「めっちゃ安い!」
こちの女性は電卓をたたいています。
【買い物客】「絶対、計算しながら買う!」
皆さん買うわ買うわ、お会計は2万円、3万円は当たり前。
もともと、神奈川県の精肉店から出発したロピアは、2020年に関西に進出し、近畿圏で17店舗にまで急拡大しています。なぜここまで急成長しているのでしょうか?
■関西での勝算 「売り場のチーフにすべての決定権」「精肉店発祥と関西の牛肉文化」
兵庫県加古川市に去年オープンした店舗で探ってみることにしました。
入口すぐにある青果売り場では…。
【加古川ヤマトヤシキ店 青果チーフ】「これが一番。入荷した時から臭いですもん」
強烈な匂いで知られるドリアンを1個5000円前後で販売しています。
【加古川ヤマトヤシキ店 青果チーフ】「お客さんがここで足を止めて『おっ!』って言った時に、僕はめっちゃうれしい」
「売れなさそう」な物もおかまいなし!客にインパクトを残し、ほかの店と差別化を図る戦略です。
【加古川ヤマトヤシキ店 青果チーフ】「その『え?』とか『わ!』っていうのが、僕の売り場のこだわり」
【OICグループ 経営戦略本部長 浜野仁志さん】「ロピアの特徴は、1つの店舗を1つの商店街としてとらえていて、その中に魚屋さん、八百屋さん、お肉屋さん、それぞれの店がある。そこにいるチーフが個人商店の店主というような形態をとっている。個人商店の店主であるチーフが、全ての決定権を持っている」
売り場のチーフに、仕入れや値付けの権限を与えると同時に、売り上げの責任を背負わせ、競争させることで活気を生み出しているというのです。
鮮魚売り場では「大トロ」、「中トロ」、「赤身」が、全部食べられるマグロの「ブーメラン」。
にぎりずしや、インパクト重視の巻きずしなどロピアの名物はもちろん、スーパーではなかなか見かけない20キロ超えのヒラマサも。ウニは、なんと1000円から1万円まで。
【加古川ヤマトヤシキ店 鮮魚チーフ(29)】「ポンポン売れるものじゃないんですけど、専門性というか、たまにお母さんが買ってくれてるの見ます。『うわ~っ』って思います」
(Q.チーフの権限はある?)
【加古川ヤマトヤシキ店 鮮魚チーフ(29)】「めちゃめちゃあります。売り場の1から100まで決められるといっても、うそじゃない」
しらすは10種類おくなど、鮮魚チーフの「普段使いを充実させたい」という狙いで、「選ぶ楽しさ」を演出する作戦です。
お客さんはどう感じているのでしょうか。
【買い物客】「ずっと行ってるスーパーが飽きてきた。テンション上がる」
【買い物客】「値段が全然違う」
【買い物客】「品ぞろえがいい。普通に売ってない野菜売っている」
そして、多かった声が。
【買い物客】「肉がおいしいです」
【買い物客】「主人が肉が好きで、他の店で買うより質もよくておいしい」
精肉店発祥だからこそ、こだわる肉。そこに、関西での勝算があるようです。
【OICグループ 経営戦略本部長 浜野仁志さん】「関西の特徴として、関東に比べて牛肉文化。精肉店発祥のスーパーなので、肉に強みを持っている。牛肉の売れ行きが関西地方はすごく大きいので、うちのスーパーにあった地域」
関西の黒船となるのか、ロピアの屋台骨をささえる肉の買い付けとは。
■「『目利き』は肉屋としてのプライド」牛肉は一頭買い
関西で急拡大を続けるロピアの新店舗オープンまで2週間。姫路市にある食肉工場に、北加賀屋店の精肉チーフが買い付けに訪れました。
【エスフーズ担当者】「この列が交雑牛なので、ここから見ていただいたら」
オープン日に、目玉商品にする肉を求めています。
【北加賀屋店 精肉チーフ】「歩留まり(可食部の割合)の話をしたら、こんなのいいけど…。難しいですね」
一般的なスーパーが、売りやすい部位だけを部分的に購入する中、ロピアでは、仕入れ値を抑えるために「一頭買い」です。
【北加賀屋店 精肉チーフ】「こっちのほうがいいかな。こっちのほうが赤いか」
この日仕入れたのは、「これだ!」と思う8頭分。
【北加賀屋店 精肉チーフ】「すごくいいよって思って買っても、店に来た時に『あれ?』って…。リスクはあります。『目利き』といわれている部分なので、肉屋としてのプライド」
■ロピアが関西で攻勢を強めるワケ
関西で17店目となる新たな店は、大阪市住之江区北加賀屋。すでに5つのスーパーが競合しているエリアです。
関東が地盤のロピアが、今、関西で攻勢を強めるワケとは―
【OICグループ 経営戦略本部長 浜野仁志さん】「(関東は)地場の強いスーパーが拡大して、競争環境が厳しくなっている。関西は人口もたくさんいる地域、首都圏に比べると競争はゆるい、厳しくない」
「競争は緩い」とはいっても、関西の食品スーパーの店舗数は増加中。
さらに、ロピア以外にも、関東から関西スーパーを買収しようとした「オーケー」や、中部地方から「バロー」、九州からも「トライアル」が進出してきていて、競争が激化、「戦国時代」となっているのです。
■“肉のロピア” 力を入れる「惣菜」開発
そんな中、ロピアが新店舗に向けて、力を入れるのが「惣菜」の開発です。
北加賀屋店の“目玉”となる新商品を、惣菜チーフの会議でお披露目します。
【北加賀谷店 惣菜チーフ】「肉のロピアなので、肉を全面に押し出した惣菜をやりたい」
北加賀屋店の惣菜チーフが開発したのは、ガーリックライスの上に、ステーキ肉1枚(250グラム)をぜいたくに乗せた一品です。(1080円※北加賀谷店限定)
スーパーの業界では鶏肉を使った惣菜が主流のなか、値段が高くなったとしても、“肉のロピア”を印象付ける狙いです。
そして、ロピアらしい“演出”を重視したのが、明太子3本を乗せたどんぶり。
【北加賀谷店 惣菜チーフ】「北加賀谷からスタートの『明太いくら玉子丼』です」
こちらも「1080円」という価格設定です。(※北加賀谷店限定)
インパクト重視の戦略に、他店舗の惣菜チーフたちの評価は…?
【セントラルキッチン センター長】「これ(明太いくら玉子丼)は好みですかね。見た目のインパクトはあるんですけど、食べづらい…ひと腹で十分」
厳しい意見が出ても…、「売る」と決めたら、あとはチーフの責任です。
■オープン当日
大阪・北加賀屋店、いよいよオープンです。
青果部で目を引くのは…8000円超えの“バナナの木“。ロピアらしい遊び心が満載です。
鮮魚部は、「一目でわかる」“新鮮さ”を前面に押し出します!
精肉部には、一頭買いで仕入れた、霜降り肉に群がるお客さんたち!
惣菜部は、北加賀谷店限定の商品で勝負!それぞれ60食の完売が目標です。
北加賀屋店の惣菜チーフが開発したステーキライスを手にした買い物客は…。
【買い物客】「お肉やばくないですか?これ1000円でこんなの買えないですよ」
この日は、想定を1000人以上超える、6300人が来店しました。
ステーキライスはお昼過ぎに完売!しかし…
(Q.売り切れます?)
【惣菜チーフ】「嫌な予感がする…正直…」
“明太子”が苦戦。
売り場を通りかかった女性も、明太いくら玉子丼を見て「ロピアすごいね~」というものの、購入には至らず。
一方、ほかの売り場では、売り切れが続出。
閉店まで残り20分となり、ようやく…完売。
「終了いたしました!ありがとうございます!」
こうして新たな店がオープンし、競争が激化すると消費者にメリットがありそうです。
【流通アナリスト 中井彰人さん】「よその地域から進出する力を持っている店は、その地域の関東・中部・西の方の勝ち組。関西の店も、そう簡単に勝つことはできない。本気でサービス競争・品質競争・価格競争に向き合う事になる。とてもいい刺激になる。今よりもお客さんにとっては、いい環境になっていく」
関西の消費者の心をつかむのは、果たして―。
(関西テレビ「newsランナー」2024年4月30日放送)