キリンが「適正飲酒セミナー」を開始 「淡い色のビールには水餃子」色を合わせる酒と食のペアリング方など伝授 「いい飲み方の普及」が酒類の未来を決める 2024年04月25日
■厚労省が「健康に配慮した飲酒」のガイドライン
今年2月、厚生労働省が国として初めて、「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」を発表した。それによると、“適度な飲酒量”の1日の目安は、ビールならロング缶1本。缶チューハイは350ミリリットル缶1本。日本酒の場合は一合弱だという。もちろん性別、年齢、体質による個人差が大きいので一概にはいえない。しかしこの量、多いのか少ないのか…。
厚生労働省のガイドラインでは、酒量を「純アルコール量(グラム)」で換算している。これは「酒に含まれるアルコール量」とのこと。アルコール度数や、何杯飲んだかより、「純アルコール量」の方が、体や精神への影響が正確に把握できるのだそうだ。
例えば、純アルコール量の摂取量が、男性1日あたり40グラム以上、女性は20グラム以上となると、生活習慣病のリスクが高まる。大腸がんリスクは男女とも1日あたり20グラム程度で高まる。また、男女とも1回の飲酒で60グラム以上摂取すると、急性アルコール中毒などが起きる可能性があるとして、注意を呼び掛けている。
■「節度ある飲酒量」は20グラム
また、厚生労働省が推進する国民健康づくり運動「健康日本21」に示された「節度ある飲酒量」によると、1日あたりの純アルコール摂取量は20グラム。(※女性や高齢者は、これより少ない量が適当)。
しかし20グラムというと、、、
【純アルコール量20グラムの目安】
*ビール 度数5パーセント 500ミリリットル(ロング缶、中瓶1本)
*酎ハイ 度数7パーセント 350ミリリットル
*ワイン 度数12パーセント 200ミリリットル
*日本酒 度数15パーセント 180ミリリットル(1合弱)
*焼酎 度数25パーセント 100ミリリットル(グラス2分の1杯)
*ウィスキー 度数43パーセント 60ミリリットル
飲み会などでは、これ以上飲む人も多いだろう。健康に良くないと言われても、そうそう自制できるものでもない。
■キリンが適性飲酒セミナーをスタート
厚生労働省は、健康に配慮した飲酒の仕方として、「あらかじめ量を決めて飲酒をする」「飲酒の合間に水を飲んで、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする」「1週間のうち飲酒しない日を設ける」などを提案しているが、もっと楽しい、他の方法はないものか。
キリンホールディングスが一般の団体に向けた「適正飲酒セミナー」を4月から開始し、健康に配慮して、楽しく、おいしくお酒を楽しむ方法を提案しているという。何か秘策はないものか、セミナーの講師として、さまざまな視点からビールの魅力を伝えている、後藤沙耶香さんに話を聞いた。
【キリンアンドコミュニケーションズ(株) 後藤沙耶香さん】
心地よくお酒を楽しむために、「SLOW DRINK」として、3つの提案をしています。
1つ目は「楽しさを分かち合う」。誰かとゆっくり語りあえば、飲み方も自然とスローになります。
2つ目は、「程よい量で心地よく飲む」。水やノンアルコールを挟みながら、それぞれが自分に合った量を楽しみましょう。
そして3つ目。これが一番、皆さんの興味が大きいところなのですが、「料理と一緒に味わって飲む」です。より楽しむために、「食べ物とお酒の相性“ペアリング”を探る提案などもしています
まずは「色」。例えば「赤ワインにはお肉」「白ワインには魚」というのを聞いたことがある方は多いと思います。淡い色のビールには色の薄い料理、濃い色のビールには色の濃い料理という風に、「似た色」を合わせるだけの、最も簡単な法則です。
■ビールとフードの色を合わせる「ペアリング」
【キリンアンドコミュニケーションズ(株) 後藤沙耶香さん】
「香り」も大切なポイントです。似た香りや風味同士を合わせると、互いの味を引き立てます。スパイスをふんだんに使った料理にはスパイシーなお酒、甘い香りのフルーツなどを使った料理には、フルーティなお酒といった具合です。
これはあくまで一例ですが、
*色の濃いしっかりめの味わいのビールには「焼き餃子」
*淡い色のあっさりした味わいのビールには「水餃子」
*色の濃いしっかりめの味わいのビールには「みたらし団子」
*淡い色のあっさりした味わいのビールには「レモンケーキ」
などがおススメのペアリングです。
ペアリングは自分好みの楽しみ方を見つけること。これらはあくまで一例であり、答えはありません。皆さんの感覚こそが「正解」です。ですから、「合う」と言われているものと反対の料理を合わせて冒険してみるのも楽しみの一つです。感じ方は人それぞれ。試した人にしかわからない面白さを、ぜひ楽しんで頂きたいです。
■「アルコールの有害摂取の根絶に向けて」
Qところで、なぜキリンが「スロードリンク」といった、酒量を減らすような「適正飲酒」的な提案しているのか?ビールメーカーはたくさんお酒を売りたいのが本音ではないのかと思うが…
【キリンアンドコミュニケーションズ(株) 後藤沙耶香さん】
お酒はリスクをともなう飲み物です。健康へのリスクだけでなく、禁止事項として、飲酒運転や20歳未満の方の飲酒など、法律違反にあたるものもあります。
私どもは、酒類メーカーの責任として、アルコールの有害摂取の根絶に向けて適正飲酒推進に取り組むことで、こころ豊かな社会を実現し、お客様の幸せな未来に貢献していきたいと考えています。その一環として適正飲酒セミナーを行っており、それぞれの人に合った適量の範囲で、キリンの製品も含め楽しんでいただきたいと思っています。
■よく手が動く「ほろ酔い期」ぐらいで
国のデータによると、20年前と比べ、国内のアルコール消費量は8割未満と減少する一方で、アルコール性の肝疾患でなくなる人は2倍近く増加している。アルコールが社会の悪者にならないよう、「いい飲み方」の普及に力を入れるのは、酒類メーカーにとっては当然のことかもしれない。
ちなみに、このキリンのセミナーでは、「酔いの程度」の目安なども教えてくれる。「さわやかな気分でお酒を楽しむ“爽快期”」から、「命に危険が及ぶ“昏睡期”」まで6段階。2番目にくる「ほろ酔い期」では、体温が上がったり脈が速くなったりする自覚症状に加え、「手の動きが活発になる」のも特徴の1つだそうだ。これ以上進むと「酩酊初期」となり、大声になったり、立った時にふらついたりするという。楽しむには、「ほろ酔い期」ぐらいで酒量を止めるのが良さそうだ。次の飲み会、周りの人の手の動きに注目してみてはどうだろうか。