小林製薬は紅麹のサプリをめぐる健康被害について、2回目の記者会見を開き、亡くなった人や通院が必要となった人への補償について「誠意を尽くす」と説明しました。また「未知」とされてきた成分について、厚生労働省が新たな見解を示しました。
小林製薬の紅麹サプリをめぐる問題の公表から1週間。大阪市内で2度目の会見を開き、冒頭で社長が謝罪しました。
【小林製薬 小林章浩社長】「弊社を取り巻くすべての皆さまに、多大なる不安、恐れを与えて、大変な思いをさせてしまったことと、深刻な社会問題まで招いてしまったことについて改めて深くおわびを申し上げます。この度は本当に申し訳ございませんでした」
会見では、紅麹を原料とする「紅麹コレステヘルプ」を摂取していて死亡した5人は、判明している範囲で70代から90代の男女で、入院した人は114人となったことが判明しました。
■「未知の成分」は「プベルル酸」の可能性があることが厚労省会見で明らかに
先週の段階ではサプリから、健康被害につながる恐れが高いとされる「未知の成分」が検出されたと報告していましたが…
【小林製薬 梶田恵介食品カテゴリー長】「この1週間で構造まではだいぶ見えてきております。(今後は)国の研究機関とともに、われわれは情報を提供しながら、解明を進めていくことになったので、現時点ではどの構造体かは明確には解明できておりません」
一方、29日夕方に開かれた厚生労働省の会見では、小林製薬が原因となりうる物質として「プベルル酸」の可能性があると報告していたことが分かりました。
厚労省によりますと、「プベルル酸」は、青カビがからつくられることがある天然化合物で、毒性が非常に高いということです。腎臓に対する障害が起きたことがあるかどうかは現時点では明らかになっていません。小林製薬は成分の解明にはまだ時間がかかり、国と協力して分析を進めると説明しています。
問題のサプリの製造時期は去年4月から10月でしたが、会見では、それより前にサプリを飲んで体調不良を訴えている人がいることが明らかになりました。
(Q今、被害を申し出ている方で4月より前に被害があった方はいる?)
【小林製薬 渡邊淳執行役員】「数として把握はしていませんが、一部いらっしゃいます。今回の意図しない成分が入っていたことによることなのか、それ以外の理由なのか正直分かりませんので、今はそこは区分することができなくて、全体の数の中に含めています。これについても治療ならびにやり取りの中で、情報をいただきたいと考えています」
■補償は「誠意を尽くすようにやらしていただきます」
そして、サプリを摂取していて亡くなった5人については、70代から90代の男女だったことも公表されました。
(Qサプリを使用していた人に対しての補償については連絡している?)
【小林製薬 渡邊淳執行役員】「現在3名の遺族と連絡がついている状態でして、お会いできているのは1名です。補償につきましてはまだ内容ではなくて、われわれの誠意を尽くすようにやらしていただきますと、ごあいさつとして面談に行かしていただいています」
さらに、通院している人やこれから通院したいという人が合わせて680人ほどいるということですが、その人たちの補償について…
【小林製薬 渡邊淳執行役員】「まずは早く健康な状態に戻っていただく、それが大事なので、病院にまだ行ってなければ行っていただくということも含め、お話をしています。まずは行くための費用として、負担させていただくという話をしています」
小林製薬の「紅麹原料」は170社以上の食品メーカーなどにも供給されていました。FNNの調べでは、問題発覚後、紅麹原料を使った商品の自主回収や販売中止を発表した企業は60社以上に広がっていて、その補償については…
(Q企業への補償というのはどのような範囲で、いくらくらいになる?)
【小林製薬 小林章浩社長】「現在(製品を)回収をすべく努力をしておりまして、全容が把握できておりませんので、影響、金額につきましてまだ把握できていない状況です。ちょっとスピードが遅くなっていまして、全容が分かるのがいつごろになるのか今、申し上げられません」
■「紅麹」原料を使用していた企業 会見で不安は解消されず
29日の会見を注目していた滋賀県・東近江市にある「パンのカワバタ」の川端さん。
【パンのカワバタ 川端宏明代表】「何を話すんかなっていう気持ち。この段階で中間報告だと思うんですけど。(会見を生で見ながら)きた…」
メモをとりながら、会見を聴く川端さん。30年間、看板メニューとして販売していた食パン「いのちのパン」に、小林製薬の「紅麹」を使用していました。
仕入れ先から先週金曜日に紅麹の回収連絡が入り、食パンの製造を中止しました。小林製薬では食品用の紅麹には、未知とされていた成分は入っていないと説明していましたが、川端さんは会見を聞いても心配が解消されません。
【パンのカワバタ 川端宏明代表】「原因のカビ成分が入るのか、そのへん気になってた。結局は分からんってことですよね。原因がどこまであるのか一番知りたいです」
販売した6人全員から、食パンを回収した上で、返金を済ませていて、現時点で健康被害の連絡はないといいます。
【パンのカワバタ 川端宏明代表】「代替えのパンの注文をいただいて持って行ったんですけど、きのう電話があって、しばらく注文やめようと思うって言われたんです。『紅麹のパンの味が好きなんですと、紅麹の方がおいしかったら』って言われて。『いのちのパン 紅麹パン』っていう名前を看板として使っていて、この先果たして復帰できるのかと」
他の企業も29日の記者会見に注目していました。愛知県小牧市の製薬会社「山本漢方製薬」。この会社でも製品に小林製薬の「紅麹」を使用していて、今週月曜日から自主回収を始めています。
【山本漢方製薬 吉田正敏顧問】「まだ補償内容について補償するっていっても具体的な内容が全くきてないので、うちはどれだけかかったかというところから集計していますので、それをぶつけさせてもらって『どうするんですか?』と。具体案だけは、どこまでという案だけはほしいです」
■「プベルル酸」とはどのような物質なのか
想定されていなかったという「未知の成分」ついて、新たな事実が29日に分かりました。小林製薬は厚生労働省に対し、「未知の成分」は「プベルル酸」である可能性があることを示しました。厚生労働省によりますと、「プベルル酸」は、青カビの天然化合物で、抗生物質の特性を持つことが知られていて、毒性が非常に高いということです。
腎臓に関する障害が起きたことがあるか、現時点では明らかになっていないということで、今後も調査が行われるということです。
サプリの摂取と死亡などの因果関係はまだ明らかになっていませんが、小林製薬はサプリを飲んだ人に対しての補償について言及を始めています。FNNの取材によると、サプリを飲んで亡くなった方は5人で、70代から90代の男女ということです。そして入院されている方は延べ114人ということです。
補償に関して、サプリを摂取した人の一部に対し、個別に電話で治療費などの負担を補償すると申し出ているそうです。29日の会見で、通院中・通院希望の人にも治療費の補償を行っていくとしまして、現時点で対象となるのは680人ということです。
■「リスク対応が非常に軽視されていたんじゃないか」とジャーナリストは指摘
今回のこの小林製薬の一連の対応はどう考えられるのでしょうか。
【ジャーナリスト 浜田敬子さん】「最初に医療機関から複数症状が出た人がいるという情報提供があったのが1月半ばです。そこから公表まで2カ月余りたっている。例えば日々サプリを飲んでる人とか、広く他社に提供していることを考えると、あまりにも情報公開が遅かったんじゃないかなと思います。もちろん原因特定できないことはあると思うんですけども、その間に被害が拡大していく可能性もあったわけです」
「さらに私が今回感じたのは、最初の症状が報告されてから、社長に上がるまでに半月ぐらいたってるんですよ。製薬会社とか食品会社で、健康被害があった時は、やはり即、会社の中で共有されて、経営判断をあおがないといけないケースだと思います。そういう意味で、小林製薬はいろんな新しい商品、アイデアがたくさんある、攻めの経営はすごく得意だと思うんですけども、今回の対応をみるとリスク対応が非常に軽視されていたんじゃないかなと感じました」 「未知の成分」が「プベルル酸」である可能性があるということですが、今後詳細についてどのように調べていくのでしょうか。
【関西テレビ 神崎報道デスク】「小林製薬がずっと調査をしてきて、構造まではみえてきたと。国の方で『プベルル酸』かといわれているんですけど、まだ確定できていない。小林製薬の調査では時間がかかっているので、小林製薬がデータを国の研究機関に預けて、今後は国の研究機関の方で確定していくという作業になると思います」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月29日放送)