大物議員が突然の発表です。派閥の政治資金問題をめぐり、自民党の二階元幹事長が次の衆議院選挙に出馬しない意向を表明しました。
当選回数13回、実に40年余り国会議員を務めてきた自民党の重鎮・二階俊博元幹事長が下した「不出馬」の決断。
【自民党・二階俊博元幹事長】「本日、岸田文雄総裁に対し、次期衆議院選挙に出馬しないことを伝えました」
その理由として上げたのは、派閥の政治資金パーティーの収入の一部が政治資金収支報告書に記載されていなかった問題への責任でした。
【自民党・二階俊博元幹事長】「全て私の…監督責任者である私自身の責任にあることは当然のことであります」
また自らの事務所もおよそ3500万円の収入を記載しておらず、派閥の元会計責任者が在宅起訴、二階元幹事長の秘書は略式起訴されています。
1983年の初当選以来、地元・和歌山のインフラ整備や災害対策などに力を注ぎました。 【二階俊博候補(当時44歳)】「地元の皆さんよろしくお願いします。ありがとうございました。行ってきます!」
東日本大震災を受けて国土強靱化を主導し、建設関係の予算確保に力を振るった二階元幹事長。その強力な進め方に、「道路族」や「族議員」との評価も受けましたが…
【自民党国土強靭化総合調査会・二階俊博会長(2013年)】「族議員の復活というのは何を指してそういうことを言っておられるんですか?われわれは災害とですね、本当に関わり合いが多くあって、それを一生懸命やったからといって、何が族議員ですか!」
その批判を強くはね返してきました。今回の政治資金問題についても…
【自民党・二階俊博元幹事長(ことし1月19日)】「別に派閥が悪かったわけでも何でもないんだもん。派閥が何か悪いことをしているわけでも金をごまかしてるわけでも何でもないんだもん」
と”二階節”を聞かせていました。
そして25日。 自民党内で安倍派の世耕前参院幹事長などの4人の幹部のみならず、二階元幹事長に対しても、重い処分を行う案が浮上する中で発表された「不出馬」の決断。
【自民党・二階俊博元幹事長】「政治の原点はふるさとにありと常に申しておりますが、私はその考えのもとに政治の道を歩んで参りました。ぜひ自由民主党が再び国民の期待に応える政党として、再起することを願います。ありがとうございました、よろしくおねがいします」
40年あまりの政治生活を振り返った上で、後継者については「地元の皆さんのご判断にお任せする」と述べて明言しませんでした。 そして「なぜこのタイミングでの発表なのか」を問われると。
【自民党・二階俊博元幹事長】
(Q.不記載の責任をとられた?それとも年齢の問題?)「年齢に制限があるか!」
(Q.いや年齢制限はないですけど、お年を考えてかと…)「お前もその年が来るんだよ!」
やはり二階節が復活しました。
突然の発表を受け、二階氏の地元・和歌山では…
【和歌山県・岸本周平知事】「政治とカネの問題で国民の信頼を失ったことで責任を取られるということでしたので、選挙に出ないというのが政治家にとっては一番重い判断であります」
【太地町・三軒一高町長】「土曜日に先生が来てくれて、お会いしたばかりだったんで非常に驚きました。和歌山県にとっても大変なことになったなっていう、これからどうなるのかなという思いです」
一方で住民からは厳しい声も…
【地元の住民は】「もう年も年ですし、もっと早く決断してほしかったですけどね、二階さんには。良い状態でひかれたらよかったのかなと思いますけどね、この時期じゃなしにね」
【地元の住民は】「裏金問題もあるし、しょうがないんとちゃいますか。辞めたほうがええわな、どっちみち責任を取らされるのやから」
裏金問題で揺れる自民党。大物議員のこの決断は、今後どのような影響をもたらすのでしょうか。
二階元幹事長のこのタイミングでの不出馬の表明。太田さん、背景にあるのは何なんですか?。
【共同通信社編集委員 太田昌克さん】「実は10日ほど前、国会取材をしていましたが、ある二階派の重鎮が『二階さんが辞めるっていう情報が駆け巡ってる』とのことでした、10日前のことです。ただ、『これ(発表の)タイミングが難しい』と言っていたのですが、おそらく私は二階さんは2つの政局をにらんで今回の決断に至ったと思います。
まず1つ目の政局は中央政界です。これから何が起きるかというとこの裏金問題で岸田首相は、二階派の幹部、それから安倍派の幹部に何らかの厳しい処分を下さなくてはいけないわけです。最大の問題は、実は二階さんの処遇でした。二階さんを仮に厳罰に処した場合、何が起きるか。二階さんが反発して仲間と一緒に“岸田おろし”を始める可能性が場合によってはありました。例えば 4月の島根の補選で自民が負けて惨敗するようなことがあれば、ゴールデンウィークから“岸田おろし”の可能性がありました。だから、岸田首相もなかなか面と向かって二階さんに厳罰を下すことは難しい…そういうジレンマにありました。
そういった中で、今日二階さんがご自身がお辞めになるという判断をされたので、岸田首相には渡りに船ですね。二階さんが身を引いてくれたので、あんまり二階さんに忖度しなくてよくなったってことで、岸田さんはある意味『4月解散』のカードを握ったかなっていう感じがします」
【共同通信社編集委員 太田昌克さん】「(Q.そんな中で不出馬を表明して後継候補についてはどうなるのでしょう?)。私がもう1つの政局、“和歌山政局”をにらんで今回の判断をされていると思います。今度の10増10減で和歌山選挙区は2つになります。もう1区の候補は決まっています。2区については、このままだったら二階さんが出馬していたはずですが、きょう引退表明したので今後誰にするかですよ。
参議院の世耕さんも実は狙っていたわけです。しかし世耕さんは今、裏金問題でとてもじゃないけど衆議院にくら替えできない。そうなると、二階さんは早いうちに自分が引いて、自分の息のかかった人間を和歌山2区に出馬させる。 軽々に言える話ではありませんが、場合によってはご子息のことも…そういったことも念頭に置きながら、一番いいタイミングでの引き際を、二階元幹事長は選ばれたんじゃないかと思います」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月25日放送)