自治体がメルカリで「粗大ごみ」を売る 注目のごみ削減策で歳入もゲット 「出品して数十秒で売れるものも珍しくありません」 先進的な自治体には各地から問い合わせも 2024年03月19日
“粗大ごみ販売”が注目を集めている。2年前から一部の自治体が、フリーマーケットアプリ「メルカリ」を活用した粗大ごみの販売を開始。自治体に集まった粗大ごみを、職員がメルカリに出品して販売するこの取り組みは、家電や家具の中古品を、ネットで簡単に見られることもあって、グッと身近なものになり、売れ行きは絶好調だという。
「出品して数十秒で売れるものも珍しくありません」。そう話すのは、静岡県三島市廃棄物対策課の山添豊さん。
メルカリによると、現在、全国の10自治体が、メルカリでの粗大ごみ販売を実施中。粗大ごみの「メルカリ出品」を、昨年9月からスタートした三島市では、半年で450点近くが売れ、およそ4トンのごみ削減に成功した。出品商品の9割以上が売れている人気ぶりだ。
悩みの種だったごみが減り、半年で50万円近い市の歳入にもつながり、購入者は欲しい物を激安価格で手に入れられる。まさに“いいことずくめ”の取り組みについて、山添さんに話を聞いた。
■きっかけは“最終処分場の逼迫” 粗大ごみ処理に税金8000万円
【静岡県三島市廃棄物対策課・山添豊さん】「もともとは、リサイクルが中心で“リユース”はあまりできていませんでした。清掃センターに集まった粗大ごみの内、プラスチックなどは燃やし、木製のものは、市がリサイクル業者にお金を払って引き取ってもらっていました。しかし、最終処分場はどんどん逼迫(ひっぱく)。年間8000万円ぐらいをかけて、県外の民間の処分施設に引き取ってもらう事態になってしまったんです」
「“どうにかしてごみを減らさなければいけない!”そんな時、メルカリを活用した粗大ごみ販売の事を知り、興味を持ちました。以前から、エネルギーを使うリサイクルより、そのまま使うリユースの方が効率がいいと意識していましたし、何より、この販売方法は自分たちの負担が少なくて済みます。自治体の業務量は増えていますが、職員数は増えませんから、負担が少ないというのは事業を続けるための大きなポイントなんです」
■粗大ごみ販売は“スピードが命”
【静岡県三島市廃棄物対策課・山添豊さん】「また、フリーマーケットという販売スタイルも魅力的です。皆さんが思う以上に、“まだまだ使えるごみ”って多いんです。だから倉庫はすぐに埋まってしまう。パンパンになる前に売却して、新しいゴミを受け入れる。粗大ごみ販売はスピードが命なんです。昔からあるオークション形式だと時間がかかります。安くてもいいから、とにかく早く売って、引き取りに来てもらって、次のモノを出品する。そういう流れの方が、効率よくリユースでき、ごみを減らせると思います」
■出品基準は「大・重・不燃」
【静岡県三島市廃棄物対策課・山添豊さん】「我々の一番の目的は“ごみの量を減らすこと”。ですから『大きいもの』『重いもの』というのが最大の出品基準です。また、陶器やガラスなどの燃えないものは、砕いて埋めるしかないので、リユースされるとごみの削減につながります」
「さらに、これは裏テーマと言いますか、狙いの1つなんですが、固いものは破砕機を消耗させるので、機械が壊れる大きな原因になります。修理代は高額でバカになりません。機械の消耗を防ぐことは税金の節約となる、大事なポイントです。もちろん、キレイでまだまだ使えるものというのは大前提です!自治体が販売しているということで信用して下さる方がたくさんいますから、信用を失わないために、品質管理はしっかり行っています」
■見映えよりリアル 傷をしっかりハッキリ見せる
【静岡県三島市廃棄物対策課・山添豊さん】「出品作業は、私ともう1人の職員で担当していています。写真を撮る際のこだわりは『よりリアルに見せる』こと。傷をはっきり写し、なるべく自然光で実物の色を見せます。美しさや見映えは二の次です。なので引き取りにきたお客さんに『こんなにキレイなんですね』と言ってもらえることも多く、うれしい誤算です」
■臼と杵は即完売 意外に売れないものとは
【静岡県三島市廃棄物対策課・山添豊さん】「意外な人気商品が『臼と杵』です。これまで3点出品しましたが完売。2万円で出品したものもありましたが、あっという間に売れました。購入者の方は『ずっと探していたので買えて良かった。しかも相場よりかなり安いです』と喜んでくれました。臼なんて、それまでは、重いし、壊せないし、運ぶの大変だし、と現場にとって悩みの種だったんですよ。『ある人にとってはいらないモノでも、欲しい人にはお宝である』と実感させられる商品です」
「反対に、なかなか売れないのがベビーカー。子供商品はよく売れるジャンルですし、ベビーカーは使用期間が限られているので、人気なのかと思っていたんですけどね。ヒアリングをしたところ、祖父母からのお祝いなどで新品を購入する家庭も多く、またデザインや色にこだわりたい人が多いということもあるようです」
「現状、購入商品の配送は行わず、現地引き取りのみなので、購入者の方と話をする機会も多く勉強になります。ヒアリングをもとに『これは売れ筋かな?』と出品したものが即完売したらうれしいですね」
■どうする「東京ドーム3杯分」の粗大ごみ
環境省によると、令和3年度の粗大ごみは全国で約120万トン。東京ドーム3杯以上だ。
自治体とメルカリがタッグを組んだことで実現した、“少ない負担で、多くの粗大ごみを、素早く販売出来る”この取り組み。
現在、三島市の山添さんの所には、「詳しい話が聞きたい」と、全国の自治体から問い合わせが相次いでいるという。今後、リユースの輪は、ますます広がりそうだ。