住職を務めていた寺の土地を売買したように装って、虚偽の登記をした罪などに問われた元住職の裁判が14日、始まりました。
元住職の辻見覚彦被告(57)は、弁護士を立てずに、初公判に臨みました。 初公判では、被告人の名前などを確認する人定質問の手続きが行われた後、通常行われる、起訴内容を認めるかどうか「罪状認否」を被告に聞く手続きの前に閉廷しました。
弁護人を付けて行われる次回の公判で、続きの手続きが行われることになります。
辻見被告は大阪市阿倍野区にある正圓寺の住職だった2018年、寺が所有する土地の一部を売買したように装って虚偽の所有権移転の登記をした電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪などに問われています。
辻見被告の犯行に関与していたとして不動産会社役員の加尻法清こと平岡弘聖被告(54)、会社役員の南野潤二被告(55)、不動産会社役員の西村浩被告(57)も逮捕・起訴されています。
辻見被告が住職を務めていた正圓寺は、平安時代の939年に創建されたと伝えられる寺で、「天下茶屋の聖天さん」と呼ばれて地域の人にも慕われ、正月には多くの人で境内が埋まるほど賑わっていました。
しかし18年前に先代の住職が亡くなり、辻見被告が跡を継いでから、特別養護老人ホームの建設などで資金繰りが行き詰まるようになり、虚偽の登記をした結果、境内や本堂などの建物もすべて人手に渡りました。
警察の調べによると、この虚偽登記を持ちかけたのが、会社役員の南野潤二被告(55)、不動産会社役員の西村浩被告(57)で、辻見被告はこれまでの取材に対し「だまされた」と主張していました。
14日の初公判の直前にも、取材に応じ、次のように述べました。
(Q今の気持ちは?)「もう何も…あとは裁判所の判断に委ねるだけで…取り立てて、気合は入れては来てないですけど…」
(Q主張したいことは?)「私が意図的にしたことではなく、だまされてしたということがわかってもらえるような話ができればと思っています」
(Q自分の行為について非は認めるんですか?)「したことはしたことで、お寺に迷惑をかけたことは事実なので、そのことについては真摯に反省しています」
14日の法廷では、辻見被告の人定質問が行われたものの、裁判官が「弁護人が辞任したようですが、この裁判では弁護人が必要ですので、これ以上の手続きは行えません」と告げ、通例では行われる起訴状の朗読やそれについての罪状認否、検察官による冒頭陳述は行われませんでした。
裁判官は辻見被告に「(裁判所と)連絡が取れない状況だと聞きましたので、念のために裁判所にお越しいただきました。次回は国選弁護人が決まってから期日を指定します」と話しました。
辻見被告は、当初の弁護人が同じ事件で起訴された他の被告と同じ弁護士だったことへの不満などから、弁護士なしで初公判に臨んでいました。 次回公判からは、国選弁護人がつくということです。
(関西テレビ 2024年3月14日)