和歌山県串本町で民間ロケット発射場から国内初のロケット発射が行われましたが、直後に爆発して失敗に終わりました。爆発したロケット「カイロス」に、いったい何があったのでしょうか。
多くの人が注目した小型ロケット「カイロス」。しかし発射からおよそ5秒後、爆発し大きな炎と煙が上がります。爆発の衝撃で機体はバラバラになりました。
発射場に取り付けられたカメラには、ロケットの破片のようなものが空から落ちてくる様子が映っていました。周辺の他のカメラにも爆発の様子が収められていました。
発射台周辺では激しく炎が上がっているところもあり、ロケットの機体の一部とみられるものも確認できます。打ち上げから約10分後にはスタッフが現場を確認しに来る様子もありました。
■多くの地元の人が見学する中、ロケットは現れず、煙だけが立ち上る
地元の人たちは小学校の屋上で打ち上げを見守っていましたが、ロケットは現れず、山の奥から煙だけが立ち上っていました。
【地元の人】「飛んでない。飛んだら上行くはずだけど、行かなかった。バーっといくつもに割れたから」
【地元の人】「上がった。落ちたん?落ちた!」「また煙が出てる」「何年も待ったのによ」
発射場から約2キロ離れた見学会場でも、発射時間になってもロケットが現れず、場内アナウンスが…
【場内アナウンス】「爆発して機体がばらばらになったと」
【見学会場の人】「えー」
【見学会場の人】「残念、悲しいな~。楽しみにしてたのにな」
【見学会場の人】「この間よりもショックかな。楽しみにしてたんやけどな」
【見学会場の人】「本当だったら見えたはずなのが、煙しか見えなくて、がっかりしました」
■日本初 民間発射場から打ち上げられた小型ロケット「カイロス」
小型ロケット「カイロス」は、全長18メートル。将来、年間30機打ち上げることを目指して民間企業が開発したもので、日本では初めての民間発射場からの打ち上げでした。また搭載している政府の小型衛星の軌道投入に成功すれば、民間単独では、国内で初めてのことになるはずでした。
「カイロス」は当初、3月9日に打ち上げが予定されていましたが、安全確保のための警戒海域に船舶が残っていたため、直前に延期になっていました。
こうした中で待ち望まれていた13日の打ち上げ。打ち上げ直後に爆発して起きた火災はすでに消し止められ、けが人などはということです。
13日の結果を受け、串本町の田嶋町長は…
【和歌山県串本町 田嶋勝正町長】「いやー、きょうの日を楽しみにしていましたから本当に残念ですね。町としてはロケットと一体となって町づくりをしていくと決めましたから、必ずスペースワンをバックアップしながら、町も一日も早く初号機が打ち上がるように協力していきたいと思います」
■「『失敗』という言葉は使いません。全て今後新しい挑戦に向けての糧」
【スペースワン 豊田正和社長】「皆さまの期待に十分お応えができなかったことに対して深くおわび申し上げます」
午後2時過ぎ、スペースワンが会見を開き、打ち上げの失敗について説明を行いました。
【スペースワン 豊田正和社長】「リフトオフをして約5秒後、飛行中断の措置が取られました。原因については対策本部を立ち上げて現在調査中でございます。スペースワンの関係者の被害もないことも確認させていただきました。したがって安全な飛行中断をすることができたと考えています」
スペースワンによると、ロケットは浮上したものの、次のステップの第1段ロケットの分離などに移る際に、何らかの異常を検知し、搭載されたシステムで自動的に爆発したのではないかということです。
【スペースワン 遠藤守取締役】
(Q.破壊の判断自体は正しかった?)
「そういうことも含めて、原因究明は幅広く現在進めています」
(Q.ロケットの到達高度は?)
「100メートルはいってないですよね。きっと50メートルか60メートルぐらいか」
(Q.5秒くらいで破壊されることも織り込み済み?)
「まず安全確保という観点が第一ですので、損害が出るような地域には落下させないことをあらかじめ設定したうえで飛行安全管制をしている。山林の火が付くのも我が社の敷地の中ですので、そういうことも織り込みながら消防車の準備とかもやっています」
スペースワンは早急に原因の究明をしたいとしていますが、多くの人が期待を寄せていたこのプロジェクトです。今後の計画への影響は?
【スペースワン 豊田正和社長】「次のタイミングというのは原因究明してみないと分かりません。次の段階に進むためには何と言っても再発防止策を明確にしないといけませんので。スペースワンとしては『失敗』という言葉は使いません。なぜかというと一つ一つの試みの中に新しいデータがあり、経験があり、そうしたものは全て今後新しい挑戦に向けての糧と考えております。計画自身を変える気持ちは全くございません」
■打ち上げまで取材してきた記者 現地からリポート
打ち上げから6時間ほどたった現地の状況を、串本町で打ち上げの瞬間を取材していた関西テレビ 籾山記者が報告します。
【関西テレビ 籾山あやの記者】「カイロスは奥に見える山の向かう側から打ち上げられました。午前11時頃に打ち上げられた時、こちらの会場で多くの人が見守っていたんですけれども、今は露店も撤収され、人の姿もなく閑散としています」
「私はまさにこの場所で打ち上げを見守っていました。カウントダウンの後、ゴウという地鳴りのような大きい音がして、みんな息をのんで見守っていたんですけれども、その時同時にパンという小さい爆竹のような音がしたと思います。しかしロケット発射を見るのはほとんどの皆さんが初めての経験なので、どこまでが普通のことか分からず、ロケットの姿がなかなか見えなくて困惑したような様子でした。徐々に白い大きい煙がもくもくと上がってきて、『もしかして爆発だったんじゃ』という雰囲気になり、最終的にアナウンスで失敗したというコメントがあって、皆さん落胆していました」
「串本でロケット打ち上げを楽しみにしている地元の方を取材してきました。その中で『町をあげて串本をロケットの街にするんだ』という希望をすごく感じていました。一方で宇宙ビジネス、ロケットビジネスが簡単なものではないことも同時に感じていました。何十回という失敗をへて、その先にようやく成功が得られる世界だということです」
「午後2時から、スペースワンの会見がありました。そこでは、とにかく早く原因を究明して次のチャレンジをしたいという姿勢が感じられました。スペースワンでは『失敗』という言葉を使わず、今回はミッション未達成だったけれども、次こそ達成するという強い意志を感じました。また会見の中で、アメリカの会社で初年度にはロケットの打ち上げうまくいかなかったけれども、翌年に3基のロケットを打ち上げた会社もあり、そういうスピード感をもった会社とわれわれは戦っていかないといけないという発言もありました。ぜひ熱が冷めないうちに、またみんなで発射を見守りたいと思います」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月13日放送)