アルツハイマー病の治療薬「レカネマブ」 患者への投与が始まる 2週間に一度の通院が1年半必要 投与できるのは『早期の患者』だけ 2024年03月17日
アルツハイマー病の画期的な治療薬「レカネマブ」の患者への投与がついに始まりました。
番組では、京都で初めてレカネマブを投与された女性を取材。治療にたどり着くことができたのは、家族のおかげでした。
■アルツハイマーの原因物質を取り除く初の治療薬
京都市山科区に暮らす80代の女性は2年前、「アルツハイマー病」と診断されました。
薬を飲み忘れるなど物忘れが増えたことに夫が気づき、病院で検査を受けました。
【女性の夫】「この頃は『あれない、これない』と物を探す時間が増えました」
【患者の女性】「物を探すのに『あれ知らん?これ知らん?』って聞くのが、会話の一つになってます」
根本的な治療法がなく、「不治の病」といわれるアルツハイマー病。
病気が進行すると、着替えなどの日常的な動きができなくなり、寝たきりの状態になります。
先が見えない中、光が差したのが「レカネマブ」の開発でした。
アルツハイマー病は、原因物質の一つとされる「アミロイドβ」が神経細胞を傷つけ、認知機能が低下すると考えられています。
「レカネマブ」は、アミロイドβ自体を取り除く初めての治療薬です。病気の進行を遅らせ、認知機能の低下を緩やかにすることが期待されています。
国に承認され、2023年12月から販売が始まりました。
【洛和会 音羽病院 脳神経内科 和田裕子医師】「決して記憶が良くなるのではなく、道に迷うとか介助が必要な能力が落ちるのが非常に遅くなる。すごくいい始まりだと思う。(アルツハイマー病の治療は)暗いトンネルの中で光が見えない状況だったので」
■投与のため2週間に一度の通院を1年半継続
2月末、夫婦は病院を訪れました。京都府で初めて「レカネマブ」の投与を開始したのです。
約1時間の点滴で投与。2週間に1回の通院を1年半続けなくてはいけません。
「レカネマブ」は壊れた神経細胞を再生させることはできないため、投与できるのは早期の患者だけです。
女性が病気にいち早く気づけたのは、いつも近くにいた夫のおかげでした。
【患者の女性】「病的に悪いというほど忘れてはないと、自分では思っていた」
【女性の夫】「ちょっと物忘れするから見てもらいたいと話していた。行っているお医者さんに言いなさいと言った」
かかりつけ医に相談したところ、大きな病院での検査を勧められたということです。
【洛和会 音羽病院 脳神経内科 和田裕子医師】「発症間近の本当に軽い物忘れで『年のせいだ』と見過ごしてしまう方が(薬の)対象。そこで周りが気付けるかが問題」
【患者の女性】「薬飲んで長生きできたら子どもにも会えるし、二人で元気やったら旅行行ったり遊んだりしたい」
新しく始まったアルツハイマー病の治療。“周りの気づき”が希望の光となります。
■効果や費用は? 早期発見のためのポイントも
「レカネマブ」の効果について、完治を目指すものではなく、軽度の症状の進行を2~3年遅らせるということです。
費用については、自己負担額(月額)の一例として、70歳未満(3割負担)は約9万9000円。70~74歳(2割負担)は約6万6000円。75歳以上(1割負担)は約3万3000円となっています。
医療費が一定額を上回った場合に差額が返金される「高額療養費制度」などの対象となれば、この負担額もさらに軽減していくということです。
治療を受けている女性に費用について聞くと「施設に入ると月に最低20万円が必要。それに比べると負担は少ない」と話していました。
「レカネマブ」の治療の対象となるのは「物忘れが多くなった」という「軽度認知障害」、さらに、日付などが思い出しにくくなったという「軽度認知症」までに限られます。
早期発見のためにはどうすればいいのか、音羽病院の和田医師に聞きました。チェックポイントは次の2つです。
・まずは本人の自覚
メモしないと忘れてしまうことが増える
・家族が定期的にチェック
同じ話を、少し時間を置いて再度した時に「そんな話した?」という反応がみられる
上記に当てはまる場合は、病院の受診が必要かもしれないということです。
費用面の負担のほか、現在は投与を受けられる病院が限られているなどの課題がありますが、多くの患者が治療を受けやすくなることが期待されます。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年3月12日放送)