2月24日でロシアによるウクライナ侵攻から2年となります。戦況はこう着状態が続く一方で、兵士や市民の犠牲は日々増え続けています。ウクライナの首都キーウから中継で、森元記者が報告します。
【森元愛記者】「私は今、キーウ市内の独立広場にいます。後ろにはウクライナの旗がたくさん立てられています。亡くなった兵士や市民の名前が書かれています。新たに旗を立てに来る人の姿もありました」
侵攻から2年、追悼行事が行われる予定はあるのでしょうか?
【森元愛記者】「多くの人が集まる集会は攻撃の対象になるため予定されていません。各自で亡くなった方へ心を寄せるのだと思います」
「キーウ市内は戦時中の国かと疑ってしまうほど、レストランなどは多くの人でにぎわっています。去年はロシアによるインフラ施設への攻撃の影響で停電が多かったのですが、今週は全く停電はありません。そういうこともあってか、暗い雰囲気はあまりないように感じます。ただ、空襲警報が鳴ったり、夜間外出禁止だったりというところで戦時中だという現実に引き戻されます」
「ウクライナ侵攻から2年となるのを前に、『攻撃される恐怖感はないのか』と市民に聞きますと、『防空システムが発達しているから特に心配はしていない』という答えが返ってきました。一方で前線に近い地域では、今も非常に緊迫した状況が続いてます。ウクライナの各地を取材しました」
■地雷の除去 装備も人も足りていない
ウクライナとロシアが激しい攻防を繰り広げている前線から約30キロの村、ウクライナ軍がロシアと激しく戦った末に奪還したへルソン州のプラウディネです。
【森元愛記者 2月19日】「こちらの茶色くなっている土地はすでに地雷除去車が地雷を撤去したあとだといいます。ただ反対側を見ると赤と白のテープが巻かれていて、いまだに地雷が残っている恐れがあるということです」
村はずれの土地には、地雷の危険性を知らせる赤と白のテープが無数にはためいたままです。村の建物の多くも破壊されました。
【農家】「去年の冬、そこの土地を耕したら砲弾が15発も見つかりました。地雷の除去が必要なのに特別な装備も人も足りていないんです」
ウクライナは、地上からも、空からもロシアによる攻撃にさらされています。
【森元愛記者 2月18日】「オデーサの大聖堂ではこの場所にミサイルが着弾しました。建物の内部では壁画も損傷してしまっています」
ロシアによる攻撃は、ライフラインにも及んでいます。
【ミコライウ市民】「水道水は黄色いし、少し匂いもして水質が良くありません。だから普段は飲まないんです。料理には使えませんし、歯磨きにも使えません」
南部の街ミコライウでは浄水所が攻撃された影響で、水道水の質が著しく低下。自治体が清潔な地下水を供給している水くみ場はありますが、水道の復旧はめどが立っていません。
■兵士不足打開に「新兵募集センター」オープン 一方で強引な徴兵も…
ロシアによる侵攻から2年。この間、ウクライナが奪還した土地もありましたが、17日には物資の補給や防衛の重要拠点である東部ドネツク州のアウディーイウカからの撤退を表明しました。
【ウクライナ ゼレンスキー大統領 17日】「残念ながら、ウクライナの砲兵・長距離攻撃の武器を人為的に不足させたままにすると、プーチンの激しい戦争への適応を許すことになる」
国連機関は、これまでの民間人の死者が1万人を超えると発表。一方で増え続けているとみられる兵士の死者の数について、ウクライナ政府は国家機密として発表していません。
戦況を打開したいウクライナですが、「兵士不足」が今、深刻です。政府は、徴兵の対象年齢の引き下げや、学生に対する徴兵免除の見直しも検討し始めています。
そんな中で新たにオープンしたのが…
【森元愛記者 2月16日】「動員に関する課題に対処しようと、国防省は新たな形の募集センターを開設しました」
先週、ウクライナ西部の都市・リビウにできた「新兵募集センター」。ここでは、希望する職種や任務地を伝えると、職員が各部隊の欠員を探して配属先を調整します。こうしたマッチングの配慮によって、兵士の士気を高めたい考えです。
【「新兵募集センター」職員】「ただ欠員を埋めるだけでなく、自分のスキルに応じて、ウクライナに価値をもたらすことにつながります」
【センターに来た男性(33)】「歩兵になって人を殺すのは怖い。死ぬのも怖い。自分で行き先を選べるので安心です」
ただ、国内では当局の動員方法に批判が集まることもあります。
SNSで出回った動画では、突然、市民が乗るバスに軍服を着た当局の担当者が乗り込んできて、“乗客の男性を徴兵事務所に連行しようとした”とみられ、周辺にいた乗客が男性を守ろうと声を上げる様子が映されていた。
【バスの乗客】「権利の侵害だ」「叫ばないで。いかれてる」「出てって。触らないで」「ここから出ていって」「バカ野郎」
■深刻な兵器不足 「ドローン」で戦局変えようと部隊立ち上げ
兵士不足だけでなく、武器の不足も課題です。そのためゼレンスキー大統領は2月6日、戦局を変えるために、「ドローン専門部隊」を立ち上げました。
軍事用ドローンを製造している企業は、偵察用ドローンなどの増産を行っていて、ウクライナ兵士に対し操縦のレクチャーも行っています。ウクライナ政府によると、国内のドローン製造会社は、この2年間で7社から200社にまで増えたといいます。
【エアロジックス ビタリー・コレスニチェンコCEO】「ドローンは非常に有望な武器で、それが戦争の勝者を決めることになるだろう」
戦地では大量のドローンが必要となっていて、企業だけでなく、一般市民も製造に協力しています。国民は組み立て方を学ぶオンライン講座を受講して、各自、自宅などでドローンを作成しているのです。ウクライナ政府は、ことし100万台のドローンを製造したいとしていて、担当大臣が国民へ協力を呼び掛けています。
24日でロシアによるウクライナ侵攻から2年。戦闘が続くことについてウクライナ国民に聞くと…
【オデーサ市民】「ロシアの進軍は止まらない。だからロシアに打ち勝たないと」
【キーウ市民】「私はウクライナを愛しているし、ゼレンスキーはみんなに選ばれた若いリーダー。もちろん信じている」
FNNのアンケートに対して、約7割の人が「ロシアに勝利するまで戦闘を続けるべきだ」「ゼレンスキー大統領を信頼する」と答えました。
一方で…
【ウクライナ現役兵士】「ゼレンスキーは約束したことをしてくれなかった。半年後に戦争が終わると言ったのに」
【ハルキウからの避難者】「ある程度の譲歩をして、領土をあきらめるべきかもしれない」
一部の領土を放棄してでも、早く戦闘を終結させて欲しいという声も聞こえてきます。
■戦地から帰った兵士か 親しい人と2人の時間を精一杯大切にしている様子が
キーウ市内でも戦況の厳しさを感じることはありますか?
【森元愛記者】「キーウ市内で、軍服を着た兵士が女性と子供と歩いている様子もちらほら見かけます。 兵士はそれぞれに家族があり、そういった家族を持った人たちが戦闘に加わっていることを思うと胸が痛くなります。 きのう軍服を着て松葉杖をついた男性兵士と女性が、一緒に何枚も写真を撮っているのを見かけました。おそらく戦地から戻ってきて治療中の兵士なのだと思いますが、また戦地に送られるのか、2人の時間を精一杯大切にしているような様子がとても印象的でした」
徴兵強化の様子もあるようですが、市民の不安は増しているのでしょうか?
【森元愛記者】「実際、街中で当局の担当者に声をかけられたという男性が話をしてくれました。彼はそのまま家にも帰れずに前線に訓練に送られるのではないか怖かったと話をしてくれました。別の人に話を聞くと、人が多い中なので大丈夫でしょうとか、またロシアによる情報戦なのではといった声も聞かれまして、国民全体に不安が広がっているとは今のところ感じません」
ウクライナの首都キーウから森元記者の報告でした。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年2月23日放送)