学校の健康診断で「医師に裸を見られたくない」と思ったことがある方、少なくないのではないでしょうか。
今でも、服を胸の上までめくり上げて聴診器を当てる方法や、上半身裸で健康診断を行っている学校があります。小学校や中学校、高校でも行われているのです。
1月、文部科学省は通知を出し、子どもたちの気持ちに配慮するよう求めましたが、学校の健康診断は変わるのでしょうか。
■「着衣という選択肢を」 改善に動く自治体も
【京都府内の20代女性】「隠すもの何も持っていない上半身裸の状態でお医者さまの方と正面に座る。もう完全に、全部見えている状態にはなりますね」
こう話すのは、高校までの12年間、上半身裸で学校健診を受けてきたという20代の女性です。
14日、京都府庁で開かれた会見で「服を着たままでも健康診断を受けられるようにしてほしい」と訴えました。
【京都府内の20代女性】「着衣という選択肢を与えてほしいというのを強く訴えたくて」
なぜ、服を着たままではいけないのでしょうか?
「服を着たままでは、アトピーや、背骨が左右に曲がる脊柱側弯症などの病気、さらには虐待の兆候を見落とす恐れがあるから」とされてきましたが…。
2022年、京都府長岡京市の学生や保護者たちが「上半身裸を強制されるのは時代にそぐわない」などとして、見直しを求める署名を提出。
国会でも取り上げられるなど、問題意識も高まる中、文部科学省は1月、通知を出しました。
通知によると、診察の時の服装については支障のない範囲で体操服や下着を身に着けるか、タオルで体を覆うなど、プライバシーに配慮すること。
一方で、必要に応じて医師が体操服やタオルをめくって診察することがあると本人や保護者に事前に説明する必要がある、とされています。
関西の自治体の中には、すでに改善に向けて動き出したところも。
兵庫県加古川市では、かつては上半身裸で健康診断を行ってきましたが、2022年から診察に支障のない範囲で下着の着用を認めました。
【加古川市 教育委員会 松尾繁樹さん】「これまでかなり心的負担もあって健康診断の日は学校に行きたくないとか、そういったことも考えていた子供たち多かったようなのですが、下着が着用できるようになって、良かったという声をいただいています」
ただ、どうしても下着を外さなければならない場合もあるため、来年度から中学校の内科検診は同性の医師が行うということです。
【加古川市 教育委員会 松尾繁樹さん】「男性医師に比べると女性医師の数が少ないという課題がございまして、その点につきましては医師会の方でご尽力いただきまして女性医師に声をかけていただく形で調整いただいております」
■病院では着衣で診察…なぜ学校の健診だけ?
滋賀県大津市では、今年度から体操服やマント型のタオルなどを身に着けて健康診断を行うことになりました。
大津市で「学校医」を務める医師は、服を着た状態でも健診に問題はないと話します。
【あかい家のこどもクリニック 浅井大介院長】「胸までは上げない状態で心臓の音を聴診して、肺の音を聞く。皮膚の状態は、腹と首と腕の見える範囲でやっている」
脊柱側弯症についても、服をたくしあげれば診察はできるといいます。
【あかい家のこどもクリニック 浅井大介院長】「病院診察でも、全裸でやってるのかというと、そんな病院・クリニックはなかなかない。学校健診だけどうしてそこまで肌の露出にこだわるのかは、僕自身疑問」
ただ、着衣を認めるかどうかの最終的な判断は、担当する学校医に委ねられています。
【あかい家のこどもクリニック 浅井大介院長】「県や市の方針でそうなれば、診察医も従わざるを得ないけど、配慮しましょうということだと、配慮した中で、最終的には見せて診察っていう形に今はなっている」
「学校健診のあり方も、やり方も変わっていくべきだけど、そこが追いついていない印象」
■時代に応じて変わる子どもの人権・プライバシー
学校での健康診断については、男女関わらず恥ずかしい思いをされた方も多いと思います。
上半身裸で受ける健康診断への懸念の声を受けて文科省が出した通知を改めて、見てみましょう。
文部科学省は全国の教育委員会に対し、児童・生徒のプライバシーや心情に配慮するよう、待機するときは裸で待たせない。診察時は支障のない範囲で体操服やタオルで覆うといった通知を出しました。ただし、必要に応じて医師が服や下着をめくって視触診する場合があることを生徒や保護者に事前に説明を行うよう求めています。
浜田さん、上半身裸での健診への懸念は以前からありましたが、この通知についてどう思われましたか。
【ジャーナリスト浜田敬子さん】「思春期になったら男女ともに誰かに裸を見られるってことは嫌なわけです。うちの娘にちょっと聞いてみたら『もう学校では体操服とか制服をパッと開けてみる』と、裸にならなくてもいい学校はあって、『学校検診の場ではできないんですか?』と疑問を呈していらっしゃるドクターもいましたよね、『変わるべきだ』と。これはすごく大事なことで、時代に応じて子供の人権とかプライバシーの感覚が変わってきている。なのでそれを尊重しながら、同時にきちんとした健診ができるのかを考えるべきだと思います」
生徒や保護者に対して、事前に説明を行うということですが実際、京都市ではこのような資料が配布されています。
こちらはその資料を一部抜粋したものですが京都市では上半身の前面や背面を診察する際に、タオルを使用するなど胸部を隠す工夫などを行っているという例をイラストで表しています。
また、同じく京都の長岡京市では原則、上半身裸だそうですが希望者には学校側が用意したタオルなどを使用することによって不必要な露出を避ける工夫を行っています。
例えば、このようなエプロンタオルを学校で用意し、診察に支障のないよう、養護教諭などが前胸部のタオルをたくし上げます。
視聴者の皆さまの中にも、服を着たまま診察すればいいじゃないかと思われている方も多いと思いますが児童生徒の健診を行う学校医関係者の声をまとめました。
■具体的な解決策の一つは”同性”特に女性の医師
関西の学校医の方ですが「異常を見落とした時には訴訟も…以前より慎重さも求められる」。そしてもう1つ「胸を見せずに診察ができる最新機器を導入したいけど予算が…」という声がありました。医師としては、正確にそして慎重にしっかりと子供を診たいという思いがあるようですが神崎さん、健康診断のあり方についてどのように考えますか。
【関西テレビ神崎博報道デスク】「具体的な解決策としては、加古川市がやっていたように、同性の医師、特に女性の医師ですよね。日本の医学会を見ると、女性医師の割合は2割ぐらいなんです。医師国家試験に受かる人で若い人も増えているのですが、それでも3割から3割5分ぐらい。圧倒的に女性の医師が不足しています。急には増えないのでなかなか難しいと思うんですけども、地元の医師会などに協力してもらって、『同性の医師であれば構わない』ということもあると思うので、現場の配慮は必要なのかな…という風に思います」
子供の健康を守ること、そして子供たちの気持ちにしっかりと配慮すること、両方が求められる・求めていく必要があるという風に思います。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年2月16日放送)