国の認証試験で不正を行っていたダイハツ工業と、現在の社長が退任し新しくトヨタ自動車から社長を迎え入れることを発表しました。
13日午後3時、東京都内でトヨタとダイハツの共同会見が開かれました。会見で、ダイハツの奥平社長が退任し、新しい社長にトヨタの中南米本部長である井上雅宏氏が就任することが発表されました。
【トヨタ自動車 佐藤社長】「ダイハツの強みであるその原点に戻り、会社を作り替える覚悟でダイハツらしさを取り戻したい。現場で経営を指揮することを第一に考えたときに適任者は誰かということで、グループ全体から人選しました」
【ダイハツ工業 井上雅宏新社長】「再発防止策について、ダイハツが力不足の点はトヨタの力を借りて確実に実行していく」
ダイハツをめぐっては国の認証試験で30年以上にわたって、64車種で不正を行っていたことが明らかになり、国内外すべての車種の出荷が一時停止となっていました。
不正の調査を行った第三者委員会は「過度にタイトな開発スケジュールが組まれ、従業員がプレッシャーに追い込まれた」と指摘。先週、ダイハツが示した再発防止策には、開発スケジュールを従来の1.4倍に見直すほか、コストを下げるため大幅に減らされていた認証試験の担当者を、ことし6月をめどに去年1月の7倍に増やすことも掲げています。
井上新社長は今の体制の課題について現場任せになっていたことに触れ新しい組織体制を作ると述べました。
【ダイハツ工業 井上雅宏新社長】「各職場が果たすべき業務の量と質が拡大したはずですが、その中で現場の困りごとを吸い上げきれず、課題を残したまま業務遂行させてしまったことが原因ではないか。4月にダイハツの新体制方針を説明させていただきたい」
■「トヨタ全体の問題と捉えてゆく」とトヨタ 佐藤社長
ダイハツは2016年からトヨタの完全子会社になって以降事業が拡大し、短期開発がより推し進められるようになったことも、今回明らかになった不正の一要因であると指摘されていました。
そのためダイハツの事業領域の軸を軽自動車に置き、海外事業は企画開発・生産をトヨタからの委託に変更する方向で検討していることを明らかにしました。
(Q軽自動車専業でやっていくのか?)
【トヨタ自動車 佐藤恒治社長】「その前提を置きながら、ダイハツの取り組むべき事業領域を決めていくということだと思います。仮の軸を定めないと検討もなかなか進めませんので、その前提を置いて考えていくのだろうと思います。特に国内においては、軽自動車以外の車両もございます。基本的には事業を継続しながら、長期目線であり方を考えていく」
また、これまでトヨタとダイハツの間に遠慮があり実態や戦略が共有できていなかったことについては…
(Qダイハツから見てトヨタは親会社にあたり、言いにくいこともあったのではないか。これまでの課題も含めてトヨタとしてどう支援するか?)
【トヨタ自動車 佐藤恒治社長】「『現場経営』を徹底することが、やはり風土改革につながると思っています。どうしても会議室で仕事をしがちです。これまで十分に(現場経営を)できていなかったと思いますし、それを意識して始めることからだと思います。仲間だと思ってもらえるためには、話をしたら苦しいことや悩んでることに対してなんらかサポートしてくれる(と思ってもらわないといけません)。本音を言ってもらうまでには、ものすごい時間がかかります。この時間がかかることをこれからやっていくことが、ダイハツの立て直しに大事だと思います」
トヨタとダイハツが、それぞれの階層で言いたいことを言い合える関係になるべきと強調しました。 また井上雅宏新社長は、「中南米で培ったコミュニケーション能力を駆使して、自ら話しかけて、働きかけて、本音を引き出していく」と話しました。
■再建に向かうダイハツ 不正問題への再発防止策
ダイハツは12日、京都工場で安全性が確認された2車種の生産を再開しましたが、全ての車種の再開はめどがたっていません。完全復活に向けて、ダイハツがどのように生まれ変わるのか、不正問題に対する再発防止策を改めて見ていきます。
1、開発スケジュール
従来の1.4倍に延長。それでも間に合わない場合は、発売時期の延期も視野に入れます。
2、人員の増強
安全性の評価に携わる人を1.5倍、認証試験に携わる人を7倍に増やす予定です。
3、風通しの良い組織
内部通報制度の見直し、全役員・従業員の教育を行います。
4、トヨタとの関係
海外事業をトヨタからの委託に切り替え、国内では軽自動車に専念する見込みです。
親会社のトヨタ主導で改革がなされ、ダイハツは国内では軽自動車を軸にしていくということですが、どのように連携を深めていくのか、注目されます。