今回の連携は、KDDIがローソンに提案したということですが、コンビニの未来はどう変わるのでしょうか。ローソンで22年勤務していた流通ジャーナリストの渡辺広明さんに聞きます。
渡辺さんはそもそも日本のコンビニというものはこういうものだと言います。
・世界最高峰のリアル小売業
・20年前にほぼ完成済み
・人口減
・働き手不足が課題
【流通ジャーナリスト 渡辺広明さん】「日本人にとっては空気のように当たり前の存在のコンビニですけども、実は世界最高峰のリアル小売業なのです。例えば、みたらし団子が日本全国どこに行っても、24時間食べられるみたいな、そんな小売業を持っている国はありません。これが当たり前になってしまっているところが、すごいと思います。20年前にほぼ完成しているというのは、例えばお金をATMでおろせたり、収納代行ができたり、チケットが買えたり、ファストフードが充実していたりという形で、この20数年間はブラッシュアップしていました。だからあまり進化がなかった状況。ただしこれから人口が減っていく中で、なかなかビジネス的に難しくなってくるので、新しくこの技術・テックと連動することによって、今回KDDIとローソンが重なったということだと思います」
■未来のコンビニの形「リモート接客」「防災拠点」「配送サービス」「環境」
6日の会見で明らかになった未来のコンビニのカタチはこういったものでした。
【リモート接客】ローソンの実店舗での薬の処方や保険、金融事業などを専門の担当者がリモートで接客ができるようになる。
【防災拠点】通信技術や電源確保など非常時の防災拠点として活躍できる。
【配送サービス】配送サービスローソンを物流拠点として、客からのオーダーを15分で、日常生活に必要な店にある商品が、手元に届く。またドローンでの配送も考えているそうです。
【環境】ローソンに太陽光パネルを設置して、CO2の排出量を減らしたり、プラスチック使用量を減らしてゴミ全体の削減を目指して行く。
などが示されました。
リモートでこれまでにはない幅広いサービスを受けることができるということですか?
【流通ジャーナリスト 渡辺広明さん】「今回のように薬の処方や、保険や、金融や、新しいサービスを営業の窓口でやり取りすることもありますが、実はリモート接客に大変注目をしています。いまコンビニエンスストアで(商品が)不足していると考えることはほぼありませんが、薬の販売をしてほしいというニーズはまだあります。薬剤師がいないと販売ができないという今のルールがあるので、ちょっとルール改正が必要ですけども、リモートで薬剤師がいて、お客さまの接客しながら、処方・販売ことができれば、全店薬剤師を置かなくても販売ができる可能性があります。インバウンドがこれからコンビニエンスストアにとってもすごく大事になってくると思いますが、中国語、英語、フランス語をしゃべれる人を全店に配置するのは無理ですよね。でもリモート接客であれば、例えばフィリピンのセブ島から英語で対応する、中国の上海から中国語で対応するような形ができる可能性も高いです。また働く側からみても、例えば引きこもりの方や、身体に問題があって、外でなかなか働けない方の雇用も拡大できます。リモート接客は通信がきっちりできないとできないことなので、今回、一番私が期待をしていることです」
■アマゾン・楽天との差別化は「コンビニのUberEATS化」
配送サービスに関しては、今も楽天やアマゾンも同じようなサービスがありますが、ローソンでこれをするメリットは何なのでしょうか?
【流通ジャーナリスト 渡辺広明さん】「まずECの販売です。ネット販売をローソンでするということですが、アマゾンや楽天だと中食といわれる日持ちしないものの配送はなかなかできません。どれぐらい発注がくるのかわからない。それをコンビニエンスの3000品の品ぞろえがある、それぞれの拠点を物流配送拠点することによって、店舗からお客さまに配送することが出来る。簡単に言うと、ウーバーイーツみたいな仕組みをコンビニエンスにどんどん取り入れてくことが、よりできるのではないかと。その時に在庫の数をきっちり確認しなければいけないので、そこがテックと結ぶことによって、瞬時確認できたらすごくいいのではないかと思います」
防災拠点の構想もあるようですが、実際に能登半島地震でもコンビニがそういった役割を果たした側面ありましたね。
【関西テレビ 加藤報道デスク】「今回の能登半島地震は約1カ月で再開したというニュースがありましたけれども、熊本地震の時は1週間で、ルートがいっぱいあったので、再開できました。防災拠点であるっていうことと、インフラなんですよねコンビニっていうのは社会にとって。特に日本の社会では、インフラというか、日常というイメージがあるので、開いていることがやっぱり安心感につながると思います。ただ、やってらっしゃるかたも被災しているケースもたくさんあると思うので、そういった時に本部が速やかに入って、そのお店をすぐに再開するっていうこと、今回も、本部が入って再開させるというケースもたくさんあり、だからそういうものが、どんどん作られていくと。インフラとして国が進めていくというのも1つ手だとは思います」
全国展開してますし、本当に生活の身近なところにある存在ですよね。
■働き手不足解消の手助けになるか「多機能ロボット」「アバター接客」
課題というのが働き手不足ということですが、解消するためには「多機能ロボットの導入」や「アバター接客」も必要だと渡辺さんは話します。
ちなみにすでに導入が始まっているところもあるそうです。
ファミリーマートでは自動走行ロボットの導入を進めています。移動するだけで床の掃除が行える上に、AIカメラが搭載されているので、店長が棚の商品の不足をチェックして、従業員に補充を指示することもできます。ファミリーマートは、ロボット導入することで少人化・省力化につなげさまざまな負担の軽減を目指したいとしています。
アバター接客についてもローソンではすでに実験段階だということです。
今後こういったサービスは拡大していくことになるのでしょうか?
【流通ジャーナリスト 渡辺広明さん】「セルフレジ含めて、今と同じようなサービスを維持するためには、機械の手を借りない限り、不可能なのでどんどん広がっていくでしょう。ちょっとお客さんが不便になることもありますが、これに慣れていかなければ、今と同じコンビニのサービスだと多分維持できないです。特にいま、首都圏や都市圏では、外国人の留学生が手伝ってくれていますけど、日本はこれから経済が落ちていったり、日本語しかしゃべれない所で、もう留学が来ないのではないかと言われているので、自ら日本人だけで回せるような形を取っていかないと、非常に厳しいと思う」
どの業界でも働き手不足は叫ばれていますが、いかにサービスを低下させずに消費者を満足させられるのか、企業側としても頭を悩ますところですね。
機械の導入が増えることで、「これできるかな」などと不安に感じるお客さんも出てくるかと思うのですが、そういう人たちへの対応はどのような取り組みがありますか?
【流通ジャーナリスト 渡辺広明さん】「セルフレジに関して、アバターが横で接客についていれば、やり方を指導できるようになる可能性もあります。セルフレジはまだ進化の途中なので、ひょっとするとJANコードを打たなくても、物を置いただけで値段がパッと出てくるような時代が来ると思います。セルフレジの進化に期待してもいいのではないかと思います。セルフレジは自分でやるのでちょっとポイントつけてますみたいなサービスが始まってもいいかなと思います」
■新しい未来のコンビニはすでにある
視聴者からLINE質問が来ています。
‐Q:新しい未来のコンビニっていつできるの?
【流通ジャーナリスト 渡辺広明さん】「一気に新しい形のコンビニができるのではなくて、セルフレジやお掃除ロボットのような形で、ちょっとずつ導入されています。それで受け入れられると、一挙に広がっていく形なので、今でも新しい未来のコンビニはそこら中にでき始めています」
‐Q:他のコンビニも通信会社と提携する?
【流通ジャーナリスト 渡辺広明さん】「どこまでを提携と呼ぶかちょっとわからないですけど、やっぱり人口減の中で国内経済はシュリンクして行くので、生活インフラと通信インフラが組むことによって、新しいビジネスをクリエイティブで生み出す必要があるということであれば、提携は不可避になってくると思います」
今後、コンビニがどう進化し、利用者を満足させられるのか楽しみです。
(関西テレビ「newsランナー」2024年2月7日放送)