国内最大級ファッションイベント『TGC和歌山』 1万人に1人の難病抱える中学生がダンスステージに挑戦 「同じ障害の人を元気づけたい」 2024年02月10日
3日、和歌山県で国内最大級のファッションイベント「東京ガールズコレクション」が開催されました。
この大舞台で、多様性を表現するダンスステージに挑戦するのは、難病を抱える中学生です。
【松本莉央さん(15歳)】「同じ障害の人に、なんか元気づけられるかなって。元気になってもらえたらいいな」
■「TGC和歌山」とは?
「東京ガールズコレクション」略して「TGC」は、大規模なファッションの祭典として人気のイベントです。
ファッションランウェイやライブパフォーマンスなど、華やかなステージが観客を魅了するTGCが、和歌山県で開催されました。
会場の和歌山ビッグホエールや、関連するイベントには1万3000人を超える人が訪れ、大盛況。
このイベントでは、SDGsへの理解を深め、地方を活性化し若い世代へ伝える事も目指しています。
【来場者】「和歌山が有名になっている感じがするので、和歌山県民からしたらありがたいことだなと思っています」「和歌山で渋滞が起こっていて、びっくりしました」
中でも和歌山県が特に力を入れているのが、県の特別ステージ「Harmony March(ハーモニーマーチ)」です。
【和歌山県 岸本周平知事】「和歌山県って地方の田舎ですよね。そういうところで多様性の芽を出すということが、意味があると思っています」
和歌山県に住む13人がステージに立ち、「多様性を認め合う共生社会」を表現しようと、トランスジェンダーを公言する人や、自閉症の子どもたちが一緒になってダンスを披露。
どんなステージになったのか?その挑戦を追いました。
■難病を抱える中学生が大舞台に挑戦
今回、県の特別ステージに立つことになったのが、和歌山市内の特別支援学校に通う松本莉央さん、中学3年生。
莉央さんは、およそ1万人に1人の割合で発症する難病「プラダー・ウィリ症候群」を抱えています。どれだけ食べても満足感が得られない、筋力が弱いなどの症状があります。
【松本莉央さん(15歳)】「普段の生活もみんなで一緒にいたいと思うし、今回はステージで、みんなと一緒に踊れるからいいなって。同じ障害の人に、なんか元気づけられるかなって。元気になってもらえたらいいな」
本番2週間前、初めて行われた全体練習。事前に映像を見て練習した上で臨みました。
しかし、莉央さんはスピードの速いダンスについていくのが少し難しそうな様子です。
他の参加者たちは…。
【向井愛莉さん(12歳)】「足(の動き)とかが速いから、そこが難しい。みんなで踊るのが楽しみ」
【岡 陽葵(ひなた)さん(11歳)】「一緒に向かいあって踊れるのが夢だったので楽しかったし、うれしかったです」
【高田友紀子さん(28歳)】「自分らしさというのをダンスとかで自分たちのできる範囲で、車いすでも出せるよっていうのを伝えられたらいいなと」
他のメンバーもそれぞれ、自分の思いを持って練習に参加していました。
3時間を超える練習の後、インストラクターを務めるYUUKAさんに話しかける莉央さん。
【松本莉央さん(15歳)】「ここ(の振り付け)から、なんかちょっと心配…」
【YUUKAさん】「2番の最初かな」
莉央さんは疲れやすい体質のため、普段は早く家に帰りますが、この日は暗くなるまで練習していました。
そして、学校から帰るとすぐに練習を始める日々がスタート。5人きょうだいの次女である莉央さんは、家族みんなが集うリビングで練習します。そんな姿を家族はどう見ているのでしょうか。
【姉・遥さん(17歳)】「莉央もほんまに踊れるのかなって思って。普通に見守っている」
Q.莉央ちゃんのダンスはどう?
【弟・彩冬(あやと)くん(4歳)】「かっこいいと思う」
熱心に何度も練習する姿を見て、弟の彩冬くんも歌を口ずさむように。
練習後はいつも以上におなかがすきますが、食べる量は制限しています。莉央さんが抱える難病は、食べ過ぎてしまう症状から合併症で糖尿病となるおそれがあるからです。
【母・陽子さん】「夜は(ご飯の量は)75gで、お茶碗は保育園の時から変わってないんです。すごく痩せていると思うんですが、本当に気をつけていて、この状態。筋力が弱いことでの疲れやすさっていうのは、やっぱりどうすることもできなくて。この間、練習会の次の日はもう全然だめでした。疲れてもう1日中居眠り。ただ、人と違うのが嫌っていうところにつながるんだけど、『無理せんでもいいよ』って言われるのがすごく嫌い。『がんばらんでもいいよ』っていうことが嫌いなんやな」
【松本莉央さん(15歳)】「嫌っていうか、自分がしたいことだから言われたくない」
■いよいよ当日 練習の成果は?
迎えた本番当日、会場には県内外から多くのお客さんが来場しました。
少しずつ一緒に踊るメンバーとも打ち解けて、仲良くなっていきます。メイクをしたことがなかった莉央さん、ステージで映えるメイクをみんなが手伝ってくれました。
メイクもばっちり決まり、あとは本番を待つだけです。莉央さんも他のメンバーも、感じたことのない緊張を味わっています。
そして、母・陽子さんも見守る中、いよいよ本番がスタート。
ステージに立つと、パッと表情が明るくなった莉央さん。たくさんの観客の前で練習の成果を披露します。居残りして教えてもらった振り付けも、笑顔でリズムに乗って踊ることができました!
個性豊かなメンバーたちと一緒に、最後まで堂々と踊り切ることに成功。そんな本番を終えて…。
【松本莉央さん(15歳)】「すごくいっぱい、周りがお客さんだらけ。がんばれました!」
その笑顔からは、ステージを楽しめたことが伺えます。そんな莉央さんの姿に、見守っていたお母さんも誇らしそうです。
【母・陽子さん】「めちゃくちゃかっこよかった。莉央はすごいなって。小さい時は力がなくて、走るのも苦手だったのが、全然違いました、今日は。力強かった」
【松本莉央さん(15歳)】「今日まで一生懸命練習をがんばってきたことが良かったなと思った。何でもチャレンジしてみたいと思いました」
およそ3分間のステージを踊り切ったことで、挑戦することに自信がついたようです。
莉央さんは特別支援学校の高校へ進学するつもりでしたが、自信が持てたこともあって、高校もしくは専門学校へ挑戦したいと話しています。
大舞台にチャレンジしたこの経験は、きっとこれからの彼女の糧になるはずです。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年2月6日放送)