飼っている犬や猫などが増えすぎて、適切に飼育できなくなる「多頭飼育」の問題。大阪府は動物の保護のために費用の一部を負担する方針を固めました。
大阪府羽曳野市にある府の動物愛護センターでは…
【大阪府動物愛護管理センター 小谷正之課長補佐】「今ここで、大体20から25頭ぐらいになります。多い時で30~40頭ぐらい。飼い主の方が何かの事情でもう飼うことができなくなった犬や、数は少ないですけど野犬や放浪している犬となります」
ここでは多頭飼育などが原因で、飼い主が飼えなくなった犬や猫などを一時的に保護しています。
■大阪でブリーダーの女が虐待疑いで逮捕 200匹の犬の保護が問題に
2023年2月、このような施設でさえも、限界を感じる事態が起きました。 大阪府寝屋川市で、ブリーダーの女が病気やケガをした犬に適切な保護をせず、虐待したなどの疑いで逮捕されました。 飼っていた約200匹の犬について、飼い主の女は大阪府が保護することを拒否。この事態を受け、大阪府は5つ以上の民間団体での受け入れを進め、犬が無事に保護されるまで約1カ月もかかりました。 今の法律ではペットは飼い主の「所有物」という扱いになり、虐待の恐れがあっても飼い主からの同意がなければ保護はできません。
【大阪府動物愛護管理センター 小谷正之課長補佐】「所有権の問題等があり、飼い主が同意して放棄をしてくれたら、私どもが動物を引き取って保護ができるのですけれど、そこを拒否される場合についてはそれ以上の手立てがない。『来るな』とされて、一切中に立ち入れないと、動物の状況が何も見られない」
■大阪府が“多頭飼育崩壊”への対応方針示す
この経験を受け、大阪府では6日、ある方針が示されました。
【大阪府 吉村洋文知事】「多頭飼育崩壊になったときの対応を、府として積極的に取り組んでいきたいと思います」
大阪府では特定の民間団体と連携し、多頭飼育が起きた際に保護した動物のえさ代や治療費などを負担する方針を示し、来年度の予算案に約200万円を計上します。
【大阪府 吉村洋文知事】「民間の動物愛護の活動をされている皆さんと、事前に協力関係に基づく対応をとるのが非常に重要です。一定の費用を大阪府が負担をして、一時的にでも多頭飼育・多頭崩壊の状態になっている動物を安全な場所に確保する」
大阪府は行き場のない動物の受け入れ態勢を強化する狙いがあります。
■全国で起きている多頭飼育の問題 法律上の扱いが課題
多頭飼育崩壊は、悪質ブリーダーだけの問題ではありません。貧困により去勢手術ができない家庭や、高齢者がお世話できなくなった家庭などでも起きているという状況です。
大阪府が今回示した保護した動物の受け入れ体制ですが、大阪府が犬・猫約100匹。そして民間団体が引き受ける際に、餌や治療費を府を負担する予算案が通れば、民間で約200匹の受け入れが可能になるということです。
ただ課題もあります。日本ではずっと言われていることですが、動物は「もの」扱いのため、虐待の恐れがあっても、飼い主の同意がないと保護できない状況があります。吉村知事も「緊急時に同意がなくても保護できる法整備が必要」と話されました。
「newsランナー」コメンテータの大阪大学大学院・安田洋祐教授は「(保護のため)柔軟な形での運用を考えて」と話しました。
【大阪大学大学院・安田洋祐教授】「例えば年始に羽田空港で起きた飛行機事故の際、乗客の方は無事に避難できましたけれども、ペットの扱いをどうするか、ネットでも結構議論を巻き起こしましたよね。そこから分かるのは、多くの人が、人と同じではないにしても、ベッドをただのものではなく、より近い存在として認識し始めている。そうであれば少し法律を含めてルールを変えていく。例えば、多頭飼いに関して、一定の基準を満たしてないケースでは、所有権があったとしても保護できるとか、何か少し柔軟な形での運用を考えていく策としてはあると思います」
多頭飼育崩壊は全国で起きている問題となっています。法律の改正も視野に入れて、議論する時期にきているのかもしれません。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年2月6日放送)