難病の「ALS」患者を本人の依頼で殺害した罪などに問われている医師の裁判で、検察は懲役23年を求刑しました。「願いを叶えるため」と正当な行為だったと主張する医師に対し、検察側は「詭弁」と指摘しました。
そして、この裁判を傍聴してきたALS患者は、判決への思いを語りました。
■「真摯な『安楽死』とはほど遠い詭弁」と検察は指摘
1日、京都地裁で行われた裁判員裁判。医師の大久保愉一被告(45)は紺色のスーツ姿で出廷しました。
大久保被告は2019年、元医師の山本直樹被告(46)と共謀し、難病ALS患者の林優里さん(当時51)の依頼を受け、薬物を投与して殺害した「嘱託殺人」の罪などに問われています。 林さんは、全身の筋肉が徐々に動かなくなる難病ALSを患い、SNSで安楽死を望む投稿をしていて、大久保被告らに130万円を振り込み、殺害を依頼していました。
これまでの裁判で、大久保被告は「林さんの願いを叶えるため」と自身の犯行について語ってきました。
【大久保愉一被告】「苦しみから解放されたいと願うなら、かなえてあげられたら本人のためだと思う」「自分がやるべきことはやったのかなと思いました」
そして1日に開かれた裁判で、検察側は山本被告の父を殺害した罪も含め、大久保被告に懲役23年を求刑。「報酬前提で依頼を受けるなどビジネスとして実行している」と述べ、「死にたいと願う難病患者は殺害する対象という思想の実践で、真摯な『安楽死』を実践するものとはほど遠い詭弁」と指摘しました。
一方、弁護側は「林さんの死の選択を非難することは憲法に違反する」として、改めて無罪を主張。大久保被告は涙を流しながら「話すべきことは話した」と述べ、審理は終了しました。
林さんの父は、求刑を聞き「いまは何も言葉が思い浮かびません。悲しい現実を変えることはできず、無念でなりません」と話しました。
■裁判を傍聴してきたALS患者「私たちの命の価値を問うもの」
そして裁判を傍聴してきたALSの当事者らが、判決への思いを語りました。
【ALS患者 増田英明さん】「私たちにとってこの裁判は、『私たちの命の価値』を問うものです。大切な命を軽んじた行為であることを示し、ありのままに生きられる社会へとつながる判決を求めます」
裁判員は被告の犯行をどう判断するのか。判決は3月5日に言い渡されます。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年2月1日放送)