横領事件をめぐり無罪が確定した不動産会社の元社長が国を訴えた裁判で、焦点となっている取り調べの録音録画の記録について大阪高等裁判所が提出命令を出しました。しかし、その内容に失望と怒りの声があがっています。
21日午後に開かれた冤罪被害者の代理人による会見。その口から出てきたのは怒りと失望の言葉でした。
【西愛礼弁護士】「国にとって不都合な事実が闇に葬りさられようとしている」
【中村和洋弁護士】「大阪高裁の決定に強い失望を感じている」
大手不動産会社プレサンスコーポレーションの元社長・山岸忍さんは、土地取引をめぐり部下と共謀し21億円を横領したとして大阪地検特捜部に逮捕・起訴されました。 一貫して無罪を主張した山岸さん。特捜部は”山岸さんが事件に関与している”という部下らの”供述”を有罪立証の柱にしたものの、裁判で明らかになったのは強引で威圧的な取り調べ。
裁判所は「供述は信用できない」と判断し、山岸さんは無罪になりました。 山岸さんは無罪確定後、国を相手取り「違法な捜査で冤罪を作り上げた」と損害賠償を求め提訴。 その裁判で、大阪地裁は2023年9月、部下の取り調べを録音・録画した5日間およそ18時間分の記録の提出を、国に命令する決定を出しました。
しかし、国側は即時抗告し、審理をしていた大阪高裁が22日に出したのは、録画・録音の提出範囲をおよそ1時間のみに狭めた決定で取り下げられた部分には「冤罪」を生み出す核心にかかわる重要な部分も含まれているといいます。
【西愛礼弁護士】「今回の決定から、検察官が机をたたいて一方的に怒鳴り続けたシーンが削られてしまっています」
大阪高裁は理由について「山岸さん側が報道機関などを通じて録画録音を公開した場合、元部下のプライバシーを侵害する恐れがある」と説明しています。
【中村和洋弁護士】「裁判所と検察庁は仲良しで、身内を守っているのではないかと思われても仕方ないと思う」
山岸さんは「違法な取調べは全面的に明らかにされるべき」などとして、最高裁に不服申し立てをする方針です。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月22日放送)