自民党の派閥パーティーをめぐる事件。東京地検特捜部は19日、安倍派、二階派、岸田派の関係者を一斉に起訴しました。
これで捜査は終わりなのか?再発防止策は?このモヤモヤを元大阪地検検事の亀井正貴弁護士に聞きます。
■捜査は終わり?
特捜部の捜査について現状をみていきます。
報告書の不記載について安倍派は約13.5億円、二階派は約3.8億円、岸田派は約3000万円と非常に大きな金額です。
そして立件については、安倍派からは、3人の国会議員と会計責任者が逮捕・起訴され、そして二階派では元会計責任者と二階元幹事長の秘書が起訴されています。岸田派では元会計責任者が起訴されました。
一方で、安倍派幹部7人は任意聴取はされたものの立件されませんでした。捜査はこれで終わりを迎えることになるのでしょうか?
【元大阪地検検事 亀井正貴弁護士】「時期的なことを申し上げますと、国会の会期が始まれば、できるだけ国政には影響を及ぼさないというのが捜査の基本なので、だからおそらく終結に向かうと思います。派閥の代表幹部議員の立件って、やっぱりどうしても共謀の立証が必要なんですね。共謀というのは、不記載を知っていただけではダメで、会計責任者に指示する具体的な言動など、そういう事実が必要なんですが、おそらく皆さん否認されているから、在宅だとなかなかそれを認める人がいないので、例えば逮捕するとか強硬な捜査が進めば、また分かりませんが、この事案では、なかなか難しいということです」
■略式や在宅での起訴 違いは
今回の立件、検察が行う起訴の種類は、略式起訴、在宅起訴、起訴と大きく分けて3つあります。
略式起訴は、書面での審理のみで罰金や科料を言い渡すもので、裁判は行われません。
在宅起訴は、容疑者の身柄を拘束しないまま行う起訴で裁判が行われます。
起訴は、容疑者の身柄を拘束し起訴、裁判が行われます。
今回の事件のような場合、起訴の種類は、どのように決まるのでしょうか?
【元大阪地検検事 亀井正貴弁護士】「起訴、在宅起訴と言っているのは、法廷で検察官、弁護人、被告人が会って裁判をやる正式なものです。略式起訴というのは、書面だけを裁判所に送って、それでその罰金と科料で判断してもらうという制度です。基準は刑の重さです。本件の場合には不記載の金額、虚偽記入金額というのは一定の基準になります。これに加えて組織性とか常習性とか、そういう悪質性を加味した上で決めていくということです」
現状、国会議員で立件されたのは3人ですが、この判断のラインは、やはり金額ですか?
【元大阪地検検事 亀井正貴弁護士】「基本は金額ですね。これは前例がありますから、例えば前例で3000万円、4000万円で起訴事例があったら、それとの均衡を考える必要があります。例えばそこで起訴されているのに、次は起訴されないとなってくると均衡を害します。ですから、数千万円単位だと略式処理。億単位だと公判請求ということです」
■幹部議員の立件は難しかった
特捜部は、かなり力を入れて捜査をして、幹部への聴取も行われましたが、立件は難しいものなのでしょうか?
【元大阪地検検事 亀井正貴弁護士】「特捜部は派閥を狙おうをしました。当然、派閥の幹部議員というのは狙ったのですが、自分の事務所を持っている議員とその事務方との連絡はLINEやメールでやり取りしますけども、なかなか派閥の幹部議員とその事務方とのLINEやメールってないから物証がないんですね。物証がない上に、この複数名の幹部に全部否認されてしまうと、誰が指示して、誰が相談を受けてやったかということの、起訴のラインを作ることができないので、要するに証拠を取れなかったということです」
全員でうまくやり過ごしたという感覚なのでしょうか?
【元大阪地検検事 亀井正貴弁護士】「『死人に口なし』と、『口裏合わせ』というのは、だいたいの事件つぶしの2パターンなんです」
■連座制の適用を
政治資金をめぐる問題、ここからは、今後どう防ぐかを考えたいと思います。
自民党は、政治刷新本部を作り改革しようとしていますが、亀井正貴弁護士は「政治資金規正法に、政治家にも責任が及ぶ『連座制』を導入すべし!と考えているそうですね。
【元大阪地検検事 亀井正貴弁護士】「今後こういうことがないようにするためには、どういう規制をして行くか。今回明らかになったことというのは、会計責任者までしかやれなかったということ。どんなに頑張っても政治家に行かなくて、会計責任者だけ犠牲にするのであれば、この事件というのはまた今後出てくる可能性が高いわけです。その観点からすると、政治家に及ぶということによって、これを規制することができる。現行法でも会計責任者の選任とか監督を怠ったら罰金がいきますから、公民権停止がついてくるから同じなんですけども、なかなかこの規定を適用するというのは難しいです。立証のハードルがあるから。だけど連座制を適用すると、立証のハードルがなくなるので効果は大きいと思います」
■特捜部は「目標達成」なのか
ここで視聴者からのLINE質問です。
‐Q:不起訴の幹部の捜査はこれで終結?
【元大阪地検検事 亀井正貴弁護士】「おそらく検察審査会の申し立てはなされると思います。検審での審議というのはあり得ると思いますね。2回、起訴相当が出るかどうかですね」
‐Q:特捜部は目標を達成したと思いますか?
【元大阪地検検事 亀井正貴弁護士】「本来は、派閥の幹部をやって100パーセント、100点なんですけども、ところが今回、岸田派を立件しました。先ほど金額が積み上がったからという理由もありましたが、本来、検察というのは政治に影響を及ぼしてはいけないのだけれども、どうにもならない時には国民の意を受けながら積極的に行っていいということもあり、この岸田派の立件というのは、岸田首相に対して、背中を押したと僕は思っています。改正に本気で向かって行けと、その他のところに何があっても向かって行けと。刷新会議でもぬるいような対応していますから、もう少し覚悟してやれということを、背中をしたのではないかと、私は解釈しています」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月19日放送)