今回の能登半島地震で沿岸部に被害をもたらした津波。近い将来、必ず来ると言われる「南海トラフ大地震」でも沿岸部で大津波が想定されています。津波の脅威と私たちがとるべき行動について考えます。
石川県珠洲市で発災から約30分後、1月1日午後4時40分ごろに撮影された映像に、沿岸部の集落に津波が押し寄せる光景が捉えられていました。
珠洲市には、地震発生から1分後に津波が到達したとされ、街には濁流が押し寄せました。京都大学防災研究所の調査では、最大で5.1メートルまで浸水した地域があったとみられています。
(Qどこまで津波が来た?)
【住民】「あそこ跡があるでしょう。そこまで波が来たということ。どんどん(水の高さが)増えてくるから、バイクに乗って逃げるしかしょうがない」
■「南海トラフ巨大地震」大規模な津波が想定される
津波の脅威にさらされているのは、関西も同じです。30年以内に70~80パーセントの確率で発生するとされる「南海トラフ巨大地震」。このとき押し寄せる津波は、能登半島地震よりもさらに大規模なものになる可能性があります。
特に揺れの後すぐに津波が到達するのが、和歌山県などの沿岸部。そんな場所での避難は時間との戦いです。
最短3分で1メートルの津波が襲うとされる和歌山県・白浜町で行われた避難訓練で、子供たちに求められるのは「とにかく走って高台を目指すこと」です。合言葉は「てんでんこ」。それぞれが「てんで」ばらばらに逃げて、まず自分の命を守るという意味です。
白浜で暮らす人の家には…
【白浜町の住民】「ここで寝てるんですけど、(同じ部屋のすぐ横を指し)ここにライフジャケット」
生活のそばに、常に「津波」があります。
【白浜町の住民】「(ちょっとでも早く逃げるため?)そうそう。怖い」
■津波実験 30センチでも人は立っていられない
津波の脅威について、関西テレビ・竹上萌奈キャスターが、津波を再現できる施設を訪れました。まず30センチの津波を体感します。ロープをつかんで必死に踏ん張りますが、体を持っていかれてしまいました。
【竹上萌奈キャスター】「これ30センチ?立っていられない。何メートルも流されてしまいました」
続いては50センチの高さで実験。津波警報の発表基準である「1メートル」の半分の高さです。強烈な勢いの津波になす術もなく、流されてしまいました。
【竹上萌奈キャスター】「恐怖を感じたのは流されてからで、水が来たときは早すぎて何がなんだか分からないうちに体が回っている感覚。自分で耐えようとして、どうにかなるものでは全くなかったです」
数十センチの津波でも、場合によっては両足に100キロほどの力がかかります。1メートルともなれば、その力は人が耐えられるようなものではなく、巻き込まれたときの死亡率はほぼ100パーセントと言われています。
【中央大学理工学部 有川太郎教授】「流されるとどこに行くか分からないですから、津波注意報であっても、逃げるということは大げさではないと思います」
■地下街でどう避難する「分かんない」
わずか30センチでも危険な津波です。大阪では、都市部ならではの課題もあります。
(Qどっちに逃げたらいいか分かりますか?)
【地下街の利用客】「え、分かんない。(考えたこと)ないです」
【地下街の利用客】「(来るのは)1か月に1回ぐらい。仕事が多いですね。(Qどっちに逃げる?)えー?どうなんですかね、こっちですかね? 出口があるから。分からないですね、パニックになるかもしれない」
大阪・梅田にある地下街「ホワイティうめだ」では、津波の浸水域から最も離れる「泉の広場」へ、まずは向かうべきとされています。しかし、1日に約40万人が訪れるという梅田の地下街では、多くの人に土地勘がなく、地震の際どう行動するべきか“知らない”のです。 そこで、ある対策が取られています。
【飲食店の従業員】「『避難誘導用の旗』をこちらに準備しています。外に出て扇町公園の方に向かっていただくように誘導します」
「ホワイティうめだ」では、各店舗に旗を設置。緊急時には、それぞれの店の従業員が旗を持ち、安全な場所へ誘導すると決められています。重要なのは、落ち着いて行動することです。
【大阪地下街株式会社 酒井賢二危機管理室長】「群集心理として、てんでばらばらで逃げられるとかえって二次災害が起こる可能性が高い。店舗の従業員がしっかり旗を持って、一緒に避難していただいたらいいと思う。不安感を払拭できることが、一番の安全避難につながるのかなと思っております」
津波の脅威の前には、どこにいても安心ということはありません。地域に応じた対応が必要とされます。
■「南海トラフ巨大地震」では東日本大震災を超える被害想定も
南海トラフ巨大地震では、東日本大震災を大きく超える津波被害が想定されています。私たちはどのような備えをしておくべきなのでしょうか?
【兵庫県立大学大学院 阪本真由美教授】「津波は巨大なエネルギーで、陸上を遡上してくる時は時速40キロぐらいで来ます。見てから逃げても間に合わないので、情報を信じて、大きな揺れの後に津波注意報などが流れたら、それを信じて逃げるというのがまず大事です。それから、どこで津波に合うか分からない、逃げ先が分からないときには、地元のお店の方だったり地域の方は避難先を知っているので、そういう人に情報を確認しながら逃げることも大事だと思います」
また沿岸部ではない方たちにも地震の被害はあります。
【兵庫県立大学大学院 阪本真由美教授】「今回の地震が示しているように、地震の揺れが大きいと土砂災害なども起こって道路が寸断されることもあります。特に和歌山県、奈良県あるいは徳島県あたりは、土砂災害の心配も大変大きいので、そういう点も気を付けていく必要があります」
(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月15日放送)