1月1日に起きた能登半島地震は、東日本大震災の時とは違い、スマートフォンが普及した中で起きた災害でした。ネット時代の災害で見えてきた「活用法と課題」とは。
七尾市の茶谷義隆市長のX(旧ツイッター)のアカウント。 「七尾市長の茶谷です。Xのコメント等で、避難所・必要な物資・数量を取りまとめ、連絡してください。拡散願います」 行政のトップ自ら、SNS上でさまざまな情報を発信し、300万回以上表示された投稿もありました。
■東日本大震災では仮設電話に長蛇の列
災害時の「通信」は、この10年で大きく変化しました。 まだスマートフォンが普及していなかった2011年の東日本大震災では、多くの人が家族や友人と連絡を取ることができず、不安な時間を過ごしました。
【記者リポート 2011年 釜石市】「こちら釜石市のNTT東日本ビルです。今日から使用できるようになった衛星電話で連絡を取ろうと、雪の中にも関わらず、長い列ができています」
【仮設の電話で連絡を取る被災者】「大丈夫だから、うん、うん。携帯持ってるんだけど、こっちからそっちに届かなくて」
このときの経験をもとに生まれたのが「LINE」。今では生活に欠かせないものとなり、今回の地震では1度タップするだけで、一斉に安否を報告できる機能も活用されました。
■災害関連の投稿を自動で抽出 対策に役立てる動きも
一方、ネット時代ならではの課題も。1月1日に起きた能登半島地震以降、SNSではデマや誤った情報の投稿が相次ぎ、発災翌日には、岸田首相も会見でこう述べました。
【岸田文雄首相】「被害状況などについての悪質な虚偽情報の流布は、決して許されるものではありません」
中には、警察が動く事態も…
【石川県在住の女性】「避難所にいて、警察の方から電話があって、『タンスの下敷きになってる方いますか』って」
地震直後、SNSでは女性の住所とともに「息子が挟まって動けない、助けて」という投稿がありました。実際には女性の家は崩れておらず、そもそも息子はいませんでした。
【石川県在住の女性】「通報があったから、警察としたら動かざるを得ないという状況らしいんです。本当に支援が必要な人たちに行かないわけじゃないですか。迷惑ですよね」
しかし、このような「デマ」が、他のユーザーによって拡散される動きもみられました。
【株式会社スペクティ 村上建治郎代表取締役】「善意で届けたい人たちというのが多分いて、『助けを求めてます』とあると誰かに伝えないと、となってリツイートが1万、2万と増えていく。今まではあんまり見かけなかったですね」
SNS時代の災害が抱える課題。どう対処すべきなのでしょうか。
■「SNSしか見てないという状況が一番よくない」
デマによって捜索活動、救助活動に支障が出ることもあり、許されるものではありません。なぜデマを流す人が増えているのか、手口と背景をみていきます。
例として、「○○市○○町で生き埋め状態。助けてください」とX(旧ツイッター)に投稿がされ、反応もたくさんあったのですが、実際には存在しない住所でのデマ投稿でした。2023年8月からXで導入された「拡散されるほど、もうかる仕組み」に原因があるからだといいます。
デマ情報にだまされないため、スペクティの村上健治郎代表によると、「SNSしか見てないという状況が一番よくない。メディアや自治体のホームページ、いろんなところの情報を、複数のソースで見るべき」とのことです。
こういったデマ投稿を見破るには、どのようなことに気を付けるべきなのでしょうか?
【関西テレビ 神崎報道デスク】「投稿があったとしても、その人の過去の投稿を見てください。表示回数を増やすためだけに、いろんな流行の話題に飛びついていることがあります。また例えば『助けてください』と言うけど、投稿した人が本当にその地域に住んでいるか、過去の投稿である程度分かると思います。『拡散希望』と書いてあると、何とかしてあげたいと思うかもしれませんが、本当の情報なのか確認してもらって、疑わしければ踏み止まってください」
今の社会では、SNSなどの通信手段が発達し、災害時にはこれまで電話に頼っていた安否確認がスムーズに行われる可能性が広がっている点など、期待される変化があります。その半面、デマの拡散など新しい課題も出てきました。災害対策として有効な手段は積極的に使いながらも、新しい課題について、しっかり対処していく必要がありそうです。
(関西テレビ「newsランナー」 2024年1月15日放送)