自民党の裏金疑惑について、15日、会計責任者の立件が検討されていることが分かりました。今後、東京地検特捜部によって、どういった捜査がされるのか、どこまで立件できるのか。元大阪地検・検事の亀井正貴弁護士が解説します。
■今後はどのような捜査が行われるのか
大臣が次々に辞任していくという事態が起きていますが、まずはこれからどのような捜査が行われるのかを見ていきます。 今後は、家宅捜索、そして一斉聴取が行われるということです。 家宅捜索については、派閥事務所、議員事務所などで、パソコン、携帯、資料、キックバックリスト、受け取りサインといった物的証拠を押収していく見通しです。 そして一斉聴取については、これまで事務方を中心とした任意捜査が進んでいて、今後は幹部議員などから聴取をするのではという見通しです。
Q.家宅捜索と聞くと、よく段ボールをたくさん運んでいる様子をテレビで見ることがありますが、今回もそのような状況になるのでしょうか。
【亀井正貴弁護士】「おそらく検察内部のワンフロア、ツーフロアを使って、そこに段ボールが並ぶような状況になると思います。(段ボールの中身は)帳簿類とか預金関係、メモなどの書類が多いと思います」
Q.メール削除などで証拠隠滅する人もいるのでは?
【亀井正貴弁護士】「今の捜査では、供述の自白を取る時代ではなく、あくまでSNSなどデータによって立証していく時代です。“デジタル・フォレンジック”といって、削除してもそれを復活させることができますから、証拠が残ります」
続いて、どこまで立件できるのか?という点についてですが、派閥側、議員側とあります。派閥側は幹部がいて、その中には会計担当の会計責任者がいます。議員側にも、議員本人、秘書、会計責任者がいるということです。安倍派の会計責任者の立件が検討されているということが分かっています。
■「政策活動費という認識」との発言
連日の報道では、以前からこのシステムができていたと言われています。もし長く続いていたなら、具体的に指示しなくても慣習として続いていた可能性があり、“指示の証拠”を押さえるのが難しいのではないでしょうか。 そして、お金を受け取った側が「政策活動費」という名目で受け取っていたら、不記載が故意ではなかったことになります。不記載についてではなく「お金がどう使われていたのか」というところが論点になるのでは、とも考えられます。このお金が“収入”という扱いとなって、脱税が問われないか。また、選挙で配っていないか、などの点に捜査が及ぶということも考えられるかもしれません。 これについて、亀井弁護士は次のように話しました。
【亀井正貴弁護士】「お金を誰が受け取って、どのように保管し、どういう風に使われたのかによって、個人なのか、例えば資金管理団体のものなのか、あるいは政策団体のものなのか…ということが見えてくる可能性があります。これが見えなければ、誰が収支報告書を提出する義務があるんだという話になってしまいます。犯罪として立件することが非常に難しくなりますから、そういう意味では重要なポイントです」
「もう一つ、引き継がれたかどうかということなのですが、会計責任者とか事務方だけで引き継がれていればアウトです。問題はお金の流れです。政党から来て派閥に行きます。パーティー券はまた別口から入ってきます。ルートが異なるので、会計責任者や事務方は『どういうことですか』と上に確認する作業が発生しうると思います。下の議員に対しては『政策活動費だ』とうそを言うわけですから、このうそをつくことについての相談を誰かにするかもしれないですよね。もし相談を受けたら、そこから“共謀“が始まるんです。相談せずにやっていたら上の議員としては故意がなくなり、共謀がなくなりますから、責任を問うことはできなくなります」
どうやって立証していくかということですね。
【亀井正貴弁護士】「何らかの物的証拠がないかということになります。あとは事務方の供述が今どのあたりまで出ているかということですね。(ある程度、会計責任者の供述や証拠品を押さえている段階?)おそらく外形的なところは押さえていて、あとは共謀に関する話がどの辺まで出ているか。この話(池田元文部科学副大臣の発言)が本当だったらです」
■聴取を経験した石川元衆院議員 「ホテルに呼び出され5~6時間」
国会議員本人に対してどのような捜査が行われるのか。実際に聴取を受けたことがある人物を取材しました。 かつて小沢一郎議員の秘書だった石川知裕元衆議院議員は2009年に発覚した小沢氏の資金管理団体の土地購入をめぐる事件で、政治資金規正法違反の罪で執行猶予付きの有罪判決を受けました。 その捜査で3回、特捜部から任意の聴取を受け、呼び出されたホテルに行くと、検事と検察事務官の2人が待っていたといいます。
Q.どれくらいの時間がかかる?
【石川知裕元衆議院議員】「5~6時間かかると思いますよ。弁当を持ってくるように言われた時もありました」
逮捕後は厳しい追及を受けることもあったといいます。
【石川知裕元衆議院議員】「自分たちの筋書き通りにいかないと高圧的ですね。特捜部の副部長が出てきて、それまで敬語でしたけど、机を叩いて、『お前はただの運び屋なんだから認めろ、この野郎!』と言ってね」
このような捜査が行われる中、実際のところ、どこまで立件できるのでしょうか。
【亀井正貴弁護士】「どの程度の証拠が出てくるかですね。事務方の関係者、そして周辺の供述」
東京地検特捜部は、これだけ異例の体制で動いていく中で立件できないとなると、責任問題ともなりえます。何としても立件しなければという状況です。
【亀井正貴弁護士】「全国から50人の応援を取っています。ということは、ある程度の目処は立っているのではないかと思っています」
Q.疑惑が明るみになってから動き出していますが、捜査が遅くなったのはなぜですか?
【亀井正貴弁護士】「国会の会期中に捜査できないことはないのですが、やはり政治活動に影響を与える可能性があるので、それはしない。それさえなければ(今回の捜査は)相当早いペースでやっていると思います。(今は証拠を集めて、証拠固めをしている?)本当に欲しい証拠を取りに行っている。(その後)強制捜査は間違いなくやると思います。(いつ頃?)国会が終わってから数日以内で…早くしないと、証拠物を分析してこれがどういう意味を持つかを精査しないといけない。来年の通常国会が始まる前の段階では、どの人をどう処分するか、証拠固めがどの程度できているかということを確定しておく必要がありますから」
今後の捜査がどうなっていくのか注目されます。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月15日放送)