前人未到の舞台に立つ、1人の男子ボクサーがいます。
トランスジェンダーボクサー真道ゴー選手36歳です。
2017年に性別適合手術を受け、男子ボクサーとしてリングに立つことを目指していました。
そして12月10日、念願だった男子プロボクサーとの準公式戦を開催。長年の想いを胸に歴史的な一歩を踏み出しました。
彼は2年もの間、いばらの道を歩み続け、ようやくここへ、たどり着きました。
【真道ゴー選手】「本当にやっと上がれるなという気持ち、2年間作り上げたものを出す場所に上がれるという」
元WBC女子世界フライ級チャンピオンの真道選手は、2017年にボクシングを引退し、性別適合手術を受け一般女性と結婚し、4人の子宝に恵まれました。
そこから5年―。
真道選手はある夢に挑むことを決意しました。
【真道ゴー選手】「自分の中で男子のリングで挑戦してみたいなという気持ちは、引退の時からあった」
男子プロボクサーとしてリングへ。
しかし、女子の骨格で男子と戦うことのリスクなど課題は多く、ルール作りがなかなか進みません。
そこで、男子選手とのスパーリングを公開し、その実力を証明することで、プロテストを受験できるよう日本ボクシングコミッション(=JBC)に求め続けてきました。
スパーリングを見た西日本ボクシング協会の幹部らは「スピードもテクニックもいい」「テクニックもグー」「ありますね」などと、口々に感想を語りました。
こうした努力が実る日がやってきました。
男子と試合することを表明してから2年。
12月10日、いよいよボクシング界にとって歴史的な1日が始まります。
試合前のロッカールームで、ジムの会長が真道選手に語り掛けました。
【グリーンツダボクシングジム 本石昌也会長】「2年間の思いを込めて。必死にやってきたんやから」
【真道ゴー選手】「はい」
会長からの言葉で、真道選手の気持ちが整った様子です。
【真道ゴー選手】「行くぞー!」「おー」
準公式戦とはいえ、試合は公式戦とほぼ同じ形で開催します。
家族も会場で見守ります。
対戦相手のプロボクサー・石橋選手も3児の父です。
「元女子と試合なんかするな」と批判を受けたこともありました。それでも、真道選手の子供への思いに共感し、出場を決意しました。
【真道選手の娘】「パパ頑張れー」
第1ラウンド。
真道選手は石橋選手をスピードとテクニックで圧倒します。
さらに2ラウンド目はパワーで打ち合いになりました。
【真道ゴー選手】「楽しかったです。駆け引きやったり、パンチが来たときに、おー、やっぱパンチ重たいなと、いろんなものを噛みしめながら」
最終ラウンドも果敢に挑む真道選手でしたが、カウンターを食らいダウンしてしまいました。
それでも、すぐに笑顔で立ち上がります。
【真道選手の娘】「パパ頑張れ!パパ頑張れ!」
ラスト10秒は激しい打ち合いとなりました。
試合終了のゴングが鳴り、互いの健闘を称えあうように、真道選手と石橋選手は抱き合いました。
「3-0で勝者、青コーナー石橋」
ダウンが影響し、判定負けでしたが、それでも真道選手の顔からは笑みがこぼれました。
【真道選手の妻・亜由佳さん】「かっこよかったです。お疲れ様とだけ言いたいです」
【真道ゴー選手】「勝つところは見せられなかったんですけども、自分の生きざまは届いたんではないのかなって。2年間頑張ってきてよかったなと純粋にそう思います」
敗れはしましたが、日本ボクシング界にとって歴史的な一歩となったことに違いありません。
(関西テレビ「newsランナー」2023年12月15日放送)