いまSNSなどでは、「人間関係リセット症候群」の人が増えています。 人間関係をリセットしたいと思うことは悪いことなのか、どんなタイプの人が「人間関係リセット症候群」になりやすいのかなど、対人コミュニケーションに詳しい大阪経済大学の田中健吾教授に聞きます。
■アンケートでは7割超が「リセットしたい」と思ったことがある
番組では事前にLINEで視聴者のみなさんに「人間関係をリセットしたいと思ったことはありますか?」とアンケートを取りました。
136人のうち、「はい」が71%という結果でした。さらに「はい」と答えた方の理由には、
「知人が自分の陰口を言っていたと聞いたから」 「ブラック企業を辞めたから」
といった声がありました。人間関係をリセットしたいという人は、どのような年代層が多いのでしょうか?
【大阪経済大学 田中健吾教授】 「LINEとかSNSの利用の多い若者が多いと思われるかもしれませんけれども、実は40代、50代もSNSの利用はそれなりに多くて、その世代にも多いので、年代によってそんなに特徴がないっていうのが、特徴かもしれませんね」
この人間関係リセット症候群が多くの方の共感を呼ぶのは、このような時代背景が関係しているそうです。 リセットは、SNS時代特有のものかもしれません。SNS上ではフォロワー数やいいね至上主義という風潮があります。そして、大学生に聞くと、LINEの友達数は平均187人、約1割は300人を超えているそうです。 このようなSNS時代の影響で、自分のキャパシティーを超えた不必要なつながりにストレスを感じてしまうということです。
【大阪経済大学 田中健吾教授】 「自分がケアできる、実際に関われる人間には限りがありますから、そこを超えてしまうということは問題があるのかなと思っています。ですからSNSはどうしても“いいね”が欲しいとか、自分のキャパを超えてしまうような仕組み、システムですので、そういうところからストレスを感じる人が多くなるのではないでしょうか」
■「リセット」は悪いこと?
そもそも、このような疑問を持つ方もいるのではないでしょうか。 「リセットする方が良くないですか?」 このような意見もあると思います。 これについて、田中さんの見解は「SNSなど連絡先のリセットは悪くはないが、良いリセットと悪いリセットがある」ということです。
・良いリセットは、人間関係を整理し、精神状態を戻す。
・悪いリセットは、孤立し、周囲に迷惑をかけること。
良いリセットと悪いリセットの差は何なのでしょうか?
【大阪経済大学 田中健吾教授】 「結局、周りに迷惑をかけるか、あるいは、心配をさせるかどうかというところが大きいのかなと思っています。突然いなくなってしまうなどすると、どうしても周りが心配しますから、急に仕事を辞めて連絡がつかなくなると、どうしたのかなとか命の危険があるのではないかと考えてしまいます。そういう心配をさせたりとか、あるいは仕事を放り出して迷惑をかけたりしないようなリセットだと、ある意味いいリセットかもしれません。人間関係も基本的にはステップの積み重ねですから、キャパを超えてしまう前に、普段からコミュニケーションも自分のできる範囲というのを把握していると、いいコミュニケーションにつながっていくと思います」
悪いリセットをしてしまう時は、それだけ重い精神状態になっているということでしょうか?
【大阪経済大学 田中健吾教授】 「そうですね。完全に全部リセットしようというのは、例えば仕事辞めるなどの重大な決定というのは、普通、冷静な状態だと、ちょっとちゅうちょするものですけれども、それを考えられなくなって、もう全部なしにするっていうのは、かなり心理的には悪い状態になっていると思います」
■「リセット」予防のためには脱スマホとくだらない会話
視聴者から質問です。
‐Q:人間関係をリセットしたいのは病気ですか?心のSOSですか?
【大阪経済大学 田中健吾教授】 「基本的にこれはネット上でバズってる言葉の一つなので、病気とか重いものを指しているものではなくて、誰しもいっぱいいっぱいになると、もう全部やめにしたいと思うことはありますから、そういう衝動を示しているのであって、それ自体は正常なストレス反応ですから、ちょっとストレスが高くなっているぞというサインぐらいに受け止めていくといいと思います」
‐Q:付き合ううちに嫌な点が目に付くように…長く付き合うコツはありますか?
【大阪経済大学 田中健吾教授】 「嫌な点が目に付くというのは、その人の特徴が多分嫌な点として出てきていると思うんですけれども、嫌な点の周辺、近いところに実はその人の良い面もだいたい隠されています。口うるさいと思ってたら、実はよくしゃべってくれて明るかったりなどの相反する側面がありますから、嫌な点が目に付くということは、その周辺に実は自分の好きな点があるかもしれないと考えてみるといかがでしょうか」
‐Q:嫌な人と自然に距離を置くいい方法はありますか?
【大阪経済大学 田中健吾教授】 「あれば私も知りたいんですけど…段階的にステップを踏んで、少しずつ距離を置くのがいいのかなと思っていて、例えばLINEで既読が遅いとかで問題になることというのは、タイミングが早いから早いものだと思って繰り返してるので、ちょっとずつ遅くして行くと、遅くても当たり前になりますから、そうやって少しずつ距離を取っていくと、それが普通になると思います」
みなさん、年末年始の時間があるタイミングに人間関係を見直してみるのも良いのではないでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年12月13日放送)