イスラエルとハマスの戦闘休止は、延長された期間に入りました。今後、人質の解放は進むのか、また今後の展開はどうなるのか、イスラエルとハマスで現在起きていることについて、中東情勢に詳しい防衛大学名誉教授の立山良司さんに聞きました。
■戦闘休止の延長をした双方の思惑
今回、戦闘休止の2日間延長が合意されました。新たにハマスは人質を20人解放し、イスラエルは国内に収監していたパレスチナ人60人を釈放するとみられています。ハマスが拘束した人質はこれまで約240人いるとされていて、これまで解放されたのは69人ですから、まだ約170人取り残されているとみられます。
この人質の解放を見ると、ハマスの現状が「細かい人質交渉に応じているハマス=組織の統制が取れている」ということが言えそうです。イスラエルとの地上戦が本格化して長いですが、ハマスはまだ壊滅的な状況には至っていないということでしょうか?
【防衛大学名誉教授 立山良司さん】
「今回の交渉への対応、それから人質の居場所の確認、イスラエル側に事前に名前とか性別とか年齢を書いた人質のリストを渡すわけですけれども、そうした手続きなど、きちんとやっているわけですね。人質はおそらくガザの南部だけではなくて、北部にもいてトンネルの中で散らばっていると思います。その人質を監視しているのはハマスの下部の組織であって、上層部はガザの南部にいて、全体を取りまとめて人質の解放の実行をしているということですので、その組織としての統制は相当とれていると私は考えます」
イスラエル側は、どこに人質がいるのかというのは分かっているのでしょうか?
【防衛大学名誉教授 立山良司さん】
「ある程度はつかんでいるのかもしれませんけれども、正確な場所は分からないと思います。というのはトンネルの中ですし、ガザは狭い地域ではありますけれども、それなりの広さがあります。加えてイスラエル側による攻撃が続いてきたわけですから、その場所をきちっと特定するまで至っていないと思います」
■人質を丁寧に扱っているのはアピール
国際社会がどう介入するのかというのも大きな課題なのではないでしょうか?
【関西テレビ 加藤さゆり報道デスク】
「あれだけ破壊されてしまったガザの地区を、誰がどうやって元に戻すのか、どう再建して行くのかということは恐らく第三者的な国が入らないと、できないと思います。日本も重要な役割を果たせると言われていて、日本は70年前からパレスチナを支援していますし、イスラエルとの経済的な結び付きも強いので、第三者的な立場において国際的に訴えるということをやり続けていかないといけないと思います」
日本ができることはどのようなことがあるでしょうか?
【防衛大学名誉教授 立山良司さん】
「本格的な復旧、復興に取り組む必要もありますし、それ以前に非常に緊急的な人道支援をどんどん行っていかなければいけません。戦闘休止の中でトラックが1日に200台ガザの中に入っています。そういう物資も提供して行く必要がある。長期的に言えばパレスチナ問題を解決するためには何をすればいいのかということを日本も真剣に考えて、イスラエルやアメリカあるいは国際的な場所で働きかける必要があると思います」
視聴者から質問です。
‐Q:なぜハマスは批判されることを分かって子供や高齢者を人質に?
【防衛大学名誉教授 立山良司さん】
「ハマスからみれば人質をとって、少しずつ開放することによって、今回明らかになったように戦闘の中止あるいは将来的には停戦を実現できる可能性があります。ですから一方的にイスラエルの攻撃にさらされているだけではなく、自分たちもイスラエルに対して対抗できる手段、非常に卑劣な手段ではありますけれども、人質を取って交渉の材料に使っているということです」
今回の一時的な戦闘休止は、このまま停戦にはならないという状況ということです。これ以上の被害を生まないために、国際社会がどのように介入して命を救うべきなのか、私たちも考えていかないといけません。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年11月28日放送)