ある日突然、犯罪被害者になってしまう。その後の生活で直面する深刻な現実があります。賠償金が支払われないなど、犯罪被害者が置かれている現状を改善してほしいと、被害者や遺族でつくる団体が国に支援拡充の提言を行いました。
■犯罪被害者が国会議員に陳情 加害者による賠償金“踏み倒し”など
15日の朝、東京・永田町の衆議院会館を訪れた犯罪被害者への支援拡充を訴える「犯罪被害補償を求める会」のメンバー。内閣府や法務省の担当者らに手渡したのは、犯罪被害者の前に立ちはだかる深刻な問題への対応を求める書面です。その問題の一つは加害者による“踏み倒し”です。
和歌山県紀の川市に住む森田悦雄さん(74)。8年前、11歳だった息子の都史くんが殺害されました。この事件で懲役16年の判決が確定し、服役中の中村桜洲受刑者(30)には、悦雄さんが起こした民事裁判で、およそ4400万円の賠償が命じられました。
しかし…
【森田悦雄さん】
「(賠償金は)1円も入っていないし、一言の謝罪もないです。コロナで仕事がなくなり、約4年仕事があまりない。アルバイトしながら何とか食いしのんでいる」
判決が確定したのは2018年。いまだに支払われる気配はないといいます。
■家族の命を奪われた上に払われない賠償金…泣き寝入りの現実
日本弁護士連合会によると被害者側が加害者側から受け取った賠償金は、殺人事件では、裁判などで認められた額のたった13パーセント程度。強盗殺人事件ではわずか1.2パーセントです (2018年日本弁護士連合会調べ) 。長年続くこの現状を受け、森田さんらは提言をまとめました。
15日、「犯罪被害補償を求める会」は国に対し、要望書と署名を提出。給付金の算定制度の見直しや、被害者側の負担を軽減するため、国が損害賠償を立て替えることなどの提言を行いました。
【「犯罪被害補償を求める会」藤本護理事長(93)】
「悲しいとかいろいろありますが、一番困るのは経済的な問題なんですね」
長年続いているこの現実。しかし国は…
【警察庁 担当者】
「(損害賠償の)立て替えについて具体的な検討を行っている状況ではありませんが、ご要望については様々な角度から関係省庁と連携して、十二分に検討を尽くす必要があると思っています。
(Q.関係省庁ではそういう意見は出ている?) 現状では、議論している段階ではないです」
【「犯罪被害補償を求める会」藤本護理事長】
「立て替え払いは、全く検討されていませんね。世論をつくらないかんと思うけども、押す以外ないやろね」
家族の命を奪われた上、賠償金も“踏み倒し”されることが横行しているこの現状。改善される日が待たれます。
■対策に乗り出す自治体も 明石市の限度額は300万円
犯罪被害者を支援するために、対策を行っている自治体もあります。明石市の被害者支援制度では、加害者から賠償金が支払われない場合に、明石市が立て替えて被害者に支払い、加害者から回収するという制度があります。
これまでに2件、この制度の利用がありました。2020年度の1件については加害者側から回収済みです。2023年度の1件については未回収となっています。この制度、上限額があります。上限は300万円です。また、被害者が明石市民に限られるなど課題もあります。
明石市の担当者は、「増額したいが、市の負担となることを鑑みて300万円が限度、市内で起きた事件でも、被害者が他市の人なら断らざるを得ない。地域差なく利用できるようになってほしい」と話しています。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年11月15日放送)