悪質なホストによって、多額の借金を背負わされる被害が相次いでいます。今回、ホストが女性をとりこにするための“マニュアル”ともいえるノートを入手しました。なぜ、多くの女性が、ホストに多額の金を使うのか?
11月5日、東京・新宿の歌舞伎町で多額の金銭をめぐり、20代の女がカッターナイフでホストとみられる男性を刺した事件が発生しました。
詐欺などの疑いで逮捕・起訴された“頂き女子りりちゃん”こと、渡辺真衣被告(25)は、男性からだましとった多額の現金をホストに貢いでいたとみられています。
さらに8日、大阪市中央区の路上で、売春目的で客待ちをした現行犯で逮捕された25歳の女は警察の調べに対し、「ホストの男性に貢ぐため1000万円くらい稼いだ」と供述しています。
なぜ多くの女性がホストに大金を払うのでしょうか?
■給料の8割をホストに使う女性 その理由とは?
【ホストクラブに通う女性(26)】
「私個人としてはすごく楽しく通っているし、担当(ホスト)にはすごく幸せにしてもらっているんで」
こう話すのは、多い時には月20回ほどホストクラブに行くという会社員の女性(26)。通い始めてからのおよそ2年間で使った金額は…
【ホストクラブに通う女性(26)】
「400万いってないくらいですかね。(ホストクラブで)その日の売り上げが一番高い人って最後に歌を歌うんですけど、担当のお客さんの中で、自分が一番高額のお会計だったりすると、自分の隣で歌ってくれたりするんですよ。それって特別感があって、お金使った方が楽しいってシステムではあります」
女性の毎月の給料は、およそ30万円。その8割、およそ24万円はホストに使っていると話します。
【ホストクラブに通う女性(26)】
「私のことを否定はしないんですよね。肯定しかしないし、服新しいのを着ていても褒めてくれるとか…。こういうとこが好きだよってめっちゃ言ってくれるし、恋愛っていう面であんまりいい思いってしたことなくて」
担当のホストとは、LINEでも毎日やりとりをしています。
【ホストクラブに通う女性(26)】
「なんか寂しいなとかっていうところを、全部埋めてくれているなって感じはあります。自己肯定感は死ぬほど上がりますね。担当さんのおかげで(心の隙間が)埋まりましたね」
心の隙間を埋めてくれるというホスト。一体どのようにして、女性をとりこにするのか。
■ホストクラブの“マニュアル”「鎖」に「地雷」とは?
あるホストクラブの“マニュアル”には、マインドコントロールの文字が書いてありました。その手法とは…
20年以上、歌舞伎町で無料相談を行ってきた「青少年を守る父母の連絡協議会」の代表、玄秀盛さん。玄代表のもとには、ホストによる被害を受けた女性やその保護者の相談が相次いで来ます。
【多額の借金を抱えた女性の母親】
「(娘が)半年以上たっても相変わらず数百万円の借金。1000万円近いというのは変わらない。娘はそれなりに風俗でものすごく稼いで、数百万円返しているけど…」
【「青少年を守る父母の連絡協議会」玄秀盛代表】
「(金額が分かったら)正規でこっちで弁護士入れるから。ただし絶対、娘さんはホストに関わったらいかんわな」
玄代表は、2023年、ホストをやめた男性からある1冊のノートを入手しました。ホストクラブで行われた研修の内容をメモしたものだということですが、そこに書かれていたのは…
【ノートに書かれていた内容】
Q:ホストはどんな存在であるべきか?
A.お金を払ってでも、関係を作りたいと思える存在
「女性は、彼氏や旦那程度の男にはお金を出さない」といったように、ホストの心得やテクニックが書かれた、いわばホスト向けのマニュアルです。
その中に、赤字で強調された「マインドコントロール」の文字が。また、こんな表現も…『テクニック①鎖をかける』。
これはつまり「客に自分のそばから離れないようにする」という意味で、良い言葉の例として「他店にいかないから俺も大切にできる」などが挙がっています。
さらに、『テクニック②地雷をおく』。
「地雷をおく」というのはどういうことなのか…ノートには、具体例が記されていました。
他店に行けなくすることで、「好きな担当がいるのに他店に行く女の子、なんなんだろうね」と姫に言う。暗に「ホストが嫌いな女性像」、つまり“地雷”を伝え、その地雷に触れないように女性の行動を制限させるテクニックだといいます。
【「青少年を守る父母の連絡協議会」玄秀盛代表】
「はっきりとマインドコントロールと書いてあること、それに尽きる。音響と光でワイワイガヤガヤしている所で恋愛感情にもっていく。“姫状態”にもっていく、いい心持ちにもっていく。そういうところにはまりやすいように、LINE攻勢。『おはよう』から何から、10~15分返事がなかったら『どうしたの?』と心配を装う」
こうした「巧みな接客」が、ホストから抜け出せなくなるトラブルにつながっています。
■相次ぐトラブルの原因の1つ「青伝」 対策は?
そして、相次ぐトラブルの原因とされるのが、「青伝」と呼ばれるホストクラブの手書きの伝票です。会計を後で支払うことを約束した“売り掛け”伝票のことで、明細などは一切書かれていません。
玄代表は、この“売り掛け”システムに大きな問題があると話します。
【「青少年を守る父母の連絡協議会」玄秀盛代表】
「会計の時に『じゃあ帰るわね』の時に、青伝票120万円と、もしその子が払えなかったら、ホストが払うというシステム。だから女性にとったらそのホストに迷惑かけたくないがゆえに、何でもするようになっていく。尋常じゃない支払い額だから、簡単な風俗的なバイトに行く」
“悪質なホスト”をめぐる問題について9日、国会でも議論されました。
【立憲民主党・塩村文夏参院議員】
「18歳19歳の若年女性が狙われたり、風俗で働かないと払えないほど売り掛けが多額になっていく。返済能力のない若年女性に多額の売り掛け・借金をさせることに倫理的な面を含め問題はないのか?」
【松村祥史国家公安委員長】
「返済困難な売り掛けをさせることは、私も常識的に考えて問題ではないかと考えている。ホストクラブに対してどのような指導ができるのか、今後、検討するよう警察を指導していきたい」
松村国家公安委員長は悪質なホストの対策に本腰を入れる考えを示しました。
■悪質ホスト問題…ホストクラブ側の考えは?
悪質なホストに対する見方が厳しくなる中でホストクラブ側は、どう考えているのでしょうか?
大阪・ミナミのホストクラブ「アイフォーユー」の社長は…
【「アイフォーユー」美神拓哉社長】
「女性が大金を使ってくれて、僕らが給料をいただいているのが、そもそもイメージは良くないかなと思うんです。そこをよりクリーンにするためには、お客さま満足度というか、店に来ていただいている限りはちゃんと楽しんでもらうっていうことは、まあ店全体としては統一の教育をさせてもらっている」
この日、店を訪れた客は…
【客】
「月多くて4、5(来る)。自分の嫌なことが忘れられたから、また行きたいなと思います」
ここでは高額な“売り掛け”は、トラブルを避けるため担当のホスト個人で判断せず、リーダーや社長らの判断を仰ぐようにしているといいます。
–Q:売り掛けはどれぐらいあるものですか?
【「アイフォーユー」美神拓哉社長】
「人によりますね。10万円でも未収(売り掛け)禁止の方もいれば、100万円でもいける場合もある。その人(客)次第かなと思います。(客が)無理しない程度に、なおかつ応援してもらえる程度に、極力話をして見定める方針でやっている」
国会でとりあげられるまでの問題となった“ホストをめぐる問題”。トラブルをなくすための対策が求められています。
(関西テレビ「newsランナー」2023年11月10日放送)