大阪府が実現を目指す高校授業料の完全無償化について、兵庫県や京都府などの私立高校などで作る団体が7日、大阪府の制度案は「不公平を生み出す」として、制度への反対を表明する申し入れを行いました。申し入れを行ったのは大阪を除く近畿1府4県の私立中学高等学校連合会・協会です。
大阪府は高校の授業料について府内の公立・私立ともに2026年度には、全学年で「完全無償化」を実現する方針です。 大阪府の現行制度では、高校の授業料は、生徒の世帯年収が590万円未満の場合は公費補助により無償。年収590万円以上の世帯については、段階的に世帯の負担額が増える制度になっています。
新しい制度案では、所得制限を撤廃。1人当たり年間63万円までの授業料は、一律で公費負担となります。授業料が63万円を超えた場合の超過分は、生徒側ではなく、学校が負担することになります。
■大阪府の私立学校の団体は府と合意
大阪府の私立学校で作る団体は、当初は完全無償化案に反対していましたが、公費負担額を当初の60万円から63万円に引き上げることを府が決め、学校側の負担が大幅に減ることなどが見通せたことなどから、今年8月に合意しました。
■大阪から入学した生徒はその他の生徒の授業料で教育を受けることに
大阪府の制度案では、大阪府外の学校であっても、“大阪府の制度に加入すれば”、大阪府に住む生徒の授業料については、年間63万円までは国と大阪府が負担し、無償となります。 一方、大阪府外に住む生徒が、大阪府内の私立高校に通う場合、大阪府の無償化策は適用されず、国の補助分以外の授業料は生徒側の負担となります。 こうしたことから、兵庫や京都の私立高校などでつくる団体は「不公平を生み出す」と反発を強めています。
団体側は今回の申し入れで、高校授業料完全無償化すべてに反対するものではないとした上で、特徴ある教育が私立学校の存在意義であり、授業料は各々の教育方針に沿って決めるもので行政側に決定される類のものではないと強調。府の制度案は「大阪府の決める授業料の上限を超えた学校において、大阪から入学した生徒はその他の生徒から納められた授業料で教育を受けることとなり、不公平を生み出す」と指摘し、「無償化制度を適用する条件として、各々の私立高校の授業料について上限を決めて規制することに対しては、断固反対します」としています。
大阪府は、「制度への理解を求め、参画を働きかけていく」としています。
■奈良でも「無償化」進めるが所得制限など残る
周辺の府県では、奈良県が来年度からの実施を目指す高校授業料無償化の制度案を10月に発表。世帯年収が910万円未満の場合、県内の私立高校に通う生徒の授業料について、年間63万円を上限に公費負担するとしています。ただし、上限を超える授業料は、生徒の世帯の負担となります。「所得制限付き」「生徒側負担が残る」という制度で、大阪府の完全無償化とは異なります。
大阪府の吉村知事は、これまで、高校授業料の完全無償化は国が行うべきことだと話していて、府の取り組みが府の外にも広がることを期待していることから、今回の申し入れにどう対応するのか、注目されます。
(関西テレビ 2023年11月7日)