神戸の街で愛されてきた「ガリバートンネル」が、多くの人に惜しまれながら90年の歴史に幕を下ろしました。
商業施設が立ち並ぶJR三ノ宮駅前の歩道にひっそりとたたずむコンクリート製の出入口があります。漫画「ドラえもん」のひみつ道具「ガリバートンネル」に似ていることから、地域の人にその名で親しまれてきました。
最後の日、次々と写真を撮りに来る人たちの姿がありました。
【東京から来た人】
「私、東京なんですけど。前に1回、見に来たことがあって、かっこいいなーって思って」
【大阪から来た人】
「入ってみたら、吸い込まれるように狭まっていくのが、圧迫感もですけどドキドキの探検している気分も味わえて」
【奈良から来た人】
「前から気になってて…すごい、レトロというか。この狭さがいいですね」
■ガリバートンネルは神戸の歴史を見守ってきた
その歴史は、神戸の街とともにありました。 神戸市によると、記録はほとんど残っていないのものの、戦争が始まる前の1933年にはすでに存在していたそうです。元々は4つあったという「ガリバートンネル」は神戸市電神戸の街を走っていた「神戸市電」の停留所をつなぐ連絡通路として作られ、神戸大空襲も乗り越えてきました。
【神戸市民】
「わたし昭和28年生まれで戦争が終わって8年後生まれたんです。その頃はまだ“傷痍軍人”って、戦争で腕とか失くされた軍人さんがそこ(出入口)を上がった所に3人ぐらい立って募金箱をもって、通る人がお金入れてるのが戦後の風景だなと思って、子供心に見てました」
その後、阪神・淡路大震災も耐え抜き、復興する神戸の街ともに歩んできましたが、この度、三ノ宮駅前の再開発にともない撤去が決定したのです。
撤去を決めた神戸市は…
【神戸市都心三宮再整備課伊澤悠平係長】
「神戸市としては、2029年度のJRの新駅ビルの開業に合わせて、これからの時代を見据えた街づくりをしていくことも大事かなと思っていますので、いろんな声をいただいているとこではありますけども、ご理解いただきたいなと思っています」
「ガリバートンネル」の跡地には「歩行者デッキ」が整備される予定だということです。
■ガリバートンネルは静かに役目を終えた
【神戸市民】
「家族で出掛けた時にここの通路よく通っていて。もう50年以上前ですね。なんか、変わらないなって」
【神戸市民】
「自分が小学生…子供の頃からあったやつなので。普段は何もなく通ってるんですけど、なくなるとやっぱり悲しい部分が出てきますよね」
【神戸市民】
「貴重ですやん、こんなん。なんかね…(娘に)見せとかな思って。90年の貴重な階段やから、覚えとけよ、って」
そして2023年11月6日、午後10時45分。90年もの間、変わりゆく神戸の街を見つめ続けてきた「ガリバートンネル」は別れを惜しむ人々に見守られながら、静かに役目を終えました。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年11月7日放送)