国の天然記念物「奈良のシカ」をめぐる虐待疑惑。 奈良公園で保護されているオスのシカの多くがやせ細って死んでいくと獣医師が告発。調査を行っていた奈良県が6日、会見しました。
【奈良県 山下真知事】
「(えさの量は環境など)動物の5つの自由という観点から調査したが、全ての指標に抵触していて、鹿苑の特別柵での収容環境は不適切であると判断しました」
「神の使い」として大切にされてきた「奈良のシカ」。その保護活動を行っている「奈良の鹿愛護会」の丸子理恵獣医師が今年8月、「施設で十分に餌が与えられていない」と通報したことから奈良市と奈良県が調査に乗り出しました。
問題が起きた背景の1つに、奈良のシカが抱える難しい立ち位置があります。 文化庁はシカの生息地域をAからDの4地区に分類しています。春日大社やその周辺のA地区・B地区は保護対象とする一方、山間部などのD地区では、農作物被害を防止するため殺処分を含めた捕獲を認めました。しかし、その間にあるC地区は「緩衝地区」とされ、農業被害を起こしたシカは愛護会が管理する鹿苑の「特別柵」で生涯にわたり保護することになっています。
虐待を指摘された愛護会側は、「シカは収容された時点で気力をなくしてしまい、何も食べないケースが非常に多い」と反論していました。
そして6日、奈良県は調査結果を公表し愛護会が管理する「特別柵」での保護環境は「不適切」であると結論付けました。具体的には、エサは最低限の量は与えていたものの栄養価が高いものがほとんど含まれず、さらに1カ所で一斉にエサを与えていたため食べられないシカも多かったことなどが理由にあげられています。「特別柵」のシカは全体的に痩せていて、その状態を放置した愛護会の「責任は重い」と指摘しました。一方で、管理するシカの数が増えていることから、特別柵で管理できる数を超えていて愛護会の対応には限界があるとしています。
【奈良県 山下真知事】
「鹿苑での管理について、任せっきりにしていたことに(奈良県にも)一定の責任があったと思っています」
今回の調査結果を受けて
【奈良の鹿愛護会 山崎伸幸事務局長】
「指摘を受けたことについては真摯に受け止めて、改善すべき点は改善しないといけないと考えています。毎年当会はC地区の問題については収容するシカが非常に多くて職員も業務量も増えて困っているし、早急に改善していただきたいと問題提起はしていたんですけれども」
奈良県は今後、飼育環境の改善や愛護会への助言を行うとともに1年以内にシカの保護や特別柵のあり方について有識者などと検討を進める方針です。
(関西テレビ「newsランナー」 2023年11月6日放送)