奈良県桜井市にある「纏向(まきむく)遺跡」の調査を行う奈良女子大学が、2018年に行った調査で検出された土坑から“世界最古”とみられるチャバネゴキブリの破片が発見されたと発表しました。
調査した土坑は古墳時代前期前半(3世紀後半)のもので、この土坑から層位ごとの土壌採取などを実施した結果、多くの動・植物遺存体が検出されました。大阪市立自然史博物館が検出された昆虫類を分析したところ、それらの中からチャバネゴキブリの破片が見つかったということです。
さらに、今回の発見の後に行われた文献調査では、大阪府和泉市・泉大津市にまたがる「池上曽根遺跡」で、古墳時代中期後半(5世紀後半)頃のものとみられる土層から過去に発見され、別のゴキブリとして報告されていたものがチャバネゴキブリであることも新たに分かりました。
奈良女子大学などによると、国内の2つの遺跡から、それぞれ古墳時代のものと思われるチャバネゴキブリが見つかったことにより、「チャバネゴキブリは古墳時代から日本に確かに存在していたと考えられる」ということです。
これまでチャバネゴキブリは長らくアフリカ北東部が原産地とされ、船に紛れ込んで地中海からヨーロッパに渡ったと考えられていました。日本には江戸時代末期頃に貿易に伴って入ってきたと推定されていました。
しかし近年、チャバネゴキブリはアジアが原産ではないかとの説が唱えられています。沖縄から東南アジアに分布する野外性のオキナワチャバネゴキブリに関する、DNAによる系統解析や交配実験から、世界中の数あるチャバネゴキブリ属の中で、オキナワチャバネゴキブリとチャバネゴキブリが互いに最も近縁であるとされたためです。それによってチャバネゴキブリはアジアが起源であるという説が濃厚になっています。
これらの研究結果については、今月22日に奈良県天理市で開催される日本文化財科学会第40回大会で発表されます。
(関西テレビ 2023年10月11日)