36人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判で7日、初めての被告人質問が行われました。
青葉真司被告(45)は2019年7月、京都市伏見区の京都アニメーションの第1スタジオにガソリンをまいて放火し、36人を殺害した罪などに問われています。これまでの公判で青葉被告は起訴内容を認めていて、被告の責任能力が争点となっています。
裁判が始まって3日目。車いすに乗り入廷した青葉真司被告は、マイクが置かれた証言台に移動し、初めて弁護側からの被告人質問にのぞみました。
弁護人「車いすから自分で立って歩けますか」
青葉被告「それはできないと思います」
弁護人「やけどの治療で汗をかいたりすることは?」
青葉被告「汗腺を取っ払ってるので、頭と胸以外の汗をかけない状況です」
まず現在の健康状態についての質問から始まり、休憩をはさみながらおよそ4時間にわたった被告人質問。少しずつ青葉被告の輪郭が見えてきました。
6日の法廷では事件直後に警察官に確保された際の青葉被告の音声が流されました。録音から、青葉被告は「パクられた、小説。お前ら全部知ってんだろ」などと叫んでいたことが分かりました。
7日の被告人質問の冒頭で、その状況について弁護人が質問しました。
弁護人「お前ら知ってるだろと3回同じようなことを言いましたが、お前らとは?」
青葉被告「警察の公安部になります」「火災だったので、まず救急車、消防車、警察が呼ばれると思いますが、警察が早かったので、おそらく公安の人間ではないかと思いました」
裁判では青葉被告が事件前に「公安に監視されている」などと周囲に話していたことが明らかになっていました。
そして、質問は被告本人の生い立ちの話に。青葉被告は小学3年生のころ、両親が離婚。父親と兄、妹の4人で暮らすようになってから家庭の状況が一変しました。
弁護人「子供3人に対する父親の対応は変わりましたか?」
青葉被告「はい。正座させられたり、ほうきでさんざん叩かれたりしました」
弁護人「他の体罰は?」
青葉被告「日常茶飯事すぎて覚えていない」
父親から暴力を受けていた事実を話したほか、経済的に困窮した生活を送っていたことも明らかにしました。
また、京都アニメーションを知るきっかけについても言及が。
検察側はこれまでに青葉被告が14年前、小説を書くようになったのは京アニの代表作、「涼宮ハルヒの憂鬱」の原作小説に感銘を受けたからと指摘していました。きょうの裁判では、そのさらに前の段階で青葉被告が高校の先輩から紹介されたゲームをきっかけに京アニを知ったことが分かりました。
青葉被告「ハルヒをアニメ化したのが京アニ。紹介されたゲームがなかったら、ハルヒを見なかった気がする。そうなれば小説も書かなかったと思います」
■裁判を傍聴した記者が見た青葉被告「印象的だったのが“すらすらと”答えていたこと」
【リポート:犬伏凜太郎記者】
7日の公判で印象的だったのが、青葉被告が弁護人の質問に対して、時間をあけずにすらすらと答えていたことです。初公判で認否を問われたときは、声がかなり小さく、裁判長からも言い直しを求められていました。きょうから始まった被告人質問では、マイクが置かれた影響もあるのか、聞き取りやすい声で、詰まったりすることなく冷静に淡々と答えていました。
幼少期や学生時代の話が多かったのですが、記憶も鮮明に残っていて瀕死の火傷を負ったということを感じさせないくらい、はっきりとしたやり取りでした。
(Q青葉被告の言葉が強まったり、主張を込めて話しているような印象を受けた部分は?)
学生時代の趣味や友人関係をきかれた際に、京都アニメーションの作品を知るきっかけとなったアニメやゲームの話をしていたのですが、自分の豊富な知識を交えて饒舌に話している印象でした。弁護人に質問される前に自ら、「京アニにつながるのですが」と会話を切り出す場面もあり、積極的に京アニについて語ろうとしている青葉被告の姿勢を感じ取れました。
来週も引き続き弁護側の被告人質問が行われ、青葉被告が「小説を書くようになったきっかけ」や「その内容」などについて本人の口から詳しく明かされるとみられます。
(関西テレビ「newsランナー」9月7日放送)