36人が亡くなった京都アニメーション放火殺人事件の裁判員裁判が始まり、5日午後4時ごろ初公判が終了しました。
■9月5日初公判 傍聴券の倍率は約14倍
【記者リポート】
「(5日午前8時半ごろ)注目の裁判の傍聴席を求め、長い列ができています」
5日朝、京都地方裁判所北側の京都御苑で行われた傍聴券の抽選。わずか35席に対し、約500人が列を作り、倍率は約14倍に上りました。
【傍聴券が当たった大学生】
「真相が知りたいっていうのと、自分の目で見てみたいっていうのが一番の思いです」
裁判所に向かう人の中には、遺族の姿もありました。事件で犠牲になった寺脇(池田)晶子さん(当時44歳)の夫は、5日朝、その胸の内を語りました。
【寺脇(池田)晶子さんの夫】
「やっと始まったかなっていうのが…(青葉被告の姿を)見たいとか見たくないじゃなしに、見ないといけないなというのが正直な気持ちかな。子供からも聞いてきてって言われてることでもあるんですけど、『なんでこんなことしたん』って」
同じころ、事件現場となった京都アニメーション第1スタジオの跡地で、手を合わせる人がいました。
【海外のファン】
「ただ好きなので。アニメの作品が好きなので、京アニを応援したい気持ちがあって来ました」
■2019年7月18日 京都アニメーション第1スタジオに放火
2019年7月18日、京都アニメーションの第1スタジオにガソリンと火が放たれ、36人が死亡、32人が重軽傷を負いました。
事件直後に現場から100メートルほど離れたところで取り押さえられた青葉真司被告は、当時次のように話していました。「小説を盗まれた、だから火をつけた」
■青葉被告は車いすを押され初公判の法廷に
【記者リポート】
「午前10時すぎです。青葉被告を乗せたとみられる車が京都地裁に到着しました。中の様子をうかがい知ることはできません」
静まり返った法廷の中、車いすを押され、うなだれた様子で廷内にやってきた青葉被告。マスクをつけているため、細かい表情までは読み取れないものの、やけどを負った跡が白く引きつり、少し顔が赤らんでいるようにも見えました。
裁判長に名前を聞かれると、「青葉真司です」と小さいながらもハッキリと答えました。
青葉被告の様子を傍聴した人たちは…
【傍聴した人】
「やけどの跡はあるものの、髪の毛なども少し生えているような状態で、裁判官の質問に対してもハッキリ答えて、傍聴席の方にもしっかり聞こえるような形で、受け答えはできているようでした」
【傍聴した人】
「ちょっと痛々しい感じではあったんですけど、ハッキリしゃべったり、裁判長の問いかけに対して『はい』と応答していて、内面はしっかりしているのかなって」
■「私がしたことに間違いありません」青葉被告は答える
事件から4年がたって始まった裁判。青葉被告は5日、移動には車いすを使い、声は弱いものの、自分自身で質問に答えました。
【裁判長】 「名前は?」
【青葉真司被告】 「青葉真司です」
そして検察が起訴内容を読み上げ、裁判長から認否を尋ねられた青葉被告は、静まり返った法廷でこう答えました。
【青葉真司被告】
「私がしたことに間違いありません。こうするしかないと思ったが、こんなにたくさんの人が亡くなるとは思っていませんでした。現在は、やり過ぎたと思っています」
声は小さいながらも、ハッキリとした答えでした。
起訴内容を認めた青葉被告。今後の裁判の争点は責任能力の有無や程度になります。 検察側と弁護側がそれぞれの立場から事件の経緯を説明する冒頭陳述。
検察側は「被告は京アニに小説を応募したが落選し、小説のアイデアが盗まれたと一方的に思い込んでいて、筋違いの恨みによる復讐」だと指摘。犯行の準備や犯行は、人のせいにしやすいなどの青葉被告のパーソナリティーが表れたもので、直前まで実行するか引き返すか考えてためらったことなどをあげ「完全に責任能力があった」と主張しました。
■青葉被告の弁護側は「“闇の人物”への反撃」「責任能力がなかった」
一方、被告の弁護士は「青葉さんにとってこの事件は起こすしかなかった。青葉さんをもて遊ぶ“闇の人物”への反撃だった。“闇の人物”と京アニが一体となって、自分をからかう嫌がらせをした。京アニを消滅させて縁を切るために実行した」。
青葉被告は良いことと悪いことを区別して犯行を思いとどまる責任能力がなかったなどとして「心神喪失で無罪、または心神耗弱で減軽されるべき」と主張しました。
裁判中、青葉被告は時折、首を動かしてうなずいているような様子だったほか、目を閉じて、じっと話を聴いているようにも見えました。
■判決は来年1月25日に言い渡される予定
続く証拠調べの中では、事件で亡くなった人たちの名前や年齢、死因が読み上げられました。寺脇(池田)晶子さんの名前が読み上げられると、夫は天井を見上げました。
平成以降、最も多い犠牲者を出した放火殺人事件。公判は最大であと32回行われる見通しで、判決は来年1月25日に言い渡される予定です。
(関西テレビ「newsランナー」2023年9月5日放送)