日大アメフト部の違法薬物問題 日大が会見 「去年部員が大麻らしきものを吸ったと申告」 情報が林理事長には上がらず 「対応は適切だった」と理事長 専門家は「寮生活特有の問題が」【関西テレビ・newsランナー】 2023年08月08日
日本大学の林真理子理事長の記者会見が8日午後に行われました。アメリカンフットボールの部員が覚醒剤と大麻を所持した疑いで逮捕された事件を巡り、日大側は去年7月に大麻と思われるものを吸ったと学生から申告があったことを明らかにしています。
今回の事件とこれまでの大学の対応について、日本アメリカンフットボール協会のコンプライアンス委員を務めている、追手門大学客員教授の吉田良治さんに聞きました。吉田さんは5年前に日大アメフト部員による危険タックル問題があった後に、日大アメフト部の指導をした経験もお持ちだということです。
■「大麻のようなもの吸った」自己申告あったが事件化せず
まず8日の会見で分かったことについてまとめます。
・去年11月下旬 アメフト部員から「7月頃に大麻らしきものを吸った」と自己申告がありました。
・それを受けて警察が調査したのですが、物証がなかったため立証が困難となりました。
・それを受けて大学側はアメフト部員に厳重注意をし、さらに12月に薬物の講習会も開いたということです。
澤田副学長はこういった事実について、林理事長に上げる話ではないと判断したため、報告しなかったということです。理事長に報告されていなかったのが適切だったのかについて、林理事長は「副学長が対応に当たっていて、全ての情報が理事長に上がるわけではない。対応は適切だった」と話しました。
理事長に伝わっていなかったことに問題はなかったのでしょうか?
【追手門大学 吉田良治客員教授】
「犯罪行為になる可能性がありましたので、林理事長の言う『重大ではなければ上がってこない』の『重大』にあたらないのか疑問はあります」
また番組コメンテーターで大阪大学大学院教授の安田洋祐さんは、次のように話しました。
【大阪大学大学院 安田洋祐教授】
「難しいと思うのが、逮捕者が出た今の段階でみると、去年のタイミングで理事長に報告があってしかるべきだと思うんですけど、日大は7万人以上の学生がいて、犯罪につながるかもしれない事案は、多分相当な数あると思うんです。日大を悪く言うわけではなく、それだけ学生が多いので。そうすると全てを逐一理事長に報告するのは非現実的で、どういったものを報告すべきかという線引きを決めておかないと、ガバナンスが機能しないのかなと感じました」
続いて事件発覚の経緯を改めて見ていきます。
・6月30日 警察から「アメフト部の寮で大麻使用の可能性がある」と連絡があったため、副学長らが寮を視察しましたが、発見できませんでした
・7月6日 警察から再度指摘があり、大学が寮生の持ち物検査とヒアリングを行った結果、 所有者不明の“茶葉”のようなものが付着したビニール袋と不審物を発見したということです
・7月18日になって警察に相談しました。発見から相談まで空白の12日間がありました。
この12日間について、澤田副学長 は「この時点では大麻と分からなかったため、見つかったものを触るべきではないと思った」と話しており、酒井学長は「ヒアリングを全てしてから警察にまとめて相談しようとした」と話しています。
【追手門大学 吉田良治客員教授】
「大麻に関わることで警察から『調査してはどうか』と言われて、ビニールの袋の中に入ってる植物片が見つかったのですから、一旦まず調べてもらった方が良かったんじゃないかなと思います。疑わしきものが発見されたときに、まず調べてもらうというのはありだと思うんです」
■「スポーツをするためだけの寮にせず、もっと人と関わり合いを持つことも重要」
去年自己申告した学生と、今回逮捕された容疑者が同一人物なのかは、捜査に支障があるとして明らかにされていません。寮の中やアメフト部の中で、違法薬物がまん延している可能性も考えられますが、どういう問題があると考えられますでしょうか?
【追手門大学 吉田良治客員教授】
「寮についてはいろいろ考えるところがありまして、特に体育会系の寮は、“合宿所”言われたりもします。そのスポーツをするためだけにいる学生という印象もあります。私はアメリカの大学でアメフトのコーチをした経験があるのですが、基本的にアメリカの学生はそのスポーツだけの寮というのはなく、一般学生の寮であったりシェアハウスに住んでいたりします。狭い世界ではなく、もっといろんな人と関わり合いを持つということも重要なのかなと、私は感じています。学生自身が自立できるのが大事だと思います。部の管理下にあって、締め付けられているようなところより、外の世界と結びついて、いろんな考え方を知るということがとても大事だと思うんです」
再発防止に向けて、吉田さんは「チーム内で継続的にコミュニケーションをとれる環境作りを」と言います。
【追手門大学 吉田良治客員教授】
「5年前の危険タックル問題の時に、チーム再建を手伝ってほしいということでプログラムを提供しました。まずは自分が自立して、自分の考え方を固めて、それをチーム内で共有しながら、いろんな意見を聞き合う。それをもっと外にもつなげていきたいということがありました。その第1段階としてチームの中でいろんな考え方を知っていくプログラムを実践していただいたんです。その後、同じようなことが行われてるのかどうか、今後もう一度プログラムを考え直してもらった方がいいのかなと思います」
危険タックル問題があった当時は、厳しく自分たちを律する思いがあったのではないかと思われますが、時間がたって、人も変わり思いが風化してしまったということはあるのでしょうか?
【追手門大学 吉田良治客員教授】
「私がプログラムを提供した時は、4年生、3年生、2年生の3学年に対してでした。次に1年生が入ってきた時にプログラムを継続してもらうことがおそらく良かったんだと思うんですけど、やはりその場しのぎのアリバイ作りのような研修になってしまったのが実態だと思うんです。とりあえずやっておいて、それで復帰できたから、研修もそこで終了してしまうというのでは、継続性がなくなってしまいます」
■薬物問題があったアメフト部は廃部にすべきか?
ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者から質問です。
「Q.薬物問題は廃部も検討した方がいいのでは?」
【追手門大学 吉田良治客員教授】
「日本的には、どうしても不祥事が起こるとトカゲのしっぽ切りみたいになったり、部に対する連帯責任であったりが問題にされるかもしれません。 現時点では1人しか逮捕されていませんが、他に関係している人物はいないか、もしくは今回の件を知っていながらチーム内で隠蔽していなかったのか、チーム全体でもっと掘り下げて調査をしていく必要があると思います。そのために一旦立ち止まるのは大事だと思うんですけれども、どこかのタイミングで復活させることもあるかもしれないです。数年間活動を止める選択肢もあるんだろうとは思うんですけど、まだこれから調査をして、どれだけ広がっているのかという部分も全部出し切った上で考えるべきだと思います」
今後の捜査の進展が待たれます。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月8日放送)