「うるさい!」「不愉快!」の苦情も 自由に弾けるストリートピアノ 制限はどこまで必要? Youtubeでも活躍するピアニストは「日本に合ったルールを」 2023年08月12日
全国でよく見かけるようになったストリートピアノですが、盛り上がりを見せる一方で、「うるさい!」「不愉快!」と批判の声があがっています。
兵庫県のJR加古川駅では、駅の構内に置かれたピアノに
「不快な音を奏でる人がいる」
「駅の放送が聞こえにくい」
といった苦情が寄せられ、設置からわずか半年で撤去される事態になってしまいました。
今、その在り方が問われ始めています。
■ストリートピアノの“聖地”神戸市
ストリートピアノは「誰でも」、「自由に」弾くことができます。
駅や街中など人が集まる場所を中心に、全国で約650台設置されていると言われています。
中でも、ストリートピアノの「聖地」と呼ばれているのが神戸市です。2019年に中央区で設置されたのを皮切りに、すべての区に置かれ、現在は市内だけで33台、神戸市によると、全国の市区町村で最も多い設置数となります。
神戸港の遊覧船ターミナル「かもめりあ」には珍しいクリスタルのピアノがあり、子どもたちに人気です。
長崎から来たという女の子2人がピアノに気付き、「これ弾けるんだって」「弾いてもいいの?」「多分大丈夫だよ」と話しながら、弾き始めました。子どもたちは夢中になって演奏します。
【長崎から来た女の子2人】「緊張したけど、うれしかった」「楽しかった」
【岩手から来た男の子】「楽しかった」
ストリートピアノは、子どもから大人まで幅広い年齢層の人たちが楽しむ一方で、問題が発生しています。
■実際のストリートピアノの音量を検証
神戸市営地下鉄の「旧居留地・大丸前」駅。
ピアノ脇に置かれている、演奏について感想を書いたノートを見てみると…
「音がデカい!」
「“ピアノの音がうるさい”って通行人に駅員さんが怒られていましたよ。かわいそうに。」
ピアノの音の大きさについて、批判的な意見も書かれています。
実際、ストリートピアノの音はそんなにうるさいのか?調べてみました。
ピアノを弾いていない時の音量は、約50デシベルですが、ピアノを弾いてみると工場の中の騒音や、犬の鳴き声と同じくらいの大きさの最大88デシベルでした。
ピアノからおよそ80メートル離れた、大丸百貨店の入り口の近くでは60から70デシベルの大きさで、これはピアノを聴こうとしていなくても、掃除機と同じくらいの大きさの音が流れているということになります。
ピアノの音について、駅の利用者は…
【駅の利用者 70代男性】「よう響いてていいん違う?ここは」
【駅の利用者 30代女性】「弾き方にもよると思うんですけど、好みかなと思いますけど」
【駅の利用者 70代夫婦】「そんなに目くじら立てることもないんじゃないですかね」「うるさいっていう人は何聞いてもうるさいと思うん違います?」
音の感じ方は、人それぞれのようです。
■世界で活躍するピアニストは日本版のルールが必要と指摘
国内外で活躍するピアニストで、Youtubeでストリートピアノの演奏動画を投稿している、菊池亮太さんは、「日本版」のストリートピアノのルールが必要だと指摘します。
【菊池亮太さん】
「今はドイツにいます。音楽に対して、海外の方が割とオープンであることには間違いないと思います。ただ、日本には日本のグルーヴ感(リズムや高揚感)があるし、それは音楽の楽しみ方の違いなのかなと思います。日本人の国民性に合わせたルールみたいなもので統一する方がいいのかなと思います」
■ストリートピアノの騒音問題への取り組み
埼玉県坂戸市では、駅のストリートピアノに独自のルールを設けて、騒音問題に積極的に取り組んでいます。
演奏者は、弾く前に名前や演奏時間を記入し、激しい曲や乱暴な演奏は控えてもらいます。
併せて、演奏を聴く人が黄色い点字ブロックの上で立ち止まらないよう、緑のテープで聴く場所を指定するなど細かいルールを設けました。
「自由」に弾けるはずのストリートピアノの使い方を「制限」したことについて、坂戸市の担当者は…
【坂戸市の担当者】
「公共的な空間での活動となりますので、当然、駅を利用する方々に配慮する必要がございます。弾く方、聴く方のルールがあって、初めてストリートピアノが愛されながら続けていけると考えております」
騒音問題について、ストリートピアノの設置数が日本一の神戸市は、「やさしくお弾きください」といった注意書きや防音パネルを置くなど一定の対策はしていますが、現時点では、より厳格なルール作りはしない方針だと言います。
【神戸市の担当者】
「現状の神戸市のストリートピアノの状況を踏まえると、(今の対策で)十分かなと思っています。今後、いろいろなご意見あろうかと思いますので、そういう意見があったら変えていくのは一つかとは思いますが、現状では今のルールや決まりが適した状態だと思っています」
■ストリートピアノ系Youtuber「弾く人の配慮も必要」
各地で対応が分かれるストリートピアノの利用方法。
弾く人の配慮も必要だと考えるのが、ストリートピアノ系Youtuberとしてチャンネル登録者の総数、日本一の267万人を誇る、よみぃさんです。
【ストリートピアノ系Youtuber よみぃさん】
「30分から40分ぐらいの長時間、同じ曲を演奏、練習し続けるのは、あまり良くはないとは思います。『通行人に演奏を聴いていただく』という、心づもりで弾いていたら、その演奏が初心者だろうが、上級者だろうが、心打たれるものがあるかもしれないと思います」
「誰でも」、「自由に」弾けるストリートピアノですが、公共の場所に置かれる以上、ピアノを弾きたい人も、その場所を利用する人も、どちらにとっても快適な空間を目指したいものです。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月7日放送)