和歌山・串本町の夏の風物詩、カツオの一本釣り。漁師たちが釣りざおを上げるたびにカツオが宙を舞います。そんな熟練の漁師たちに交じって漁をしているのは、子ども…?
漁師を目指す少年の挑戦を追いました。
■夏の風物詩「カツオの一本釣り」に挑む あどけなさ残る“中学1年生”
漁師を目指す少年は、森口 海晴(もりぐち かいせい)くん、中学1年生です。漁港から程近い学校に通っています。
休み時間は仲良しの友達とふざけあい、あどけなさが残ります。普段はとても恥ずかしがり屋な性格の海晴くんですが…
–Q:海晴くんについて
【海晴くんの同級生】
「学校ではおとなしい人ですけど、釣りになったら変わりますね。かっこよくなったりしますね」
本州最南端の町、和歌山県串本町。この町では、黒潮に乗って北上するカツオの漁が、古くから盛んに行われています。
海晴くんのお父さんの征也(せいや)さんと、おじいちゃんの嗣也(ともや)さんは2人とも漁師。
海晴くんは、小学4年生のころから、学校やクラブがない日は一緒に船に乗り、カツオ漁の手伝いをしています。
【海晴くんの父・征也さん】
「沖へ遊びにいきたいっていうから連れていって、港の中で(釣りの)練習したり、家で練習したり。(釣りが)好きなんやなと思います」
■憧れの祖父や父の背中を追って…親子3代でカツオ一本釣り漁に挑む
午前2時30分。カツオ漁は真っ暗な深夜に出航します。目をこすり、眠そうにしている海晴くん。船内で少し仮眠をとります。
午前4時、カツオ漁のポイントに到着しました。海晴くんは起きてすぐ、作業着に着替えようとしますが…お父さんに「(ズボンが)反対や!」と突っ込まれながらも、釣りの準備をします。
いよいよカツオ漁が始まりました。
【海晴くんの父・征也さん】
「きたきた、きたぞー」
海晴くんは、3年前から船に乗り始めました。その経験を生かして、さっそく釣っていきます。海の中にはカツオの群れが。大人の漁師たちに交じって、小さな体で負けじとカツオを釣り続けます。
海晴くんの順調な釣りにお父さんは「うまいなー」と声を掛けます。
「一本釣り」は、カツオの身をほぼ傷付けず、鮮度も保つことができる釣り方です。漁師たちは勢いよくさおを上げることでその反動を使って、カツオにかかっていた針を空中でとるという高度な技術を使っています。
3キロほどのカツオを、体全体を使って、さお1本で持ち上げるのはかなりの重労働。海晴くん、最初は順調でしたが、さおがしなるほどに引っ張られるカツオ漁に疲れが出てきました。
さおを持ち上げるスピードが落ち、カツオから針をうまく外すことができません。隣でお父さんが針を外してくれます。
続けて、カツオを釣ると…海晴くん、針が引っかかったままカツオを船の中にぶつけてしまいました。
【海晴くんの父・征也さん】
「やった、また。海晴、もうちょっとそっと釣らなあかんわ」
傷がつくと売りものにならないカツオ。お父さんから注意を受けてしまいました。一人前の漁師になる厳しさを痛感します。
落ち込む海晴くんに、お父さんが「疲れていない?」「腹減ってない?ジュース飲んでこい」と声を掛けます。
他の漁師が海晴くんに「きょうは釣れている?まあまあ?」と聞くと…
【森口海晴くん】
「ふつう」
【漁師】
「釣れているほう?」
【森口海晴くん】
「そんなに」
お父さんに怒られて少し悔しそうな海晴くん。
–Q:お父さんってどんな人?
【森口海晴くん】
「難しい…」
少し落ち込んでいた海晴くんですが、ちょっとやそっとじゃ気持ちは折れません。気を取り直して、ふたたびー本釣りに挑戦します。
「粘り強くカツオと向き合う」、海晴くん。きょうの漁でまたひとつ成長しました。
【海晴くんの祖父・嗣也さん】
「上手に釣るようになってきたけどね。そりゃ一緒に来ていたら楽しいよね。孫と沖来たら楽しい。自分の好きなことしたらええんやけどね。漁師なるのもええし」
■一本釣りで体力限界も…水揚げまで自分の力で踏ん張る 頑張り屋の少年
午前9時30分。5時間におよぶカツオ漁が無事終わりました。海晴くんもようやく緊張から解き放たれたようです。
ここからは漁師だけのごちそうの時間。海晴くんが取れたてのカツオをさばいて刺身にしました。
午前11時に港に到着しました。一息つく海晴くん。漁は終わりましたが、さらにここでもうひと仕事。カツオの水揚げ作業も手伝います。海晴くんは自ら率先して船の中に入り、カツオを何度も持ち上げて運びます。
早朝からの漁で消耗した体力も限界に近づいていますが、「代わったろか?」というお父さんの助けも断り、自分の力で最後まで踏ん張ります。海晴くん、あともう少しです。
技術的にも体力的にも大変なカツオ漁。海晴くんを夢中にさせるものとは…
【森口海晴くん】
「魚を見るのが楽しいから」
–Q:お父さんとおじいちゃんについてどう思う?
【森口海晴くん】
「かっこいいと思います。(憧れる?)はい」
恥ずかしがり屋な海晴くんにとって、自分の思いを言葉にするのはまだまだ難しいようですが、おじいちゃんやお父さんは憧れの存在です。
【海晴くんの父・征也さん】
「まだまだ子どもやからどんなようになるか分からん。ゲームとか漫画も好きやから何になってくるか分からん。好きなんやったらしてくれたらいいし、好きなことしてくれたらいい」
和歌山県串本町の漁師町で育つ頑張り屋の海晴くん。おじいちゃんやお父さんに見守られながら、きょうも船に乗っています。
(関西テレビ「newsランナー」2023年8月2日放送)