日本も世界も“異常気象” 「未知の領域」と国連 アメリカでは“54度”に 偏西風の蛇行が猛暑・豪雨とともに大雪ももたらす 温暖化対策できなければ「四季が“二季”になる」と専門家が警鐘鳴らす 2023年07月25日
気象庁は、7月20日に今年の夏は広い範囲で「10年に一度」クラスの暑さになる可能性があると発表しました。日本では近年、“異常”とも言える気候が続いていますが、世界各地でも深刻な状況となっています。世界的な異常気象はこの先どうなるのでしょうか?
■世界的異常気象 気象学の専門家に原因とこの先について聞く
世界の異常気象に詳しい気象学の専門家、三重大学の立花義裕教授に聞きました。また関西テレビ「newsランナー」出演の片平敦気象予報士は、気象の研究などで立花教授と交流があるということで、片平予報士にも解説に加わってもらいました。
国連の機関も「未知の領域」に入ったと指摘していますが、異常気象の現状をどうご覧になりますか?
【三重大学 立花義裕教授】
「『異常気象』とよく聞きますよね。普通じゃないことを“異常”というはずが、毎年のように起こって、普通のことになっていますので、私は『ニューノーマル化している異常気象』と呼んでいます。それぐらい気候が変わっています」
■7月世界各地で異常な高温 中国で52.2度、アメリカで54度
世界の異常気象をみていきます。7月に入って、世界中で驚きの気温が確認されています。
・スペインで44.5度。昼間の屋外労働が禁止される地域も出ました。
・ギリシャで45.7度。アテネの観光地で、従業員のストライキが起こりました。
・中国で52.2度。養豚場で豚462頭が熱中症で死んでしまったということです。
・そしてアメリカで54度。救助のヘリが暑さで飛べない事態となりました。
これらの気温はやはり異常と言えるのでしょうか?
【三重大学 立花義裕教授】
「はい異常です。たまに起こることはありますが、これほどいろいろな場所で起こるのは異常です。日本ではなく、違ったところの出来事だと思うかもしれませんが、連動しているのが異常です。偏西風が連動の原因となっています」
■異常気象の原因は「偏西風の蛇行」 蛇行の原因は「北極の温暖化」
世界的異常気象の原因を解説してもらいます。
【三重大学 立花義裕教授】
「北側が寒く、南側が暑い、この境界線が偏西風なんです。偏西風の北か南かで、気温も雨の降り方も全然違います。普通の夏は偏西風がほぼまっすぐ流れて、北が寒く、南が暑くなるのが普通です」
【三重大学 立花義裕教授】
「今年もそうですが、近年これが南北に大きく蛇行しています。出っ張っているところが大変暑くて、引っ込んでいるところは大変寒い。それがずっと停滞することで暑くなります。日本は図で示されたように今暑いのですけれど、ヨーロッパも暑くて、日本の暑さとよく連動します。寒いと表現した所は、雨が降ります。ですから豪雨と猛暑が連動すると思ってください」
なぜ蛇行しているのでしょうか?
【三重大学 立花義裕教授】
「近年の偏西風の蛇行は、北極の温暖化が一因であると言われています。北極が温暖化して、『シロクマさんが困っている』なんて聞いたことがあるかもしれません。北極の出来事など関係ないと思うかもしれませんが、実は関係があって、偏西風は北極の温度と熱帯の温度の差が大きいほどまっすぐ流れます。北極が温暖化して、差がなくなってくると、偏西風はふにゃふにゃと蛇行してきます。ですので北極の温暖化が、日本を含めた中緯度の異常気象にも影響しているわけなんです。
北極はいったん溶けだすとなかなか元に戻らないので、これからも近年のような暑さになる可能性が高いですね」
日本がこれだけ暑いのは、偏西風が大きく蛇行している影響なのですね。
【三重大学 立花義裕教授】
「そうです。偏西風はたまに蛇行することがありますが、これだけ頻繁に蛇行している原因は北極の温暖化です。それに加えて今エルニーニョ現象が起こっていまして、熱帯の影響もあります。北極と熱帯の両方の影響ですね」
■今年は“10年に一度の暑さ” 京都では連日37度の予想
ここで、この夏の日本の暑さの状況をみておきます。
【片平敦気象予報士】
「7月25日以降の1週間の暑さの予報です。東北では福島で最高気温35度以上が当分続きそうです。近畿地方で京都はこの先しばらく37度ぐらいが続く見通しです。
8月上旬ぐらいにかけて、特に暑さに注意してください。いつもであれば、ここまで気温が上がる日はそんなに続かないのですが、この時期としては“10年に一度ぐらいの暑さ”というのが、7月下旬から8月上旬ぐらいまで続いてしまいそうです。ずっと続くので、すごく危ないところがあるかと思います」
【三重大学 立花義裕教授】
「一度偏西風の蛇行が始まるとなかなか終わらない。しばらくこんな状況が続くと思います」
■2100年には恐ろしい天気予報 ほんの20年先にも危機的状況が待ち受ける
未来の話ですが、どこまで暑くなってしまうのか、“2100年”の想定で、片平予報士にお天気を予想してもらいます。
【片平敦気象予報士】
「科学的な根拠があって2100年はこうなるのではと予想されているものがあります。
『2100年7月24日の天気予報をお伝えします。最高気温ですけれども、豊岡や京都では最高気温44度、大阪は45度ということで、外にいると倒れてしまうような暑さのところが多くなりそうです。この年はもしかすると熱中症の死者が累計1万人を超える予測が出ているぐらいです。くれぐれもご注意下さい』」
「さらにもう2点、注意してもらうことがあります。
・『ビーチが大混雑か!?』温暖化の影響で海面が上昇し、日本の砂浜は80%が消失しているとの予測があります。そうなると数少ないビーチに人が殺到して大混雑するかもしれません。
・『おいしいお米は、期待薄!?』夏場の高温、おいしいお米が収穫できなくなる心配があります」
「これらはあくまでも“2100年の予測”です。ただ温暖化対策などがされないと、気温が4度から5度上昇してもおかしくないと言われています。ある1日だけでなく、全体が今より4度高くなって、めちゃくちゃ暑いのが当たり前になってしまいます」
立花教授はもう少し近い未来、20年先の話として、警鐘を鳴らしています。
・「危険な豪雨 頻度も降水量も増加」
・「スーパー台風 毎年のように発生上陸」
・「大寒波 内陸部にも大雪が」
【三重大学 立花義裕教授】
「100年後というと大分先なので、『おれには関係ない』という人も多いでしょう。20年後は自分や自分の子供の事なので大事に考えるでしょう。温暖化でまず海面水温が上がります。ですから蒸発によって水蒸気がたくさん発生し、豪雨が増えます。すぐにでも起こることで、今も起こっています。台風も海面水温が上がるので、強くなります。また今年京都などで大雪が降りましたが、温暖化になっても寒波はたまに来て、水蒸気は増えているので雪が降りやすくなります。冬は豪雪、夏は豪雨、極端な気象となります。熱中症もありますが、風水害、雪害が起きることになります」
恐ろしい事態を避けるために、我々にはどういうことが求められるのでしょうか?
【三重大学 立花義裕教授】
「やはり温暖化を防ぐことが大事です。二酸化炭素を増やさないような生活が最も大事です。私が実践しているのは“自転車”です。近い距離は車に乗らずに、自転車に乗ると。健康にもいいですし。そういう地道な活動に意味があると思います」
■視聴者から質問 Q四季の区別がなくなる→A“二季”になるかも
ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者からの質問です。
「Q.高温が続けば、四季の区別がなくなるのでは?」
【三重大学 立花義裕教授】
「夏が長くなっています。冬は寒波で、雪が降りやすくなっています。春と秋は減って、四季ではなく“二季”になってきますかね。非常に良くない、日本らしくないですね」
「Q.紫外線も強くなっていきますか?」
【三重大学 立花義裕教授】
「夏はけっこう湿っているので、それほど強くならないです。むしろ5月の紫外線が今よりもっと強くなります」
「Q.最近、冷夏ということを聞きませんが、今後冷夏は起きるのでしょうか?」
【三重大学 立花義裕教授】
「地球温暖化で、大陸の温度も上がっているので、冷夏の起こる確率は激減するでしょう。寒い夏への対策より、猛暑に対応した生活スタイルや作物を考え、地球温暖化に適応した生活をしないといけません。二酸化炭素を減らせられればいいのですが」
【片平敦気象予報士】
「1993年の大冷夏がありましたが、それ以来大きな冷夏というのは聞かないですね。気候が全体的に変わっていると実感している人は多いと思います」
皆さんが自分の事として考えていくことが大切になります。
(関西テレビ「newsランナー」7月24日放送)