2人が死亡する舟の転覆事故が起きた京都の保津川下りが、17日に運航を再開しました。この日を、新たな気持ちで迎えた18歳の船頭がいます。再開までの、若い船頭の喜びと、身の引き締まるような思いを取材しました。
亀岡市から嵐山までの16キロを進む京都観光の定番、保津川下り。3カ月半ぶりの運航となった17日、舟の上にはこれまでと変わらない歓声が響きました。
炎天下で黙々と櫂を漕ぐのは18歳の新米、清家颯太さんです。
3カ月半前、3月28日に起きた転覆事故。激流ポイント「大高瀬」で船頭と乗客ら29人が川に投げ出され、船頭2人が死亡しました。
【清家颯太さん(18)】
「当時、どういう状況かわからなくて正直混乱していました。つい昨日まで見ていた人がいなくなったのはさすがにつらいですね」
400年以上の歴史がある保津川下りの船頭に憧れ、この世界に飛び込んだ清家さん。事故の3週間前に運航組合に入り、舟を漕ぎ始めたばかりの頃、事故が起きました。
【清家颯太さん(18)】
「保津川遊船が続けられるのかどうか、やっぱり不安はありました。僕も気を付けて、気を引き締めて、船頭の一員ということをもう一度、意識しました」
事故を2度と起こさないため、命を失わないため、船頭たちは水難救助の訓練を行いました。救助の方法を学ぶだけでなく、自ら川に流される体験も。水の怖さを身体で感じることに意味があります。
再開まで1週間となった7月10日、運航を休止してから初めて、先輩と舟の掃除をした清家さん。3カ月分の汚れを見て、何を思うのか、聞きました。
【清家颯太さん(18)】
「やっぱりこの伝統は僕の下の世代が出てきた時につなげていきたい。この技術はなくしたらダメだなと。お客さんの笑顔と安全を第一に考えながら下っていけるまた信用してもらえるようにしていきたいです」
保津川下りの再開にあたって、運航組合は乗客と船頭が着用する救命胴衣を全て、自動で膨らむタイプに変更。他にも、舟の形を船頭が落ちにくいように改良したり、GPSの無線機を搭載したりするなど、安全対策を強化しています。
再開初日に舟にのった観光客たちは「一回は保津川にきたいなと思っていました。今が一番安全かなと。大満足です」「とても気持ちよかったです」「ちょっと(事故が)頭にはよぎったんですが、安心して乗れましたね」と感想を語っていました。
【清家颯太さん(18)】
「最初は緊張があって不安もそりゃあったので、安全に下りきれたので安心しました。お客さんたちが全盛期のように戻ってきてくれるように接客、安全も第一に考えて、また盛んな保津川遊船にしていきたいです」
(関西テレビ「newsランナー」2023年7月17日放送)