性犯罪めぐる法律が改正 『不同意性交罪』が施行 “同意のない”性的行為は処罰の対象に 数々の性被害を受けてきた女性は「そこからの回復がどれだけ大変なことか、本当に知ってほしい」 2023年07月13日
性犯罪をめぐる法律が改正され、13日から新たな法律が施行されます。それが『不同意性交罪』です。一体どのように変わるのか、それによってどのような人が救われるのか考えます。
■これまでの「強制性交罪」から「不同意性交罪」へ
13日から施行される改正刑法ではこれまでの「強制性交罪」から「不同意性交罪」と名前が変わります。
これまでは、暴行や脅迫、心神喪失など被害者が著しく抵抗することが困難な状態であることが性犯罪が成立する条件でした。
今回大きく変更されたのは、「不同意」という点です。
被害者が「同意しない」という意思の形成や表明などが困難な状態での行為、つまり意思に反した性的行為は処罰の対象となりうるとしたのです。
【金子深雪さん】
「全ていまだにハッキリくっきり覚えています。もう肌感覚、あの臭い、気温、あの時のままそっくり覚えています」
成人になるまで、数々の性被害を受けてきた金子深雪さん。
最初の被害は7歳の頃、学校の校庭で遊んでいた時に突然、見知らぬ男に体を触られたことでした。
【金子深雪さん】
「どんどんエスカレートしてきて、もうすごく気持ち悪い。抵抗するしないじゃなくて、もう本当に恐怖。ものすごい恐怖の中でどうすることもできない」
金子さんは性被害を受けるたび、恐怖により身体が動かないなど、抵抗できないつらさを経験しました。
今回の法改正では、暴行や脅迫だけでなく、金子さんのような「恐怖・驚がく」や「アルコール・薬物の摂取」、「経済的・社会的地位の利用」など8つの具体例も明示されました。
さらに、性的行為を自分の意思で決定できるとみなす「性交同意年齢」も13歳から16歳に引き上げられ、原則として16歳未満の子供への性的行為は処罰の対象となります。
■法改正のキッカケは、性暴力事件めぐる4件の”無罪判決”
法改正のキッカケになったのは、4年前に相次いだ4件の性暴力事件をめぐる裁判での無罪判決でした。
このうち、父親が当時19歳の実の娘に性的暴行をした罪に問われた裁判では、一審で娘の同意がなかったことは認めた一方、抵抗が著しく困難な「抗拒不能」の状態だったとは言い切れないとし、無罪を言い渡しました。
この「抵抗が著しく困難な状態」についてこれまでは明確な判断基準がなく、裁判官によって判断にバラつきが出ると指摘されてきました。
法改正の検討会にも加わった上谷さくら弁護士は今回、基準が明確化されたと評価しています。
【上谷さくら弁護士】
「やっぱり裁かれるべきものが裁かれてないっていう問題点もあったので。『裁判官によって違うっていうところをできるだけなくしたい、明確化したい』という趣旨があったのは間違ないですね。同意が取れないような状況に追い込んで性交すると犯罪になるということが、国民にとっても分かりやすくなったかなと思って」
■自身も幼い頃に”友人の父親ら”から性暴力 被害者の”回復支援活動”続ける心理カウンセラー
心理カウンセラーの柳谷和美さん。
【柳谷和美さん】
「実は今年やっとね、性交同意年齢が13歳から16歳に引き上がったんですよって、知ってましたか?」
性被害にあった人のケアや、被害からの回復を支援する活動をしています。自身も幼いころに友人の父親といとこから性暴力を受けました
【柳谷和美さん】
「殴られたとか、何かを盗まれたとかとは違う。やっぱ性暴力っていうのは、本当にその体の感覚が伴ってくるから、そこの複雑さっていうか、加害のその時だけで終わらへんねんっていう…。被害者はそこからずっと苦しまないかん」
7歳の頃、最初の性被害にあった金子さんは、今も心の治療を続けています。
【金子深雪さん】
「被害者は、今まで特に”信頼関係にあった人”から行われた性犯罪ほど、自分の土台が壊されてしまうこと。そこから回復するっていうことが、どれだけ大変なことなのか、本当にそのことを知ってほしい」
金子さんは、身勝手な性行為によって、被害者は心も命も削られていることを、加害者だけでなく社会にも知ってほしいと訴えます。
この改正法が正しく運用されることを望んでいます。
(関西テレビ「newsランナー」7月13日放送)