“市長の給料は市民が決める”全国初の条例可決 「市民の納得感を得られる」「将来的に“できる首長”は高い給料も」 寝屋川・広瀬市長が生出演で制度の目的を語る 2023年07月10日
7月7日。全国で初となる異例の条例案が大阪・寝屋川市議会で可決しました。条例で定められた制度は、「市民の支持率と連動して、市長らの給料を最大3割カットする」というものです。
【寝屋川市 広瀬慶輔市長 6月20日】
「新たな給与のあり方をというのを、市民の評価と連動させて経営責任を明確にして、その上で全て市民に公開する」
この制度を提案したのは、2019年に48歳で寝屋川市長となり、今年4月の選挙でも圧倒的な支持を集めた広瀬慶輔市長です。これまでも市長直轄のいじめ対策部署の設置や、役所の窓口の対応時間を大幅に拡充するなど、行政の常識にとらわれない改革を行ってきました。新たな試みが、市民の評価と市長らの給料を連動させる制度の導入です。
この新制度に、寝屋川市民の反応は…
【寝屋川市民 80代女性】
「頑張ったら増えるんやったらいいんじゃないですか。私やったら嫌やけど」
【寝屋川市民 30代男性】
「支持率によって自分の給料が決まるっていうのも変な話だと思いますけど」
市議会議員からはこんな声も…
【大阪維新の会 古田尚央寝屋川市議】
「(制度の)考え方そのものには反対ではないという立場なんです。ただ想定しているやり方の中身について反対。制度自体が満額支給するための仕組み・装置になりかねない」
■「より納得感を持ってもらえる仕組みをと考え、市民評価連動型給与を発案」
大阪・寝屋川市で「市長の給料の金額が、市民の評価で決まる」という驚きの条例が可決されました。なぜこんなことをするのか?本当に市民にメリットはあるのか? 寝屋川市の広瀬慶輔市長が関西テレビ「newsランナー」のスタジオに生出演し、ギモンに答えました。
どうしてこんなことをやろうと考えたのですか?
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「皆さんご存じだと思いますけれど、最近議員の報酬や市長の給与について減額をして、それが市民の皆さんから評価されるというのが多くなってきていると思います。私は根本にあるのは、市民の皆さんが市長や議員の報酬に十分納得感が得られていないからじゃないかと思っています。納得感が得られていないので、減額することが評価される。もしかしたら減額するだけじゃなくて、他により納得感を持ってもらえる仕組みを考えることができるのではないかと。そうした考えから今回の市民評価連動型給与を発案しました」
「私は市長の仕事というのは、4年間のプロ契約のようなものだと思っています。 それであれば例えば4年間の実績と報酬がしっかり連動して、より直接結びついた方が、市民の皆さんに分かりやすいんじゃないかなと思います。あと“支持率”ではなく、“市政運営に対する市民の評価”ということになっています」
今回の制度、市民の評価で給料が決まる仕組みについてみていきます。
・支持が不支持を1%でも上回った場合、給料は満額の月102万円が支給されます。
・不支持が支持を上回った場合は、そのポイントの差がカット率に反映されます。例えば支持40%で不支持60%の場合、不支持が20%多いので、満額から20%カットで、81万6000円支給されることになります。カット率は最大30%までで、最低でも71万4000円が支給されます。
最大でも30%カットまでにされたのは、どうしてですか?
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「生活のこともあります。あの私は今、1歳5カ月の子供がおります。例えば、給与の差し押さえをされる場合なんかでも、法律で保証されている範囲が大体このぐらいの範囲ですし、プロ野球選手なんかで一気に減額していい幅というのが定められていて大体同じぐらいの幅になるというふうに思います」
支持率ですが、例えば“支持が51%、不支持が49%”で、支持が上回っているので満額支給になるというのはハードルが低いようにも思えますが、いかがでしょうか。
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「まずこれは、“支持と不支持”ではなくて、市政運営に対する市民の評価です。支持はしているけれども、市政運営はあんまりやなと、評価をされない方も中におられると思います。(図に書かれた)言葉がちょっと違うと思います」
「『反映される幅がちょっと少ないんじゃないか』という話ですが、例えば内閣の支持率なんか見ててもわかると思いますけど、実は数字ってかなりダイレクトに動くものだと思っています。私は自信を持っていますけれども、場合によってはかなりシビアになるかも。行政の場合は特にシビアな案件なんかも出てきますので、それによって評価が上がったり下がったり、大きく動くんじゃないかなと思います」
給料を上げるために、支持率が上がりやすい政策を行って、本当に必要な政策が後回しにされることはないのですか?
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「ものすごくいい指摘やと思います。ただし、有権者、市民の方ってものすごくバランス感覚があります。選挙をやった人間であればよく分かると思うんですけど、バラ色のばらまき施策を首長候補が公約で掲げたとして、その方が選挙で通るのかといったら、そうではない。実は首長の選挙は、議員の選挙以上に、自分の生活に関わるところということで、財政との均衡であるとか複雑に判断をする、バランスを取った判断をされると思います」
■広瀬市長にとって“損はない”制度なの?
実は広瀬市長は4年前から給料を30%カット中なんです。現状30%カットした状態ということは、今より給料が下がることはないということなのでしょうか?
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「そうですね。実は自信がないんかって言うたら、自信があります。ですから市民の皆さんに十分に納得をしていただいて、評価をいただく自信がありますから、これが例えばカットがなくなって、満額に戻るんじゃないかという話ですけれども、私はそうした評価を市民の皆さんからいただけるんじゃないかなというふうに思っています」
現在30%カットしていますが、一旦カットを止めることになり、新しい制度で最大でも30%カットですから、意地悪な言い方をすると“市長にとって損はない”ですよね。しかもこれだけ話題になって、メディアに取り上げられ、テレビに生出演もして、よく考えられたと言えると思うのですがいかがでしょうか?
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「おっしゃる通りだと思います。今回の件は、首長の給与のあり方に一石を投じる意味と、より納得感を市民の皆さんが得られるような仕組みを作っていくということがあります。さまざまな目的がありますので、今回取り上げていただいたり、議論していただくというのは、まさに狙い通りと言えます」
もっと大幅にプラスになったり、マイナスになったり、変動幅が大きい制度は考えられませんでしたか?
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「通常定められているものを増やすことはなかなか難しいです。あとはいかに減らすか、どういう減らし方をするかというところだけを設計するしか、今回はなかったわけです。ただしこれで一石を投じることができて、実際の運用がなされていく中で将来的に、私がどうというのでなく、できる首長は高い給料をもらう、できない首長は減額されるかもしくは退陣させられる。 メリハリがはっきりしてくることになっていくだろうと。寝屋川の場合例えば1000億円を超える予算があり、市民の皆さんが納得する使い方ができて、そこに優秀な経営者が来ていただいて、その方の給料が今以上の給料を支払ったとしても、それは市民の皆さんは十分納得をされるんだろうなと僕は思います」
■当の寝屋川市民からは好意的意見が多いが、反対意見も
広瀬市長の給料を実際に決めることになった寝屋川市民は、どう思っているのか聞いてきました。
(Q.自分の給料を市民の支持率で決めるのはどう思う?)
【寝屋川市民】
「いいんじゃないですか。市長といえども選挙で選ばれてるんですから。政策が悪かったら当然支持率は落ちますし」
【寝屋川市民】
「孫が中学生になったけど、広瀬けいすけさん、けいすけさんって慕っています」
(Q.取り組み自体は?)「いいことかなと思いますけど。自分の市政を見てもらえるでしょ、市民に」
【枚方市民】
「僕がサラリーマンやってた時も、会社の評価で給与決まってきますんで。いいと思いますよ」
【寝屋川市民】
「どうなのかなあ。上に立つ人なんで、そういうパフォーマンスも含めてやってるんじゃないかなというのは分かりますけど」
【寝屋川市民】
「支持率が下回っていればカットとか、上回っていれば満額とか、それも変な話かな。それは支持してる人が多ければ多いほど、支持してない人からしたら公平じゃないやろと思いますけどね」
寝屋川市民からは、けっこう好意的な意見がありました。
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「実は給料を増やす話ではなくて、減額をどういうやり方でしていきましょうかという議論なので、おそらく市民の皆さんの生活に直接悪い影響があるものではないですから、市民の皆さんに限ってはおおむね好意的に受け取っていただけるんじゃないかな」
市民からは好意的な意見が多く聞かれましたが、否定的な意見もあります。広瀬市長と4月の選挙で争った維新の井川晃一氏は、「基本的に給料を上げる条例だ。市政が始まってすぐ調査し4年後まで調査しないのは、評価する時間がなく、合理性がない」と指摘しています。
大阪府の吉村知事は、「何もしないで寝たふりしている今の国会よりよっぽど面白い。ただ維新はやらない。最初からカットの方が分かりやすい」としています。吉村さんは、「最初からカットすればいいじゃないか」とのことですが、どうなのでしょうか?
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「吉村知事のコメントもいろいろと見せていただいたんですけど、おおむね好意的なコメントをしていただいてるんじゃないかなと思います。より納得感が得られる仕組みというのを考えていかないといけないのかなと思います。それは例えば頭から30%のカットというやり方がいいのか、それとも市民の方からの市政運営に対する評価で高い給料なのか低い給料なのか選ばれるのか。各自治体でこうしたことが 1 つのきっかけになるのでは。30%の議論も維新の会がまずスタートして、世の中に問いかけた。私のやり方も問いかけさせていただいて、さまざまなところから問いかけをしていく中で、より納得感を得られる仕組みができればいいなと思っています」
■「将来的に“やれる方”は増額もあり得る。より優秀な政治家がこれから出てこなければならない」
ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者からの質問です。
「Q.減額だけでは、給料アップを目指す世の中と逆行しない?」
【寝屋川市 広瀬慶輔市長】
「将来的には、よりやれる方については増額も十分にあり得ると思います。市民にとって重要なのは、皆さんの税金がより有効に、そしてより納得感のある使い方をされるということが一番です。そのためには、より優秀な政治家が、これから出てこなければならないと思っています。その中で、例えばカットありきだけで行くのか、それとも将来的には増加も含めて、首長の給与のあり方というのは市民の皆さんの納得感の中で選ばれていくのがいいのか、ということだと思います。私が投じた一石というのは、まさに市民が本当に望む内容を実現していくためには、報酬のあり方はどういう形がいいのかということ。いただいた質問にあるように、将来給料のアップも含めて、より優秀な方に市政を担っていただく仕組みだと思っています」
10月からこの制度が始まりますが、寝屋川市民はどういう反応を示すことになるのでしょうか。それから全国に広がっていくのか。今後に注目していきたいと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2023年7月10日放送)