ロシアによる軍事侵攻開始から500日以上、11日からNATOはウクライナへの支援などを議題に首脳会議を開催します。 もう1つの大きなテーマがスウェーデンの加盟。 去年の加盟議定書への署名以降、スウェーデンと対立するトルコが難色を示してきましたが、このあと首脳会談が開かれる予定で、進展が注目されます。
■ ロシアの”隣国” リトアニアに迫る脅威
首脳会議が開かれるのは東ヨーロッパの加盟国の1つ、リトアニア。 ロシアによる脅威が身近に感じられている国です。 地図を見ると一見ロシアとは離れているように見えますが、実は西側に、ロシアの”飛び地”カリーニングラードがあり、日本と同様に「隣国」なのです。
【記者リポート】
「私の後ろに見えるのがリトアニアです。そしてこの橋を渡るとカリーニングラード、ロシアの領土になります。行き来している人の姿はほとんどありません。国境すぐ近くの建物の壁にある『Z』のマークは侵攻が始まった後、突如現れたということです」
ロシア側の建物の壁にはウクライナ侵攻のシンボルマークとなっている「Z」の文字がありました。 ロシア側と川を隔てて接する国境の町・パネムネ。国境警備隊が監視カメラで見張りをするとともに、パトロールも行っていて、警戒感が高まっています。
【国境付近に住むスベトラーナさん】
「国境の町の運命は明白です。砲撃を受け、(最悪の場合)地球上から消し去られるのです」
この女性は、最悪の事態に備えて食料を備蓄しています。 リトアニアの人々は、1991年までおよそ半世紀にわたって旧ソ連=今のロシアに占領されていた歴史からも、ロシアの脅威を感じています。
リトアニアの首都、ビリニュスにある施設は、旧ソ連時代に反政府的とされた人たちの牢獄などとして使用されていました。当時、市民は情報機関によって監視され、およそ3万人が投獄され、拷問や処刑の対象となりました。
【虐殺犠牲者の博物館のガイド・アルーナスさん】
「ウクライナで起きているすべてが、リトアニアの過去の出来事に非常に似ています。同じく旧ソ連時代を経験したから、ウクライナは私たちにとって身近な存在です。ウクライナの次はわれわれになるのかもしれません」
旧ソ連時代にアフガニスタンへの侵攻に駆り出された人は、その経験に今も苦しめられています。
【旧ソ連兵 ビリギニユス・スケムンドリスさん】
「心のトラウマは大きくて、(今も)毎晩、悪夢を見ます。昨日のことのように、戦争を思い出すんです。今は一歩手前です。もし、エスカレーションすると、戦争が起こるおそれがあります」
緊張感が高まる中、リトアニアはNATOにとって重要な防衛ラインとなっています。
【記者リポート】
「リトアニア軍とドイツ軍の軍事車両です。中にはウクライナに提供された主力戦車レオパルト2もあります」
先週までNATOによるドイツ軍との合同軍事演習が行われ、ウクライナに提供された主力戦車も投入されました。
ロシアへの警戒感が色濃く表れているリトアニアで開催されるNATO首脳会議。 日本から岸田首相も出席し、検討されているNATO東京連絡事務所の開設についても議論される見込みです。
■取材中の記者「東京連絡事務所の開設に仏が反対」
今回、リトアニアで取材にあたっているFNNパリ支局の森元記者の報告です。
【FNNパリ支局の森元記者】
「11日から開かれるNATO首脳会議では、加盟をめぐって対立するスウェーデンとトルコの首脳会談が開かれるほか、ゼレンスキー大統領も招待されていて、ウクライナの将来的な加盟についても協議が進む見込みです」
「そしてもう1つ注目されるのが、現在設置に向けて検討が進められているNATOの東京連絡事務所です。NATOとしては、侵攻を続けるロシアや、ロシア寄りの姿勢を示している中国に対抗するため、日本を含めたインド太平洋地域の連携を一層強化する狙いがあるとみられます。実現にはすべての加盟国の同意が必要ですが、フランスのマクロン大統領は、NATOのストルテンベルグ事務総長に反対の意思を伝えました。フランスとしてはNATOは条約の条文でも、範囲を北大西洋と規定しているため、日本への連絡事務所の設置は原則に反するという考えです」
■ 設置反対の仏…背景は?
【関西テレビ・神崎博デスク】
「NATOとしてはロシアや中国に対して、アジアサイドで目を利かせる目的で東京に事務所を置きたい。一方でフランスは中国への配慮しているんです。貿易やビジネスで中国にかなり依存しているんです。大型の旅客機や原発の関連部品などフランスの製品を中国が“爆買い”してくれるので、中国側の機嫌を損ねたくないという思いがあるので、反対していると考えられます。NATOはすべての国が賛成しないと開設決定が出来ないので、先送りにして、今すぐに決断はしないと思います」
(関西テレビ「newsランナー」2023年7月10日放送)