「年収の壁」見直し 限度を気にせず働きたい人が働けるよう政府案出る ただし3年だけの時限措置 効果は本当にあるのか?抜本的解決を先送りか? 2023年07月06日
パートやアルバイトで収入がある一定額を超えると、新たに税金や社会保険料が生じる「年収の壁」。日本では女性で悩まれている方が多くいらっしゃるかもしれません。この壁の解消に向け、政府が見直しを検討しています。政府の対策は一体どういうものなのか、そして本当に効果はあるのでしょうか。関西テレビ 加藤さゆり報道デスクが解説します。
【加藤報道デスク】
「『年収の壁』とは何かと言いますと、税金や社会保険料の支払いが発生する所得基準のことです」
【加藤報道デスク】
「まず『130万円の壁』があります。従業員100人以下の企業にお勤めの方が、年収130万円を超えた場合、社会保険料の負担が発生します。それから夫などの扶養から外れ、夫の税の控除が受けられなくなります。取材した大西さんはこの130万円を超えないよう、働き控えをしているということでした。
もう1つ『106万円の壁』というのもあります。従業員101人以上の大きな企業で、年収が106万円を超えた場合、社会保険料を納める必要が生じます」
【加藤報道デスク】
「『年収の壁』ができたきっかけは、1985年にあった国民年金法の改正だったんです。専業主婦の方が国民年金制度から漏れずに、夫が加入する厚生年金などの制度を利用して、将来必ず年金をもらえるようにするという制度が作られたんです。ただこの制度ができた当時、専業主婦の方が多かったと思います。今は共働きの方が逆転して多くなっています。パート・アルバイトの時給も上がっていると思います。ちょっと制度に無理が生じてきていると言えると思いますね」
【加藤報道デスク】
「この壁があることで働きたいのに働けない方がいるということで、政府から対策案が出ています。まず106万円の壁への対策として、例えば106万円を超えてしまう方について、賃上げなどの条件を満たした企業には、1人当たり最大50万円の助成金を出すということです。発生する社会保険料分を助成金で賄いますよという話なんです。
また130万の壁ですが、年末に130万円超えそうなので働くのやめますとなると、お店の人とか企業の方が困りますよね。そこで一時的に収入が130万円を超えても、扶養にとどまることができる暫定的な制度を設けようという話になっています」
こういった制度があると、時間を気にせず働きやすくなりますね。
【加藤報道デスク】
「ただこの対策は3年程度の時限措置で、限定的な対応だと言われています。こういった制度に本当に効果があるのか、社会保障制度に詳しい昭和女子大学の八代尚宏特命教授に聞きましたところ、『政府案は根本的な解決になっていない』のではないかということでした。106万円や130万円の壁があることで、 その手前で働くことを止めようなってしまうので、『年収の壁を撤廃し、働いた分だけ社会保険料を納める制度などに改めるべき』ではないかという話をされていました」
「また八代特命教授は、社会保険料が発生することがネックになっているのであれば、そもそも税金でカバーする制度にしたっていいんじゃないかということもおっしゃっています。そうなれば全員が等しく恩恵を受けられることになりますので。そういった抜本的に手を付けていかないといけないと思います」
今の時代に合った、そして働きたいと思えるような仕組み作りをしっかり議論してほしいと思います。
(関西テレビ「newsランナー」2023年7月5日放送)