日本でアライグマ急増中 かわいい見た目で凶暴な性格 北米から輸入されて野生化 壁に穴、柱に傷 ダニ・ノミ・細菌を運ぶ恐れも 屋根裏に住むアライグマ親子の追い出し作戦 研究者は「全然抑制できていないのが現状です」 2023年07月03日
アライグマが各地で増えていて問題になっています。かわいいイメージがある動物ですが、実は、凶暴な性格で住宅被害や感染症のリスクまで指摘されています。アライグマの捕獲数は、全国で過去最多のおよそ6万6000匹(2019年度環境省による)。驚くほどの勢いで繁殖しています。
今回取材した害獣駆除業者は「力が強くて、封鎖したところを簡単に壊してしまう。ラスカルと言われていたアライグマとは違う」と語ります。被害対策の現場を取材しました。
■“アニメ”で人気に 日本でペットブーム 野生化したアライグマ…人に危害も
日本でアライグマが有名になったきっかけは、1977年にテレビで放送されたアニメ「あらいぐまラスカル」でした。
このアニメでペットブームが巻き起こり、北米から大量のアライグマが日本に入ってきました。
しかし、凶暴な性格のため、野外に捨てる飼い主が急増。野生化したアライグマに人が襲われる事件も度々起きています。
【被害者】
「この子(犬)の足にかみつきながら、私の足にもかむという感じで、あちこちかみつくんです」
雑食で、天敵もおらず生態系を壊してしまうことから、2005年には駆除対象の特定外来生物に指定されました。
それでもアライグマは全国的に増え続け、関西では、兵庫県が特に深刻な状況に悩まされていると専門家は話します。
【兵庫県森林動物研究センター 栗山武夫主任研究員】
「(兵庫県に)1万匹以上いるのは確実だと思います。思い切り右肩上がりで分布地も増えているし、分布したところでも増えている。全然抑制できていないのが現状です」
アライグマは、1度の出産でおよそ4匹が生まれる強い繁殖力を持っています。
兵庫県では2005年の捕獲数は361匹でしたが、ことしはなんと1万匹に迫る勢いです。
農作物の被害もここ10年間、4000万円以上で推移しています。さらに、人への感染症のリスクもあると指摘します。
【兵庫県森林動物研究センター 栗山武夫主任研究員】
「マダニがいっぱいついています。ダニとか色んな病気を持っていますので、素手で立ち向かおうとせずに、まずは市町村の担当の部署に連絡をしてください」
■屋根裏のアライグマ追い出し作戦 深刻化する被害 騒音に感染症のリスクも
近年、目撃情報が増えている兵庫県宍粟市。ある一軒家では、ことしの春以降異変が起きていました。
【住人】
「激しくなったのは1カ月くらい。そのうちこの辺で鳴き声が…。最初はこの上だったな」
アライグマの出産シーズンは春。いままさに赤ちゃんアライグマが活発に動き出すころです。こちらのお宅では、わなを仕掛けましたが効果はなく、駆除業者に依頼しました。
天井から「キュルキュル」と鳴き声が聞こえてきます。
【ハウスプロテクト 法月博斗さん】
「うなっている状況です」
【住人】
「私、精神安定剤を飲んで寝るんですよ。じゃないと怖すぎて…。主人が呼吸器の疾患があるので、夜は酸素を吸いながら寝るんですよ。体調が余計悪くなるのと違うかなと思って。ダニとかノミとか菌が影響するって」
侵入経路は1階の屋根の隙間。こぶしほどの大きさでした。
【ハウスプロテクト 法月博斗さん】
「力が強くて、封鎖したところを簡単に壊してしまう力を持っています。『こんなところから入るのか』というのが、プロにしか見つけられないところですね」
鳴りやまないアライグマの騒音、感染症の不安もつきまとい被害は深刻です。
天井に穴をあけ屋根裏をのぞいてみると…いました!
天井裏には赤ちゃんが2匹、親が1匹潜んでいました。
早速、アライグマ追い出し作戦が始まります。
【記者リポート】
「今刺激成分の入ったスプレーを吹きかけています。中でアライグマが反応して暴れていますが、なかなか外に出てきてくれません」
住人も不安そうにしています。
追い出し作業開始から4時間…。ついにその時が。
赤ちゃんアライグマを捕獲しました。
–Q: 怖さはありますか?
【住人】
「そりゃあ。野生のもんだもん」
「こわ…。1匹でも減ったらええわ」
その後、このアライグマは殺処分され、他の2匹も追い出すことができました。
■住宅街にもアライグマ 台所侵入に屋根裏被害
アライグマは山間部だけでなく住宅街にも出没します。
【住人】
「ちょうど今木の陰になってますでしょう。その辺におりました。座ってこっち見ていたの。タヌキだと思った、はじめ」
「台所のテーブルの上ね、食べられているみたい」
–Q:かじられている跡があった?
【住人】
「あった。足跡があった。びっくりやね。怖いね」
気づけば縁側で飼っていたメダカも食べられ、台所もあさられていました。
そして、一番被害があったのは屋根裏でした。
【ハウスプロテクト 法月博斗さん】
「ここが通り道ですね。ここ板外れちゃっているんで。板の中にちょっと小さなうんちがあります」
よく見ると、外の屋根や壁にも穴が開けられていました。この日、アライグマの姿は見えませんでしたが、戻って来られないように侵入口を塞ぎました。
【ハウスプロテクト 法月博斗さん】
「年々、こういった市・町でも増えて来ているので、本当に簡単に見かけられてしまうようになってきています」
■急増するアライグマ被害 対策は? 「家に入れない」ことが重要
知らぬ間に住み着いてしまうアライグマ。では、被害に遭わないためにはどうしたらいいのでしょうか?
【兵庫県森林動物研究センター 栗山武夫 主任研究員】
「まずは家に入れないことが重要です。周りに足跡とか柱に爪痕が残るので、家の周りにあるかないかだけでもチェックしていただいて、定期的に見回るというのは防衛手段です」
捕獲や駆除は自治体の許可が必要で、無料でわなを貸し出している自治体もあります。
人が連れてきてしまったアライグマ。これ以上、被害を生まないためにも人が責任を持って対応することが求められています。
(関西テレビ「newsランナー」7月3日放送)