「電動キックボード」 法改正でルール緩和 7月から免許なしで乗ることも可能に 自賠責保険契約やカーナンバー設置は必要 便利だが倒れやすさに要注意 2023年06月29日
最近、「電動キックボード」を街中で見るようになったのではないでしょうか。
7月1日から、電動キックボードのルールが新しくなり、一定の条件を満たせば、自転車のように免許なしで走行することも可能になります。
乗りたい人はもちろん、そうでない人も知っておいたほうがいい電動キックボードの新しいルール。
何が変わるのか、事故の心配はないのか、今後どうなっていくのか。交通工学を専門とする東海大学・鈴木美緒准教授と、電動キックボードを開発・販売する長谷川工業・住田勝さんに話を聞きました。
まず鈴木准教授は電動キックボードによく乗っているのでしょうか。
【東海大学 鈴木美緒准教授】
「研究の一環ということもあって、いろいろな車種を乗り比べています」
■電動キックボード 免許なしで乗れる2種類追加
7月1日から電動キックボードのルールが3つに分かれます。これまでは、免許を持っている人しか運転できませんでした。
一般原付に区分され、免許が必要なほか、ヘルメットの着用も必要となっています。
7月から、16歳以上なら免許がなくても運転できる区分が2種類できます。
・特定小型原付 最高速度20キロ以下、車道を走ることになります。
・特例特定小型原付 最高速度6キロ以下、普通自転車等および歩行者等専用の道路標識などがあれば歩道上を走ることもできます。
どちらもヘルメットの着用は努力義務となっています。
長谷川工業の住田勝さんに、免許が必要な時速30キロまで出る電動キックボードと、7月から免許がなくても乗ることができる新製品をスタジオに用意してもらいました。見かけはあまり変わりませんが、どこに違いがあるのですか。
【長谷川工業 住田勝さん】
「免許が必要な従来基準の一般原付のものについては、保安部品、例えばミラーでしたり方向指示器が前後に付いています。原付と同じ保安部品を適用されています。
そして新しい基準に対応した特定原付モデルについて、最大の特徴は最高速度表示灯で、ハンドルの端に緑に光るものが付いています。緑のライトが点灯している時は車道を走る最高速度20キロの状態、モードを切り替えて緑のライトが点滅している時は自転車が走行可能な歩道を最高速度6キロまで出すことができます」
「値段は、スタジオに用意した長谷川工業の製品で、 一般原付タイプが18万2600円(税込)、 特定原付タイプが19万8000円(税込)になります」
新基準では制限速度が時速20キロや6キロに抑えられますが、これで安全性は確保されるのでしょうか。
【東海大学 鈴木美緒准教授】
「速度によって、例えば路面から受ける振動が違って乗り心地が変わったり、衝突した時の衝撃が違ったりしますので、歩道での速度を下げるといった速度のバリエーションがあることは、安全性の意味ではいいと思います。ただ動力を使い、人力ではありません。歩行者よりも強い動力があるので、操作は十分注意して運転していただきたいと思います」
世界的に歩道を走行することはどうなのですか?
【東海大学 鈴木美緒准教授】
「世界では歩道走行が禁止されているところがほとんどです。基本的に自転車の通行空間か、車道を通行するようになっています。一部で時速6キロ制限で歩道通行を認めていた地域もあるのですが、だんだん規制が厳しくなり、歩道通行はなくなっています。歩道通行は非常に珍しいと思います」
■これからも『交通ルールを守らないといけない』のは変わりません
変わらないルールもあります。
・運転資格16歳以上
・自賠責保険の契約が必要
・ライトなどの保安基準を満たし、カーナンバーも必要
・交通ルールを守ることは当然必要です
カーナンバーは小さいんですね。
【長谷川工業 住田勝さん】
「10cm角の正方形のものになります」
免許がなくてものれるということで、交通ルールをあまり詳しく勉強されてない方も乗ってしまうのではないかといった不安もありますが・・・
【東海大学 鈴木美緒准教授】
「そうですね。車がどのように動くか予測しづらい方が乗ることになりますので、購入する時ですとか、そういった時にルールを周知していく必要はかなり強くあるのではないかと思います」
免許は不要でも、以下のような罰則は適用されます。
・飲酒運転 5年以下の懲役または100万円以下の罰金など
・二人乗り 5万円以下の罰金など
・信号無視 3カ月以下の懲役または5万円以下の罰金など
番組コメンテーターの菊地弁護士は「飲酒運転などけっこう罪が重いです。このようなルールをしっかり守ることは大切かと思います」と話しました。
■倒れやすい特徴あり バランスに注意を!
電動キックボードについて、鈴木准教授は、
・バランスが不安定
・荷物があると危険
・事故が多いのは夜間
以上の点に注意が必要だと指摘しています。
【東海大学 鈴木美緒准教授】
「歩くより楽ですし、ついいろんなところで乗りたくなってしまいますが、タイヤが小さくて重心が高いので、バランスを取りづらく、転倒しやすいというのが特徴になります。倒れやすい乗り物なんだと、気を付けなければならないと思います。路面がぼこぼこしていて、不安定な所はなるべく避けて、通りやすいところを選んでください。
荷物があると余計重心が高くなりますので、左右差があったりすると倒れやすくなりますし、倒れ始めるとすぐにパタンと倒れてしまいます。 とっさに足をつけられないと頭を打ってしまうことにもなりかねませんので、バランスに注意し、荷物や片手運転とかも危険ですので十分注意してください。
事故が多いのは夜間というのは、飲酒運転の方がかなり増えてしまっているという統計があります。やはり飲酒によって反応速度が遅くなりますので、倒れてしまう危険性が高くなります。また夜間は交通量が少なく、違反が増えてしまって、それも事故につながってくることがあります。気を付けなければなりません」
飲酒運転はもってのほかですね。
ところでバランスは乗り始めとか難しくありませんか。
【長谷川工業 住田勝さん】
「慣れという部分もありますが、講習会などで、われわれも多くの方を対象にしているんですけども、『自転車よりも簡単に乗れるよ』みたいな声も 多くいただいております。最初慣れるまではちゃんと丁寧に乗っていただければと思います」
フランスでは電動キックボードに対する規制が強化されているようです。
【関西テレビ 神崎報道デスク】
「フランスでは、5年ぐらい前から特にパリなどで電動キックボードがすごく普及したんですが、人との接触事故が多かったりして、街中では危ないんじゃないのという声が出てきまた。そこでレンタルに関してだけなんですけれど、レンタルのキックボードをどうするか住民投票したところ、反対意見が9割近くあり、実は今年8月いっぱいでレンタルのキックボードはパリから姿を消すってことになってしまったんです」
日本で電動キックボードは普及していくのでしょうか。
【東海大学 鈴木美緒准教授】
「やはり便利なので、乗る人は増えてくるかと思います。世界的に乗る人は増えているんですけれど、危険性がある場合にやっぱり規制をかけていくのが、どの世界でも起きている現象になっています。日本でもルールを守らない場合、どんどん規制が厳しくなっていくと思います」
■視聴者から「ルールどう学ぶ?」「保険は?」と質問
ここで関西テレビ「newsランナー」視聴者からの質問です。
「Q.免許なしで乗れるならルールはどこで学ぶべき?」
【東海大学 鈴木美緒准教授】
「海外ですと学校ですね。小学校とか中学校で教えるような授業が、自転車についてあって、そこで知る機会が多いです。先ほど住田さんの話にありましたが、乗り方の講習会のようなものでルールも一緒に学んでいく必要があるかなと思います。ぜひそういった手段で電動キックボードを購入する際に、試乗会ですとか講習会を受ける機会を設けていただきたいです」
もう1つ質問です。「Q.保険ってどうなるの?」
【東海大学 鈴木美緒准教授】
「原付の仲間になりますので、自賠責は義務となります。任意保険も原付の区分で入っていただくことになります。キックボードに特化した保険も検討されてはいますけど、来年以降になると言われていますので、現状は原付扱いとなります」
今後、事故が増えると規制が強化されるかもしれません。電動キックボードに乗る方はしっかリ学ばなければいけません。また社会全体で、自動車に乗る方や歩行者も含めて、電動キックボードへの理解を深めていかなくてはいけません。
(関西テレビ「newsランナー」6月29日放送)