金価格が過去最高に!これからも高騰は続く? 物価上昇など考えると“リスクヘッジ”として金は買うべきか 経済専門家の阪大大学院・安田教授が“背景”解説 2023年06月27日
金の価格が、過去最高の水準にまで高騰しています。「今がチャンス」と手元に眠る金を売る人が増えているそうです。そんな金が売り買いされる現場を取材しました。そして経済の専門家、大阪大学大学院教授の安田洋祐さんに、今後の金価格はどうなるのか、今買うべきなのか、詳しく聞きました。
6月20日、日本中が驚いたニュースがありました。大阪府箕面市の男性(87)が金の延べ板「29キロ=2億8000万円相当」を箕面市に寄贈したのです。
【中嶋夏男さん(87)】
「40~50年前に買ったの(金)が、結局今10倍くらいになってますわね。安い時に買いあさったもんです」
男性が持っていた金の価格は、50年たってなんと約10倍になったのです。6月19日に1グラム9876円と“過去最高”になりました。
世界情勢が不安定になると価格が上がる「有事の金」。不安定な状況下では、貨幣の価値が下がる懸念から、万国共通の現物資産である「金」に替える動きが活発になります。近年は、新型コロナの感染拡大に、ロシアのウクライナ侵攻、そしてアメリカの大手銀行の相次ぐ破綻があり、金はここ5年で倍近くまで高騰しました。
■買取店では持ち込む人の数が去年に比べ25%増
この機会に、手元にある金製品を高く売ろうという人もいます。取材した買取販売チェーンでは、持ち込む人の数が去年に比べ25%増えたということです。
【KOMEHYO梅田店 斉藤孝樹チーフ】
「今まで家で眠っていたものだったり、使わなくなってしまったアクセサリー類をお持ち込みになる方が非常に多くなっています。買い取りを初めて利用される方も増えている印象です」
この日、女性が売りに来たのは、記憶にないぐらい昔に買ったという金のネックレスとピアスのセット。
【鑑定士】 「ミッキーになってる」
【40代女性】 「そうですね。公式なやつだと思うんです。外国で買ったやつ」
【鑑定士】 「確かに“Disney”って入ってますね」
【40代女性】 「使わないので、置いておくよりは持ってこようかなと思って」
【鑑定士】 「機械でも計測させていただいて、地金が14金で間違いないですね。ネックレスが5600円で、ピアスが5200円のご案内になります」
2点とも買い取りが成立し、合計1万800円になりました。
さらにこちらの女性は、断捨離で出てきた金のネックレスなどを売る相談していました。
【60代女性】
「金は3社ぐらいで見てもらった。良さそうな所で替えてもらおうと」
「24金(純金)も持ってて、『買い取りたい』って言われたんですけど、それはもうちょっとと思って売らなかった」
(Q.もう少し寝かそうか、売ろうか悩みます?)「そうですね、悩みます」
この日の買取では、18金のネックレスが23万1000円、さらに置き物の飾りとして付いていた24金のフクロウは5万7000円になりました。
一方で、今後も価値が上がると考え、金製品を買いに来る人も。
【80代女性】
「やっぱり物(現物資産)を持っている方が安心」
(Q.現金より?)「現金より。経験としてね。定期金利が上がりもしないので、こういうことで、何か物で子供たちに残せたらなって思ってね」
■金価格高騰は「続く可能性が高い」 買うべきかどうか「投資でなく『リスクヘッジ』なら」と安田教授
「newsランナー」コメンテーターで経済の専門家、大阪大学大学院教授の安田洋祐さんに聞きました。
6月に過去最高値を更新した金の国内価格ですが、今後も高騰は続くのかどうか、安田さんの見解では、「続く可能性が高い!」ということです。
【安田洋祐さん】
「金の価格は基本的に国際価格で決まるので、日本の中だけでなく、世界的にどういう値動きをしているかが重要なんです。そちらを考えると、世界的にまず高い水準のインフレが続いているので、物価に連動して金の価格は上がりやすいということがあります。あと、ウクライナの戦争であるとか色々と不確実性が高まってるので、金に対する需要が強いです。
プラスアルファで日本固有の事情があり、今円安が進んでいます。国際価格が変わらなくても、円安になればなるほど円で測った金の値段が高くなります。“最高値更新”とありましたけど、ドルで測った国際価格はまだ最高値は更新していません。円では“最高値”となりましたが」
それでは今、買っておいた方が良いのでしょうか。安田さんの見解は、「投資ではなく『リスクヘッジ』ならアリ!」ということです。
【安田洋祐さん】
「金融資産を預貯金で持っている人が多いと思うんですけれど、今までだったら本当に安全資産で良かったと思うんです。ところが今、インフレになっていて物価が高くなっていて、銀行に預けていても金利が付かないじゃないですか。そうすると実質的に買えるものの量が減ってくるので、目減りしているのと近いんです。そういったインフレに対して、何らかの形で物価に連動して価値が高まっていくものを少し持っていた方がいいかもしれない。その観点から“金”みたいなものはおすすめです。
急激に円高になると、今の最高値から落ちるかもしれないんですけれど、ただリーマンショックがあった時やコロナショックがあった時も、金の値段の回復ってすごい早かったんです。預貯金以外に株であるとかいろんな資産がありますけれど、そんな中でも金はおそらく安定感が強い。リスクヘッジのためにはいいかなと思います。
まだ若い方で、積極的にこれから投資しようという考えであれば、金みたいな個別の商品を買うのではなくて、できるだけリスク分散した株式の投資信託とかの方がおすすめではあります。あくまでもインフレに強いものをひとつ持っておきたいという時に、金は良いかなと思います」
■「節約」だけでなく「資産形成」も ちゃんと学んでリスクヘッジを
ただ、金の価格が上がる予想がされている一方で、物価の高騰も続いています。7月には、小麦粉、パン、レトルト製品などの値上げが予定されています。理由として、輸入小麦の価格引き上げや、物流費の上昇などがあげられます。
金を持つのが良いのか、それとも別のやり方が良いのか、家計の防衛策はどうしたらいいのでしょうか?
【安田洋祐さん】
「今すぐできることで言えば『節約』です。例えばポイントを活用するとか、色々ありますよね。
ちょっと長い視点で考えるなら、やはり『資産形成』が重要なのかなと思います。先ほど『リスクヘッジのために金はある程度推奨できます』と話したんですけれど、若い方の場合とかこれから先長いので、例えば今だったら『つみたてNISA』 とか『NISA』 といった、税制面で優遇されるようなやり方もあります。あとポイントとちょっと言いましたが、ポイントで株式投資信託を購入できるプランもあったりしますので、始めやすいところからちょっとずつやっていけます。そのような資産価格というのは基本的に物価に連動して上がりやすいので、実質的に預貯金だけ持っていて、『こんなはずじゃなかった』って状況になることを回避できるかもしれないです」
【関西テレビ 加藤報道デスク】
「資産形成について気になることとして、政府の骨太方針の中で、家計の中に眠っている預貯金を解放して、資産運用立国を実現するなんてことも書いているんですよね。ただ投資と聞くだけで苦手意識を持ってしまう人もやはりいらっしゃるかなと思います」
【安田洋祐さん】
「そこは重要なポイントです。実は教育指導要領が変わって、学校で金融リテラシーについて、金融教育を始めようということがスタートしているんですね。いきなり投資をしなさいという話ではなく、小さいころから少しずつ、お金の話とか仕組みに慣れていくと、こういったインフレ時代にもきちんとリスクをヘッジ できるようになるかもしれないです」
不安定な状況が続く現状で、資産形成についてしっかり考えていかなければなりません。
(関西テレビ「newsランナー」2023年6月27日放送)