「担任の先生は3人です」 神戸の小学校で“新しい取り組み”…その名も『チーム担任制』 「早く帰れる!」先生たちの“働き方改革”にも しかし課題も 2023年06月20日
神戸市灘区の摩耶小学校。担任の先生は1人というイメージがありますが…
(Q.担任の先生は何人?)
【児童】「3人!」
■3人の先生が、2クラスをローテーションで担任する「チーム担任制」
実はこの小学校の6年生では、試験的に2つのクラスに対して、3人の先生が交代で担任を務めています。その名も「チーム担任制」です。
例えば、今週の担任は大谷先生が1組、大路先生が2組、浦下先生は学年全体を見守る「学年担任」。これが毎週ローテーションしています。
【大路明徳先生(38)】
「浦下先生、きょう漢字テストですよね?」
【浦下愛先生(28)】
「漢字テストは明日、1から20テストやで」
【児童】
「ええー!」
この週、「学年担任」の浦下先生は、朝の会では「担任」のサポート役に回ります。
【浦下先生】
「朝の時間やったら『休みは誰かな、連絡来てないかな』。担任の先生は子供たちと話したりするので、私が職員室で電話したりとか。今までやったら担任1人やから、全部連絡して、(教室に)上がって来てってやっていたけど、必ず先生が1人ずつ(クラスに)滞在できて、私が動くとなるので、すごくいいなと思う」
教える教科も3人の間で分担しています。浦下先生は国語と理科を担当。
この日の1時間目は担当の授業がなかったので、空いた時間で2クラス分の宿題の添削や他の業務をこなします。
【浦下先生】
「今までやったら放課後に丸付けしたりとか、持ち帰って家で続きするという感じで、実際9時、10時までやることもあったりとか。朝早く起きてとかやってたけど、今は持ち帰りがほとんどないので、家帰って、自分の趣味とか家事をしたりとか」
(Q.今は何時に帰れてる?)「平均午後6時前後ですかね。だから空が明るいと思いながら帰ってます」
2時間目の国語の授業では、
【浦下先生】
「分かりやすいな、読みたいな、読みやすいなと思う文章はどんな文章?」
2クラス分の業務を3人で分担することで、授業の準備が十分にでき、今まで以上に質の高い授業ができていると浦下先生は感じています。
■「心強い。孤独を感じる時があるのが、みんなでやってるのは本当にありがたい」
休み時間になると、先生たちは逐一情報共有。
【大路先生】
「雨降ってたので、バレーボールに変えたんですけど。1組もバレーボールにしてあげてください」
こうして意思疎通を徹底し、クラスの指導方針を合わせることで、「チーム担任制」がうまく進みます。
【大谷亜美先生(28)】
「この悩みはこの先生に、この悩みはこの先生にというのが、子供たちにとってすごくいいことかなと思う」
【大路先生】
「単純に心強くて、最近。自分で1つのクラスの責任を持たないとダメって、孤独感を感じる時があるんですけど。みんなでやってるのが本当にありがたい」
子供たちにとっても大きな変化となりました。
【児童】
「1人1人の個性が、みんなの先生にみられるので、いいと思います」
「色んな先生の意見が聞けるので、自分の考えも深まるので、いいと思います」
一方、戸惑うことも。
【児童】
「どの先生に忘れた教科を言えばいいのか、(先生を)探すのがちょっと大変な時もあります」
まだまだ課題もありますが、校長先生は“この新しい制度”に期待を寄せています。
【神戸市立摩耶小学校 早瀬三晴校長】
「先生が色々かわることで、この先生はこんな良いところがあって、自分をこんなふうに認めてくれているって、そういう関わりができると、子供たちもたくさんの子が救われるのではないかと思う」
この学校では、「チーム担任制」をヒントに、より多くの先生と触れ合う機会を作るために、別の学年の先生が教えに来る時間も新たに作りました。
摩耶小学校が保護者に対して実施したアンケートでは、「多くの先生がいることで安心できる」などの肯定的な意見が目立った一方で、「どの担任に相談すればいいのか分からない」など様々な声が寄せられました。
【神戸市教育委員会 学校教育課 森康博課長】
「保護者の方からも『誰を頼りにすればいいのか』というところがはっきりしないと思う部分があると思います。そのあたりは学校が積極的に情報発信していくとか、窓口になる担当教員をまずは作ってみるとか、試行錯誤することにはなると思う」
教育委員会は、「チーム担任制」について検証を行い、来年度からは、他の学校への導入も目指したいとしています。
■「チーム担任制」 肯定的な意見が多いが不安の声も 何より“教員不足”が課題
今年4月から、神戸市が一部の小中学校で導入している「チーム担任制」。どのような取り組みなのか説明します。
今回取材した摩耶小学校の6年生の場合、2つのクラスに対して、3人の先生が週替わりでローテーションして担任を務めます。
そうすると毎週1人の先生は担任を持たなくていいということで、働き方改革にもつながっているんです。このチーム担任制を導入する前、先生たちは午後10時まで残業をしたり、仕事を持ち帰って家で業務をしたりすることがあったのですが、導入後は午後6時の明るい時間に帰宅できるようになり、仕事の持ち帰りもほぼなくなったそうで、先生の負担が軽減されたということです。
チーム担任制には課題もあります。摩耶小学校が保護者に対して実施したアンケートでは、肯定的な意見が多い一方、
「担任が1週間でかわるので、誰に相談すればいいか分からない。責任の所在が明確でない」
「先生のチームワークがうまくいかなかった場合に、子供たちに影響が出てしまうのではないか」
「2クラスだと機能しやすいけれど、4クラス以上だと、先生が大変なんじゃないか」
といった意見がありました。
そして何より大きな課題が、そもそも“教員不足”なんです。チーム担任制にすると、今よりも先生の数が多く必要になります。兵庫県で現状、どれだけ先生が足りていないのかというと、本来必要な先生の数と比べて、2022年度は140人、2023年度は174人も教員が不足しています。教員の数が足りていないのに実現できるのか、疑問が残る現状となっています。
先生の働き方改革も大きな課題となっている中、今後、チーム担任制がうまく機能すれば、先生の悩みが解消され、子供の教育環境も良くなるという良い循環が生まれるかもしれません。
(関西テレビ「newsランナー」2023年6月20日放送)