【独自】「近ツー」コロナワクチン業務巡る“過大請求”事件で社員3人逮捕 逮捕前の支店長に直接取材 だますつもりあったか?と聞くと「そのようなことは」と涙ぐむ様子も 自治体から最大約15億円…組織ぐるみの不正はなかったのか 2023年06月15日
近畿日本ツーリストが新型コロナワクチンの接種業務で、自治体に対し最大でおよそ15億円の過大請求を行っていた問題で15日、警察は近畿日本ツーリストの社員を逮捕しました。
関西テレビは逮捕前の社員に直接取材。問題について「何を語った」のでしょうか?
【大阪府警担当・森孝郎記者】
「大きな問題となっていた近畿日本ツーリストの過大請求問題。家宅捜索から2週間、事件は大きく動きました」
15日、詐欺の疑いで逮捕されたのは近畿日本ツーリストMICE支店の支店長・森口裕容疑者(54)ら3人です。
森口容疑者ら3人はおととしから去年にかけて、東大阪市から委託されたコロナワクチン接種業務で人件費などを過大請求し、およそ5億8900万円をだまし取った疑いがもたれています。
関西テレビは逮捕前の森口容疑者を取材。今回の逮捕された容疑について話を聞くと…
【記者】
「だます気はなかった?」
【森口容疑者】
「全然そんな…」
【記者】
「そんなことはないということですかね?」
【森口容疑者】
「ただ知らなかったということです」
取材に対し、詐欺の意図を否定した森口容疑者。今回の事件で森口容疑者が果たしていた役割はどのようなものだったのでしょうか?
まず、今回の手口を整理すると次のようになります。
東大阪市から新型コロナウイルスのワクチンの接種業務の委託を受けた近畿日本ツーリストは、コールセンター業務を別の会社に再委託。 その際、今回逮捕された別の担当者は、オペレーターの人数を86パーセント分しか発注しませんでした。 しかし東大阪市には100パーセント分の発注をしたと偽り、人件費を過大請求していたのです。
警察によると、支店長の森口容疑者はこの事実を把握していながら黙認。さらに問題が発覚しそうになると、勤務データの改ざんを指示したというのです。
逮捕前の森口容疑者に、指示をしたのか直接聞いてみると…
【記者】
「森口さんは支店長という立場で指示を出したとある、そういうことはされていなかった?」
【森口容疑者】
「いやまぁ・・本当にごめんなさい。会社のほうに言われてますから」
【記者】
「今回の詐欺容疑について、支店長としてどう思うのか?」
【森口容疑者】
「色々あるんですけど…すみません」
【記者】
「売り上げのノルマが厳しかったという話があった。そういう背景があった?」
【森口容疑者】
「・・・なかなか厳しいですね」
【記者】
「だまそうとした思いはなかった?」
【森口容疑者】
「結果的にはね・・・」
警察は森口容疑者の認否を明らかにしていませんが、近畿日本ツーリストが行った社内調査には「時間が経てば経つほど言えなくなった」と話しているということです。
今回の問題では、東大阪市だけでなく、大阪府や静岡県焼津市など全国63の自治体で、あわせて最大15億円を過大請求していたことが明らかになっています。
調査の結果、過大請求額がおよそ5800万円に上ることが判明している大阪府の吉村知事は15日の逮捕を受け…
【大阪府 吉村洋文知事】
「これは当然税で行われていることなので許されることではない。大阪府としても当然警察の捜査には積極的に協力をしていきます」
逮捕を受けて、近畿日本ツーリストは「3人の処分はまだ決まっていない。捜査には全面的に協力する」とコメントしています。業界大手の企業から逮捕者が出た事件は、今後どう展開していくのでしょうか?
この問題を発覚当初から取材している大阪府警担当の森孝郎記者と詳しくお伝えします。
近畿日本ツーリストによる全国で最大15億円にも上る過大請求問題、とうとう逮捕者が出る事態となりました。
森さん、家宅捜索から社員3人逮捕まで2週間とスピード感のある展開となりましたね。
【大阪府警担当 森孝郎記者】
「4月の近畿日本ツーリストと東大阪市の発表以降、警察に取材をしていると『捜査をしている』との明言はありませんでした。一方で、各地の自治体で過大請求が明らかとなっていきまして、そちらに僕が取材をしていくと、そのような中で、自治体側が警察に話をしているとか相談をしているといったことが聞こえてきました。そんな中、発表からおよそ1カ月半後には、警察が家宅捜索と強制捜査に入り、そこからちょうど2週間なんですけども逮捕者が出るというスピード感のある展開になりました」
今回の逮捕容疑では東大阪市からワクチン接種業務を委託されて、オペレーターの数などこのコールセンターには86パーセントしか受注していなかったのに、東大阪市には、100パーセントの分を請求していたということです。
この支店長は、このコールセンターに対してデータの改ざんを依頼して、市には虚偽の報告をしていたということです。森記者はこの森口容疑者と直接、話をしていますが…
【大阪府警記者クラブ 森孝郎記者】
「今回逮捕された3人が所属するMICE支店は大きな支店なので、売り上げを上げなければいけないという背景がありました。取材の中で私が森口容疑者に、そういう厳しい状況があったのかという質問に対しては、『厳しい状況があった』というふうに答えていました。加えて『最初からだますつもりだったのか』という質問を私がしたところ、かぶせるような形で、『そういうことはありません』というような否定的な返答をしました。そういうやり取りの中で涙ぐむような様子も見られました」
近畿日本ツーリストは全国63の自治体で最大およそ15億円の過大請求を行っていたしています。全国で同じ手口で不正が行われていたとみられています。これについて5月の会見で社長は、「組織ぐるみの不正ではない」としています。組織的な関与について気になります…上層部に捜査の対象が広がる可能性は?
【大阪府警担当 森孝郎記者】
「大阪府警は大阪以外に静岡や他の都道府県と合同で捜査をしていると発表していて、今後他の自治体についても捜査をしていくというふうにしています。また、同じ手口であるっていうところにも注目していて、今回はその関西の支店のトップである支店長が逮捕されたんですが、それよりももっと上から何か指示があったのかどうか、 それについては、今回の逮捕を受けて、今後の捜査でもっと本格的に捜査がされていくと思われます」
今回、自治体が被害者ということですが、神崎さん、もう少し慎重に進められなかったんですかね?
【関西テレビ 神崎博デスク】
「このお金自体は税金なので、言ってみればわれわれ納税者が被害者とも言えると思うんですね。今回、コロナで自治体が多忙を極める中で、外注して発注したと思いますが、その発注した責任は自治体にもあったと思うので、忙しいとは思いますが、どこかの自治体が、現場に行ってチェックしていれば…もしかしたら不正が早く発覚していたかもしれません。ある意味においては、発注者として自治体の責任もあったんじゃないかなと思います」
組織ぐるみの不正という側面はなかったのか?など今後の警察の捜査による実態解明の焦点となります。
(関西テレビ「newsランナー」2023年6月15日放送)