大雨で冠水した“地下歩道”で72歳女性が死亡した事故 当時は注意促す『看板』なく市と県の連携不十分だった 事故検証委が示した“3つの対策” 遺族「母の死を無駄にしないで」 2023年06月13日
2022年7月、滋賀県近江八幡市で地下歩道が大雨で冠水し、女性が溺れて亡くなった事故の報告書が13日、まとまりました。検証委員会は、通行止めを実施するマニュアルや注意喚起を行う設備が必要だと指摘しました。
■大雨冠水の”地下歩道”で72歳女性が死亡 市と県の連携不足から「封鎖」遅れる
2022年7月19日、滋賀県近江八幡市の地下歩道が大雨で冠水し、岩田鈴美さん(当時72)が溺れて死亡しました。
【記者リポート】
「岩田さんは、線路の向かいにある自宅へ帰るため、こちらのスロープを下りて地下の歩道を通ろうとしていました」
岩田さんが地下歩道に入ったのは、午前11時30分ごろだったとみられます。この時、近江八幡市では猛烈な雨が降っていて、その後「記録的短時間大雨情報」が発表されました。
当時の地下歩道では…午前11時時点だとまだ水は溜まっていませんが、20分後には地面が見えなくなり、その後もみるみる水位は上昇。正午には水は天井近くまで迫ってくる事態になりました。
地下道へ続く入り口が封鎖されたのは、岩田さんが発見された後でした。
スロープを管理する「近江八幡市」と地下道を管理する「滋賀県」の連携が不十分だったことから封鎖が遅れました。
岩田さんがなぜスロープの中に入ってしまったかは分かっていません。岩田さんの息子によると「足腰は丈夫で認知症などもなかった」ため当時、注意を促す看板があれば事故は起きなかったと訴えます。
【岩田鈴美さんの長男・木下応祥さん】
「母もそれ(看板など)があればアンダーパスに入るまでにはいかなかったのではないか」
■再発防止のために示された「3つの対策」とは
13日に提出された報告書では、再発防止のために大きく分けて3つの対策が示されました。
1つめは、大雨対応のマニュアル整備と市民への周知です。
早期に通行規制を実施するには、県と市が連携して事前に基準を決めておくことが必要だとしました。
【事故検証委員会 多々納裕一委員長】
「どの程度の水深で通行止めをするか具体的な話。このあたりは住民の皆様ともご相談いただいて対応を実施していただきたい」
2つめは、地下道を冠水させないための設備の改修です。
2つある排水ポンプを最大限活用できる対策を検討するとともに、水が入ってくるのを防ぐための壁を整備する必要があるとしました。
3つめは、地下道の状況を外から把握できるようにすることです。
地下道に水位を把握するセンサーやセンサーと連動して、通行規制を示す電光掲示板を設置するのが望ましいとしていて、市はすでにこれを設置しました。
【近江八幡市 小西理市長】
「通行止めというのが遅れた県と市の不連絡というのもあった 様々な観点からリスクを分析しつつ再発しないような対応を構築していきたい」
■どこでも起こりえる「冠水」被害 同じ事故を繰り返さないため早急な整備を
報告書を受けて応祥さんは「母の死を無駄にしないでほしい」と話しました。
【岩田さんの長男・応祥さん】
「母が亡くなって、今回のことであそこは危険だと分かったので、二度と起こらないように早急にしていただきたいです」
一方で、報告書には事故の原因が記載されておらず、悔しさも残ると話しました。
【岩田さんの長男・応祥さん】
「(市役所の)こういう行動がダメだった、こういう行動のために遅くなったと1個ずつ(原因を)つぶしてってやらないと結局同じ事が起こってしまう」
大雨による事故はどこでも起こりえるものです。今回のような事故を繰り返さないための対策をしっかりと取り組まなくてはいけません。
近江八幡市の事故検証委員会が掲示した再発防止策では、
①大雨時の対応マニュアルの整備、危険性を注意喚起する市民への周知
②雨水が流れ込まないための防止、そして排水設備を活用
③水深を把握するセンサーと連動した赤色灯、電光掲示板を設置すること
などを提案しています。
しかし、自治体によっては財政的な面もあり、整備が遅れているケースもあります。特に大雨のときは、地下歩道やアンダーパスは危険だという認識は各個人で認識しておくべきです。
(関西テレビ「newsランナー」6月13日放送)