学校の先生は「定額働かせ放題」 14%以上が過労死ライン80時間を超える労働環境 名大・内田良教授は「先生でなくてもいい仕事は"外部委託"に」と提言 2023年06月05日
学校の先生は「定額働かせ放題」と言われているのをご存じでしょうか。
長時間労働や人手不足が深刻な問題となっていて、5月に自民党は働き方や待遇を改善する案を提言し、政府は近く対策の方向性を示すことにしています。
学校の先生の働き方改革について、教員の労働問題に詳しい名古屋大学大学院の内田良教授に話を聞きました。
文部科学省の調査によると、過労死ラインである月80時間以上の残業をしている小学校の先生は14.2%いて、全国で先生が2500人以上も足りない状況があるということです。
【名古屋大学大学院・内田良教授】
「過労死ラインの数字が出ましたが、先生が家に持ち帰る仕事の勤務時間は入っていません。それを含めるとさらに時間が多くなると思います。さらに長時間労働のために、大学生が教員になることをやめようと考える人も出てきています。学級担任や教科担当がいない状況も起きているため、長時間労働問題を一刻も早く解決しなければなりません」
■どうする?先生の”定額働かせ問題”
先生たちは残業代が出ません。その代わりに「教職調整額」として、8時間の労働に相当する、給与の4%が支給されています。
しかし、これでは実際の労働時間に満たないということで、自民党からは改革案が出ています。
改革案には、教職調整額を少なくとも10%以上にする案や、自動採点システムなどを導入して業務のデジタル化を進める案が盛り込まれています。
【名古屋大学・内田教授】
「もらえる金額が増えるという意味では良いのですが、それにより残業時間が短くなるわけではありません。結局は定額であることに変わりなく、残業時間の抑制にどこまで効くのか。働いた分を残業代として支払えば、払いたくないから残業時間を減らすという考えに至るようになりますが、結局”定額働かせ問題”のままであることが課題だと思います」
【関西テレビ・神崎博解説デスク】
「残業代が出ないのは大きな問題で、他の公務員は残業代が出るため、先生だけ”特別扱い”になっています。私立の学校では残業代が出ている学校もあるので、公立の学校の先生だけがこのようなルールに縛られています。野党などは、調整額を止めて、時間に見合った残業代を出して『残業を見える化』するべきという声も上がっています。相当な額にはなると思いますが、法律を変えて対応することはできないことはありません」
■ 実際どうなの?「先生が言えないホンネ」
先生からは、「学校に依存しすぎないで」という声が届いています。
【内田教授】
「土日や夏休みなど学校の外でトラブルが起きた時に、保護者が電話を学校にしてくる。平日も夜遅くでも学校に連絡をする。学校の先生は何でも対応してくれるものだ、と社会全体が思い込んでしまっています。本当は社会の仕組みの中で、どうやって子どもの面倒を見ていくのかを考えなければいけないですが、現状は先生のタダ働きが”受け皿”になってしまっている状況です」
その状況を変えるために、内田教授は2つの提言を示しました。
<提言①>
「放課後の見回りなど、先生が背負わなくてもいい仕事は外部委託に」
【内田教授】
「先生の本務は授業です。しかし、土日や夏休みにはパトロールなどをしている人もいます。先生以外でもできるという観点で誰が担うのかという議論は必要ですが、先生の本務は何かを考えて、やらなくていいものは外部化していくべきだと思います」
<提言②>
「学校側もすぐに『保護者の理解が・・・』と言わない意識改革を!」
【内田教授】
「校長などから『行事などを簡素化してもいい』と言われても、保護者や地域からの要望を受けて、先生は『子供のためにやらないといけない』と思い、仕事を減らすことができていません。地域や保護者の思いを過度に忖度するのではなく、先生の仕事を削減していって、子供にしっかりと向き合える時間を作っていくことが必要です」
■ 番組に届いた視聴者のギモン
番組公式LINEに視聴者からの質問が届きました。
【視聴者からのLINE質問】
「企業並みの残業手当をつけるべきでは?」
【内田教授】
「働いた分の残業をつけて時間とコストが連動することで、上限がある中で強制力を持って仕事を減らす動きになるはずです。しかし今のところは、”定額働かせ放題”。まずは残業代をつけるところから始めるべきですが、予算が足りないというのが日本の問題となっています」
【視聴者からのLINE質問】
「登下校の問題の解決は先生?保護者がすべき?」
【内田教授】
「これまで登下校の問題は、先生、PTA、地域住民が一緒になって見守りをしてきました。改めて考えると、先生にとっては勤務になるはずです。ただ今まではボランティアの状態でした。ボランティアでやるならば、誰がやるのかを行政が音頭を取って考えないといけませんし、本当はそこに手当をつけて見守りをする、『制度設計』をしていくべきだと思います」
待遇改善に向けて今月示される「骨太の方針」で、どのような改革案が示されるのかが注目されます。
(2023年6月5日 関西テレビ「newsランナー」放送)