5月21日閉幕したG7広島サミット。電撃的にウクライナのゼレンスキー大統領(45)が来日しました。日本に滞在した30時間で各国の首脳と何を話し何を得ることができたのでしょうか。
電撃来日で慌ただしく警察も各所での警備を実施…
【加藤さゆりデスク・現地リポート】
「まもなくゼレンスキー大統領が到着するとあって、サミット会場付近に動きがありました」
そこにやって来たのは…
【加藤デスク】
「今、ゼレンスキー大統領を乗せたとみられる車がサミット会場へ到着しました。ゆっくりと交差点を曲がって入っていきます。今ゼレンスキー大統領の姿が見えました」
5月20日、電撃的に日本を訪問したウクライナのゼレンスキー大統領。この日はちょうど、大統領就任から丸4年を迎えた日でした。
サミット会場に到着したゼレンスキー大統領は、長旅の疲れを見せず、G7首脳と相次いで会談。さらにはウクライナ問題で、中立的な立場をとるインドとも会談しました。
ここでウクライナにとって、待ちに待った吉報が届きます。アメリカが、F-16戦闘機を同盟国から供与することを容認したのです。
【ウクライナ・ゼレンスキー大統領】
「私たちの社会、家や家族を救うのに本当に役立ちます。全ての国、パートナーに感謝します。本当にありがとう」
21日のアメリカとウクライナの首脳会談では、バイデン大統領から戦闘機のパイロット訓練支援や、弾薬や砲弾など最大3億7000万ドル(約510億円)の支援が伝えられました。
その後、ゼレンスキー大統領は原爆資料館を訪問しました。
そして岸田首相と共に慰霊碑に献花し、黙とうを捧げました。
ゼレンスキー大統領と原爆資料館で面会した被爆者の小倉桂子さん(85)は…
【被爆者 小倉桂子さん】
「何にもおっしゃらなくて厳しい顔をしていた。全部破壊された(広島の街の)スクリーンもご覧になった。短い時間でも彼に広島の人の気持ちを感じていただいた。本当に自分の国のことを思われたと思う」
また、ゼレンスキー大統領やG7の首脳陣の資料館訪問を特別な思いで見つめる人も。 前館長の志賀賢治さん(70)です。
【加藤デスク】 「今の車列って?」
【原爆資料館・志賀前館長】 「アメリカですね。オバマさんの時より車列すごいですね」
【加藤デスク】 「どんな気持ちでご覧に?」
【志賀前館長】
「(オバマ大統領の時の)資料館の見学がああいう状態だったので、思いが巡らせられなくなってしまった」
志賀さんは7年前、アメリカのオバマ大統領(当時)が、現職として初めて広島や資料館を訪れたときに館長として同行しました。 しかし、オバマ大統領の見学は10分ほどで、目にしたのは展示物のほんの一部。 だからこそ今回は、犠牲者の遺品や、犠牲者がどのように亡くなったのかという遺族の証言などの展示がある本館を「じっくりと見てほしい」と望んでいました。
【志賀前館長】
「急ごしらえの、本館から持ち出した資料で済まされるのか、あるいは本館に入って、ゆっくりご覧いただけるのか。できれば本館に入っていただきたい」
今回の首脳陣の訪問は、40分ほどの時間がとられたものの、一部の場所に展示を集める形で本館には訪れなかったということです。
【志賀前館長】
「一人一人に様々な苦しみ、亡くなり方があった。ごく一部の犠牲者の遺品を資料館は預かって展示している。その一点一点を駆け足にせよご覧いただいて、いろんな亡くなり方があったと、これが被爆の実相だと思う。なぜ本館を見ていただけなかったのかという悔しさが思いをはせさせる」
残念さを感じる一方で、ゼレンスキー大統領が訪れたことについては…
【加藤デスク】
「(ゼレンスキー大統領の訪問は)広島の方にとっても大きな衝撃、何か意味があるでしょうか?」
【志賀前館長】
「核兵器で脅しをかけられている国の首脳ですよね。そういう方に広島に来ていただくことは、核兵器の被害はこんな状態と見ていただく、あるいは広島の場が発しているメッセージを感じて頂くということになるんでしょうが…果たしてそれが意味があるかどうか。むしろ核兵器をお持ちの方にしっかりご覧いただきたい。そういう意味ではむしろ、プーチンに見ていただく方がふさわしいかもしれない」
ゼレンスキー大統領は、平和公園を訪れた後、会見で胸の内を語りました。
【ウクライナ・ゼレンスキー大統領】
「(原爆資料館には)本当に恐ろしい写真がたくさんある。原爆投下、死の直前の子供たちの写真、ウクライナでも多くありますが、これを見ると涙が止まりません。正直に言います…バフムトの破壊された風景と広島の被災した街はとても似ています。でも今広島は近代的で生命にあふれた街です。バフムトも将来このように再建されることを願っています」
ゼレンスキー大統領がG7広島サミットに参加した意義について岸田首相は…
【岸田首相】
「国民の先頭に立って立ち向かうゼレンスキー大統領にも議論に参加いただき、メッセージをより力強く国際社会に発信することができたことは非常に有意義であった」
また、岸田首相はG7で「核軍縮に関する広島ビジョン」を出したことについて「歴史的な意義を感じる」と述べました。
ゼレンスキー大統領の突然の来日は、海外から取材に来ている人たちにとっても、大きな出来事だったようです。
【イギリスの大学教授】
「とても刺激的で感動しました。彼がウクライナについてや、広島で何を感じたのかを話したこと、そして岸田首相と共に平和記念碑に献花をする様子がとても刺激的でした」
【アメリカのメディア】
「やっぱりゼレンスキーさんが来て、ウクライナ中心になって。直接、彼はいろんな首脳と話ができて、どうやってウクライナはロシア軍を反撃ができるか?マンツーマンで話ができるから、すごくこの会議は意味があると思います」
唯一の戦争被爆国“日本”で、平和への課題解決に向けて各国の首脳と会談をする一方、ゼレンスキー大統領にはもう1つ重要な目的がありました。 それがグローバルサウスとの対話。 グローバスサウスとはインド・ブラジルなど新興・途上国のことで、今回のG7サミットにもインドやブラジルなどの首脳が招待されていました。
サミット最終日にインドのモディ首相と固い握手を交わしたゼレンスキー大統領。 インドはロシア製兵器の最大の購入国で、ロシアへの経済制裁にも加わっていません。 ゼレンスキー大統領としてはモディ首相との会談で、ウクライナの立場に理解を求め、ロシアをけん制したいという狙いがありました。
これに対しインドのメディアからは厳しい意見が…
【インドのメディア】
「インドは経済的に非常に大きな国です。ではなぜウクライナの味方にならないのか?自国民が利益を得られるようにすること、これがインドの外交政策の一部であり焦点です。味方につくということは、これまで一度もありません」
いくつもの注目ポイントがあった今回のG7サミットが、世界平和に向けての転換点となるのでしょうか。
(関西テレビ「newsランナー」2023年5月22日放送)